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042 青髪赤髪没落貴族、謝る

 待機所に運ばれた俺は、カリウスとエリィだけがいる状況でストレージから『解毒ポーション』を取り出し麻痺毒を解除した。

 その後二人に戦闘中に攻撃を受けたことについて話し、警戒するように言った。

 流石にすぐに回復するのもおかしいので、カリウスとエリィには先に王城に報告しに行ってもらうことにした。

 休憩中に騎士長から褒め称えられたりした数分後、アリーナを後にする。


「やあレクト。強かったんだな、お前」

「よ、よお」


 城に移動している途中で、知っている顔の貴族が話しかけてきた。

 青髪貴族と赤髪貴族だ。名前はなんだったか。ブルドーと、ダンプ? だったっけ?

 なんだ、もう許されたのか。なんて思いつつも向き直る。


「まあね、俺とトワ村はこれからどんどん評価されていくはずだよ」

「……だな」


 てっきり調子に乗るなよ、とか言い出すのかと思っていたのに、二人は暗い顔で俯いていた。


「あれ? いつもみたいに反発しないの?」

「……散々叱られたりしてさ、もうそんな気分でもないんだ。だから、謝らせてくれ。……本当に申し訳なかった。この通りだ!」

「俺からも謝りたい。悪かった!」


 二人は並んで俺に頭を下げた。それも深く、深くだ。

 俺は驚いた顔をしながら思考を巡らせる。何故今更謝ってきたのか。こいつらは自分の過失を受け入れるタイプだったか。などをだ。


「それは、親に命令されたから?」

「そ、そんなんじゃ……僕はただ、やり返されるんじゃないかって。レクト、強いだろ……?」

「俺たちの家は王様から縁を切られた。王族じゃなくなったんだ。それでもまだ貴族だが、これ以上失ったらもう終わりだ……」

「そっか」


 つまり、一気に貴族として没落してしまったので、今まで何度も嫌がらせをしてきた相手にやり返されるのが怖くて謝ってきたのだ。

 心のどこかでなぜ自分がこんな目に、と思っているかもしれないが、そんな理由でも謝れるだけ何倍もいい。世の中には謝ることのできない呪いに掛かってしまった人間もいるのだから。


「俺はもうお前らの家に何かをしようとは思わないよ。まあ、そっちから何かしようとしてきたらそれなりにやり返すけどね」

「ほ、本当か……?」

「うん。だから気にしなくていいよ。安心して細々と生活しな?」

「せ、聖母……?」

「男だわ!!!」


 少しの煽りも込めて言ったつもりだったが、むしろ二人は喜んでしまった。

 そこまで王族からの没落が酷かったのだろう。これ以上の被害が出ないように必死なのだ。


「まあ気持ちは分かるけどさ、いくらなんでも必死すぎじゃない?」

「だ、だってお前……僕の家と繋がっていた山賊団を潰しただろ……? 今日の暴れ方を見てやりかねないと思ってさ……」


 山賊団を潰す? 流石に俺もそこまではしない。

 いや、するかもしれないけどまだしていない。害が及ぶのなら潰すね。

 とにかく、その情報は知らなかった。


「今初めて知ったんだけど」

「関係ないのか? 山賊団の拠点は炎で焼かれ、奪った宝も根こそぎ奪われたって話なんだけど」

「あっ……」


 炎、宝、奪う……あっ。

 いやまさか、そんなはずは。でもやりかねないしな……可能性は高い。


「どうしたんだ? 心当たりがあるのか?」

「違うかもしれないけど、もしかしたらトワ村にいる奴の仕業かもしれない……」

「ト、トワ村怖いね」

「やっぱり逆らわない方がいいな……」


 俺の言葉を聞いて、二人は顔を青くして体を震わせた。一気に没落してしまったことが相当トラウマなのかもしれない。

 せっかく好印象だったトワ村が恐ろしい魔術師がいる村として認識されてしまう。後でドレイクに確認しないと。


「ま、まあ俺からは何もしないし、そいつにも確認してみるよ。……そういえばさ、ルディオはどうなるんだろうね?」


 この後、意識を取り戻したルディオと一緒に王様に会いに行く予定なのだ。その前に、決闘に負けたルディオがどうなるのかを知っておきたかった。

 ちょうど目の前には没落経験者がいるのだ。質問くらいはしてもいいだろう。


「俺はわかんねぇな」

「僕達の家は王族から縁を切られただけで済んだけど、ルディオは個人的に貴族に決闘を挑んで負けちゃったもんなぁ。少なくとも表には出てこられなくなるだろうね。それに加えて、決闘に勝ったレクトはそれなりに命令できるはずだよ」


 表には出れなくなる、ってことは今後王子としての活動はできなくなると考えていいかな。

 流石に、そこまで大変なことになるとは思っていなかった。ま、あの王子ならいてもいなくても一緒か。


「命令かぁ、王様に頼み事とかできるかな?」

「僕から言うのはなんかあれだけど、息子の失態を親が持つのはよくあることだね。よっぽど酷い、それこそ王様になりたいみたいなお願いじゃなければ叶えてもらえると思うよ」


 確かに息子である自分の失態で王族じゃなくなったブルドーに説明させるのは酷だったか。

 王様になるのは難しい、というかなりたいと思わないのでいいのだが、どこまでのお願いが許可されるのだろうか。


「もしかしたら王子の代わりの立場になれるかもな!」

「え、本当に?」

「それくらいのことだからね、王族の決闘なんて」


 ダンプの言葉を疑う。

 そういえば、王族の家が二つも無くなり、王子であるルディオも活動できなくなる。

 そうなったら、次期国王だったりの跡継ぎも難しくなってくる。


「色々教えてくれてありがと。頑張れよー」

「お、おお」

「こちらこそー!」


 なんかブルドーのテンションがおかしい気がするが、まあ次にいつ会うかは分からないし気にしなくていいだろう。


「ふ~ん、ふふ~ん」


 色々と考えることはあるが、勝負に勝ったという気持ちで気分がいい。スキップもしてしまう。


「はあ、なんで男なんだろう」

「本気かお前」


 城はすぐそこだ。急ごう。

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