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048 コレクター、神々の箱舟に乗る

 エリィの身体の中に天使、セラフィーがいることを知った日から数日。

 俺とカリウスは王様にシャムロットに向かうという報告をした。


「さて、ここから移動かぁ。また馬車に揺られるのかぁ」

「馬車? 乗るのは列車だろ?」

「え?」


 列車? 列車と申したかお主。

 そんな話は聞いていないぞ。くそっ、もっと調べればよかった。ファンタジーだから移動手段が馬車しかないと思い込んでいた。


「駅があるのは交流街だ。確かまだ行ったことなかったか」

「交流街?」

「他種族が入り混じった街だな。ロンテギアに来る魔族は少ないから住んでる魔族はそこに固まってるんだよ」

「なるほど、だから普通の街に他種族が少なかったのか」


 たまに見かける異種族は、おそらく交流街に存在しない店で買い物をするために出ていているのだろう。

 ロンテギア王国は他の国と比べると小さいが、そのほとんどの人口が王都に集まっているので街は大きい。

 そのため王都の全てを知っているわけではないのだ。思い出してみれば半分以上は知らない。


「移動手段はノアトレイン。別名神々の箱舟だ。なんでも、大昔から大陸を走り続けているらしい」

「へぇ、それも神様が設置したのかな」


 ノアの箱舟のオマージュだろうか。そうなるとやはり現実世界の人間が関わっている? それか、現実世界の神様と関係があるのか。

 『トワイライト』と共通点が多いのは偶然ではないだろう。そう考えると、世界を破壊しようとしている神ももしかしたら現実世界と関係があるのかもしれない。


* * *


 交流街に到着すると、圧倒的な異種族の多さに圧倒される。

 今までエルフと妖精くらいしかまともに関わっていないので、獣人族や悪魔族を見るのは新鮮だ。

 しかし交流街に行くのが目的というわけではないので、着いたと同時にノアトレインのある駅に向かう。


「ここだ」

「おおおお! すごい!」


 カリウスに案内されてロンテギア駅に入ると、すぐにノアトレインが見えた。

 外観は銀色の本体に、金や緑の装飾がついた蒸気機関車だった。

 至る所に歯車が見えるのが最高にクールだ。この列車欲しいです。ください。


「一回の乗車で金貨一枚です。乗車しますか?」

「あーはい、金貨ね。えーーっと……」


 駅員さんに言われ、金貨を取り出そうとする。俺とカリウスで金貨二枚か、それなりに高いな。

 ノアトレイン、神々の箱舟と言うからにはやはりそれなりに金を払うことのできる人間しか利用しないのだろう。

 なんて思っていたら、カリウスに肩を掴まれた。


「馬鹿、オレたちは金払わなくていいだろ? あれ見せろ」

「あっそうか。俺こういう者なんですけど」


 今の今まで王子代理であることを完全に忘れていた俺は、魔術師ローブの内側から『王証』を取り出し駅員さんに見せる。

 すると、駅員さんは顔をみるみるうちに青くし、震え始めた。


「こここっこれは失礼いたしました! どうぞご乗車ください!」

「あ、はは……どうも」


 めちゃくちゃ怖がりながら道を開けられたので、気まずくなりながら乗車する。

 俺は権力が欲しいだけで崇められたいわけではないのだ。どういうことだよってなるかもしれないけど、仲良くできるならそれに越したことはないと考えている。

 この考え方は少ないらしく、全員に驚かれる。カリウスもそうだし、エリィもそうだった。


 ノアトレインに入ると、綺麗な椅子やテーブル席があった。

 パッと見ただけで新幹線のように椅子に小さなテーブルが付いているタイプと、四人で一つのテーブルを使えるテーブル席の二種類がある。

 というか、デザインがまんまそれである。


「おお、新幹線みたい」

「なんだそれ」


 ノアトレインの内装を見てそう言うと、カリウスは不思議そうな顔をしていた。

 俺がノアトレインを知らないように、カリウスは新幹線を知らないのだ。


「俺のいた世界の列車だよ。すごく速いんだ。ノアトレインの内装はその新幹線とかに似てるね」

「ほお、じゃあこれを作った神様はレクトのいた世界と関係があるのかもな」

「かもね」


 新幹線と、電車が混ざったような内装だ。

 乗っている人は少ない。人間が他国に行く機会はないのだろう。シャムロットにいた人間も少なかった。

 とりあえず座ると、すごくふかふかだった。テーブルもしっかりしていて、もうここに住みたい。

 少しすると、ノアトレインが動き始める。電車よりも速いが、新幹線よりは遅いといったところか。


「あぁ~、いいね。ずっとこうしてたいよ」


 果物の皮を剥きながらそう言う。

 食べているのはみかんである。ハーレム王の妹ではない。

 新幹線に揺られながらまったりみかんを食べる。最高。


「何か計画はあるのか?」

「実はつい最近ライトとしてシャムロットの王様に天使の言葉を報告したんだよね」

「最近見ないと思ったら向こう行ってたのか」


 そう、ついこの間、シャムロットで冒険者活動をしてきたのだ。

 その時、ライトとして女王様に会ってきたんだよね。少しの報告だったが、やけに記憶に残っている。

 俺はシャムロットでの出来事を思い出しながらカリウスに話すことにした。

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