053 コレクター、世界樹のダンジョンに挑む
ゲートに飛び込むと、目の前に鬱蒼と生い茂る森が見えた。
シャムロットの郊外よりも木の密度が高く、見える範囲には森しかない。
そして背後には先程いた世界と同じく世界樹が佇んでいた。
「この世界で『黄金の果実』を探せってのか? おいおい、覚悟はしていたが途方もないな」
「ジャスターだっけ? あれも探さなきゃね」
先にゲートに飛び込んだジャスターは既に世界樹から離れている。
ジャスターを追いかけようとせずに、『黄金の果実』を探しながら探索をした方がいいだろう。
「ど、どうするのよ」
「とりあえず歩き回って探索かな。ジャスターは会ったら戦闘するくらいの気持ちで行こう」
ひとまず、目的である『黄金の果実』を探すべく森の中を歩く。
通りすがる度に木の枝を観察し、そこに果実がないか確認していく。
「キシャアアアアアアア!!!」
「うわ、なにっ」
上ばかりを見ていたからか、足元から現れた植物のモンスターに気が付かなかった。
何とか初撃を避け、距離を取る。
頭に花が咲いた植物モンスター……名前はフラワープラント。『トワイライト』にもいたモンスターだ。
花の形、色からしてレッドフラワープラントだ。高レベルダンジョンに現れるモンスターで、この世界の基準で考えると最強クラスと思われる。
「なによあれ、気持ち悪い……」
「気を付けて、あいつのツルは速いよ」
「まずは一戦目だな、行くぜ!」
カリウスが剣を持ち先制攻撃を仕掛ける。
レッドフラワープラント……長いのでフラワープラントと呼ぶが、こいつは戦闘中に成長していく。
なので短期決戦をする必要があるのだが、とりあえずカリウスの戦闘能力やここでのモンスターの強さを見極めるために観察させてもらおう。
「だりゃあああああ!」
カリウスの黄金の剣がフラワープラントのツルを切り裂いていく。
あの剣は『騎士剣エクスカリバー』かのアーサー王伝説に出てくるエクスカリバーが元ネタの剣だ。
もっと強くなりたいと言うカリウスの願いを叶えるため、俺が渡した剣だ。
ランク5の武器なのでフラワープラントに力負けしない。だが、ただ斬るだけではフラワープラントは倒せないよ。
「よし、このまま……! って、うおおおおお!?」
フラワープラントの茎を切り裂き絶命させようとするカリウスだったが、直前に剣が大きく逸れてしまった。
原因は地面から生えてきたツルだ。ツルはカリウスの足に巻き付き、そのまま空中に持ち上げた。
逆さ吊りになったカリウスは剣を振り回し抵抗するが上手く当たらない。
「今助けるよー! 男の触手プレイとか誰も得しないからー!」
「一言余計だ!」
他のツルがカリウスを襲おうとしているので、俺は急いで魔法の準備をする。
「〈風刃〉」
第二魔法の〈風刃〉がカリウスを拘束していたツルを切り裂く。
植物系のモンスターには斬撃系の攻撃が効果的で、こういったツルならば第二魔法という下の魔法でも簡単に切り裂くことができる。
魔法も効くには効くが、地中に張り巡らされたツルがいつ襲い掛かってくるか分からないので短剣の準備もしておいた方がいい。
「エリィ! 今!」
「了解! いっけええええ! 天使の弓!」
光の矢が三発ほどフラワープラントの花に命中する。
ビンゴ、そこが弱点だ。茎を狙えば倒せるが、風のバリアがあり中心を狙わなければ外れてしまうためまー当たらない。『トワイライト』内で狙撃手目指してる人は挑戦してみるといいよ。
ちなみに、『ワルキューレアロー』と言うよりかは天使のなんちゃらと呼んだ方がやる気が出るとのことなので、今はその呼び方に落ち着いている。
それにこの『ワルキューレウェポン』は技名ではないのだ。ただの武器の名前なので好きに呼んだらいい。気分大事。
「そこだっ、だらあああああ!!」
着地ししばらく襲い掛かってくるツルの対応をしていたカリウスがフラワープラントに一気に近づき、剣を振り下ろした。
その剣は茎に直撃し、風のバリアを破壊しながら体を真っ二つにした。
「よっしゃあ! どんなもんよ!」
「私の弓で倒せないのね……ほんとに強いんだ」
確かに、今までフレイムキメラなんていう名前のモンスターを弓の一撃で倒していたのに、今回は三発当てても倒せなかったのだ。
単純にモンスターの体力や生命力などが上がっていることが伺える。今の戦闘でエリィもモンスターの強さを確認したようだ。
「うーん?」
「どうしたのよ、もうモンスターは倒したじゃない」
俺が何か記憶の奥の方にある何かが思い出せないことに引っかかっていると、エリィがそう声を掛けてきた。
まあ、モンスターは倒した。これがゲームなら目の前のフラワープラントは絶命し、ポリゴンとなって消えてしまうはずだ。
なのでもう目の前のフラワープラントは襲い掛かってこないのだが、なんだか嫌な予感がする。予感というより、デジャヴかな……?
「なんか引っかかるんだよねぇ、なんだったかな……?」
「まあ歩きながら考えればいいだろ。ほら、先行こうぜ」
考えていても仕方ない。とりあえず目的の『黄金の果実』を探そう。
こんな花粉と蜜をまき散らす死体なんか……なんか……
「待って、思い出した。来るよ、気を付けて」
「はあ? って、まさか……」
「あ、あはは……そんな恐ろしいこと……あるわけないじゃない!」
森の奥、地面がボコボコと動き始める。そこから這い出てきたのは、まだ花の咲いていないプラントたち。その数約五十体。逃げ道はなく囲まれている。
このフラワープラント、死んだときに低確率で臭いの強い蜜と花粉をまき散らして地面の中にいるプラントを呼び出すのだ。
過去、仲間と狩りの途中にはずれのフラワープラントを引いてしまったことがある。数が数だけに面倒だったことを覚えている。いや、思い出した。
「ちょーっと本気出さないとだねこれ……」
俺は即座に職業を【剣士】に変更し、剣を二本取り出した。
こんな序盤で足止めを食らっている暇はない、さっさと倒して先に進まなければならないのだ。




