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047 コレクター、大義名分ができる

「まず、わたしは天界からやってきました」


 そういえば天界から落ちてきたと言っていた。そもそも、天界が存在すること自体初耳だ。


「やはり天界は存在したのじゃな。スカイゲートの奥にある神の国じゃろ?」

「ええ、その通りです。わたしはその神の国の天使でした」


 神の国なんてものがあるのか。

 スカイゲート、そういえば言い伝えの中にそんな言葉があったはずだ。空を覆う人界と神の世界を分かつ巨大な壁、だったか。

 その奥に神が存在していると。なら、俺をこの世界に呼んだのもそこにいる神なのかもしれない。


「その天使がなんでここにいるんだ?」

「それが本題なんです。天界には、この世界の破壊を計画する神がいました。計画に気付いたわたしたち天使は、阻止するべく動きましたが全員捕まってしまったのです。わたしは一瞬の隙を突いて天界から落ち、人界に落ちることに成功しました。そして、気が付いたらこの状態です」

「世界の破壊!? どういうことだそりゃ!?」

「事情は分かりません。とにかく、わたしはどうにかしてその神を止めるために落ちてきたのです」


 世界の破壊を防ぐためってね。まさか裏でそんな壮大な事件が起きていたとは予想外だ。

 もしかしたら俺が人間界に帰る前に世界が滅んでしまうかもしれない。それだけは阻止しなくては。


「レクトさん」

「はいレクトさんです」

「貴方は各国の国宝を集めたいのですよね。天界へと続く扉を開くにはその国宝が必要なのです。なので、集めてください」

「わお、すごい大義名分だ」


 ちょうど国宝を手に入れる理由が欲しかったんだ。


「でも王様にはどう説明するのさ。俺から世界が危ないって言っても信じてくれるわけないでしょ?」

「ええ、でも世界を救うためなら多少強引でも手に入れるために動けるじゃないですか」

「まあ、確かに」


 力で潰したらめっちゃ対策されそうだし、結局正攻法で手に入れるしかない。

 他の国に世界危ないから国宝寄越せって言うわけにはいかないからね。絶対拒否されるよ。

 なら、ロンテギア王国、国宝を持つ国、唯一の人間の国というネームバリューを使って取引をするしかない。


「それに、信じてもらえなくてもそれを理由にして動くことができます。それこそ、神からのお告げとでも言って行動すればいいのです」

「怪しさ満点だ」

「そこはほら、レクトさんの交渉術でどうにかしてください。他に手はないのです。どうかお願いします!」


 頭を下げてお願いしてくる天使に、どう反応していいか分からず頭を掻いた。

 各国の国宝を手に入れる理由ができた、それは素直に嬉しい。元は地道に好かれて、交友関係を持って手に入れる、みたいな算段だったのだから。

 さらに、神の国に行くことができれば、俺も現実世界に帰ることができるかもしれない。ここがあまりにも大きい。


「分かった。元々やろうとしていたことだし、いいよ」

「ほ、本当ですか!?」

「うん。だからさ、天界について詳しく教えて。例えば……俺をこの世界に連れてきた神様とか、知ってる?」


 とりあえず、今は情報が必要だと考えた俺は天使から情報を聞き出すことにした。


「神様は何人もいますし、わたしはそれほど神に近い立場でもなかったので、あまり詳しいことは分かりません……」


 神様は何人もいる、か。そうなるとその世界を破壊しようとしている神は俺をこの世界に連れてきた神とは別の神ってことでいいのかな?

 というか、天界に行くために、世界の破壊を防ぐために国宝を集めるってことはその神と戦うことになるのでは?

 それは流石に……運営と戦うようなものじゃん。無理ゲーにもほどがあるよ。俺は黒の剣士じゃないんだから。二刀流だけど。


「そっかぁ。じゃあさ、その世界を破壊しようとしている神様はどんな奴なの?」

「元からいた神様ではなく、外の世界から来た神様でした。魔術の神だとかで、時折この世界の魔術を研究していましたね」

「それだけ聞くと普通の魔術師じゃな」

「でも、わたしの知る限りレクトさん以下の魔術師なんですよね。そこだけ不思議です」

「おっ、なら勝てるかも。希望が見えた」


 魔術の神様なのに俺よりも魔術が得意ではないと。もうそれだけで安心感がだいぶ違う。

 勝てる可能性があるのだ。これが運営なら、常に無敵とかのチートを使ってくる可能性があった。


「と、そろそろエリィさんが限界みたいですね」

「えっ、限界って?」


 もしかして人間のエリィが消えてしまうかもしれないってことなのかな?

 それは困る。何度も言うけど村から錬金術師がいなくなったら終わる。


「すごい怒ってるんです。早く身体を返しなさいって」

「あ、なんだ。そういうことね」


 単純にエリィの我慢ができなくなっただけだった。

 休ませたいって気持ちもあるから、しばらくは天使に身体を動かしてもらいたいくらいだ。


「では交代する前に自己紹介を。わたしの名前はセラフィー、天界で働く天使の一人です。どうぞよろしくお願いします」

「こちらこそよろしくね」


 手を差し出してきたので握手をする。

 見た目はエリィだが雰囲気が柔らかいのでやけに緊張する。少し照れてしまったかもしれない。


「これでも天使ですので、少しは力になれるかと思います。それこそ、エリィさんの手助けが基本ですかね」

「それは頼もしい」

「それではエリィさん、わたしの力を使えるようにしますのでご活用くださいね。ではまたいつか」


 最後は身体の中にいるエリィに向けて話しかけた天使……いや、セラフィーは俺たちに手を振りながら微笑んだ。

 びくっと身体の力が抜けたように肩を揺らすと、セラフィーの目の色が紫色に変わった。


「うっ、はぁ……やっと帰ってこれた」

「おかえり」


 ため息をつきながら頭を抱えるエリィ。


「身体は大丈夫?」

「むしろ前よりも元気なくらいよ。これが天使の力なのかしら……?」

「今までは身体を操ろうとしてたから副作用があったんじゃない?」


 熱が出ていたりしたのも、身体の中に天使の魔力? が入っていたからなのかもしれない。

 それが馴染んで自分で扱えるようになった、つまり魔力を取り込んだから身体が楽になったと。

 戦闘能力も上昇しているのだろうか。


「嬉しいけど身体が動かせなくなるのはなんだか変な感じなのよね。もうあの子には操らせないわ!」


 ぐっと顔の前で拳を作るエリィ、同時にその真剣な目は金色になった。まさか。


「ちなみに、わたしの方が生物としての優先順位が高いのでこうして簡単に乗っ取ることができます。同じようにエリィさんもわたしを乗っ取ることが出来ますが、わたしだけ拒むことができます」


 にこっと、可愛らしい笑顔で微笑むエリィ……じゃなくてこれはセラフィーか。

 そしてすぐに瞳の色が紫色に戻る。


「あああああああああああ!!!!! もうっ!!!!!!」


 なんだか面白いことになっている。もし過去の俺の魂が身体に残っていたらこんな感じになるのかな?


「面倒なことになっとるのぉ」

「ま、まあ害はないみたいだし、目標も決まったからいいんじゃないか?」

「だね、近いうちにシャムロットに直撃してみようか」


 頭を抱えて叫ぶエリィを横目にこれからの計画を立てる。久しぶりのシャムロットだね。

 目指せ国宝! 集めろアイテムだ!

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