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036 村娘、ポーションを作成する

 場所は領主の屋敷、つまり俺の家。

 その一室で、俺、エリィ、ドレイク、シウニンの四人が集まった。外ではカリウスが警備をしている。


「にぃ、しぃ、ろぉ、やぁ、とぉ……十二!? なんですかこの錬金窯は!?」


 案の定、シウニンさんは『十二連錬金窯』に着目した。

 ロンテギアには出回っていない素材でできた錬金窯であり、おそらく世界で最先端の性能だ。


「すごいでしょう? ちょっとシャムロットで入手しましてね」

「それはまた……触れちゃいけない話ですか」

「まあそのうち分かりますけどね。詳しい話はややこしいし面倒なので省きます」

「あっ、はい」


 どうせそのうち話すことになるが、ここでライトが~と話をしたら信じてもらえるはずがない。いや、信じてもらえる気がするぞ。

 でも面倒なので後回しだ。回復魔法とかの話もまだしていないし、そのうち話すでしょ。


「まず作成方法ですが……水入り瓶ではなく『ポーションM』を用意します。水入り瓶で作ると失敗するので、この情報を教えさえしなければ真似される心配はないでしょう」

「なるほど……」


 プレゼンかな? ってくらいに解説していく。

 錬金窯には『ポーションM』が取り付けられていて、それを『グリーンポーション』にする。

 『ポーションL』でも作れるが、その場合『グリーンポーション+』という別のアイテムになってしまうので作らない。そもそもそんなアイテムを作ったところで使い道なんてない。それに他の錬金術師も作れないだろう。


「それ以外の作成方法は同じです。エリィ」

「ええと、この状態で、『グリーンクローバー』を入れます」

「ふむふむ」


 シウニンさんが見ている状態で、エリィが錬金窯に『グリーンクローバー』を入れる。


「蓋をして、魔力を流します……っ!」

「おおおっ」

「最近の錬金窯はすごいのぉ」


 いくら作れるようになったとはいえ、一回の作成で体力を多く消費するのは変わらない。

 錬金窯が暴れ馬のように動き、それをエリィが上から押さえつける。魔力が爆発してしまったら失敗だ。

 やがて錬金窯の暴走も止まり、安定してポーションを作成していく。


「……! でき、ました!」

「これが……! 一度にこれだけ作れるのなら十分商品として成り立ちますよ! 『ピンクブロッサム』は高級品と言っていましたが、そもそもポーション自体が高級品なのでこれもかなりの高額で売買することになりそうですね……」


 そう、元々ポーションは高級品なのだ。

 ランク2の『ポーションM』でも金貨が必要になる。『ポーションM』でそれなのだから、ランク4のフラワーポーションは桁違いの額になるだろう。

 そう考えると、大量に生産できる『十二連錬金窯』はとてつもない道具だと再認識できる。


「これをゆっくり普及させていき、錬金術師も増やしていきたいですね」

「そういえば、エリィさんは村人という立場なのにこれだけの技術を持っているのですよね? なぜ王都で働こうと思わなかったのですか?」


 当然、気になるのはそこだろう。

 しかしこれはエリィの事情や商人と錬金術師の関係もあるので迂闊に手を出すべきではないのかもしれない。


「まあ、ちょっと深いわけがありまして……」

「利用されそうだったからです! 王都の錬金術師に!」

「り、利用!?」


 おっと、話すんだ。まあエリィが話したいのならそれでいいけど。


「話すの?」

「うん、いいでしょ?」

「もちろん。ではシウニンさん、よく聞いてください。実は――――」


 エリィからではなく、俺からシウニンさんに伝えることにした。

 エリィ本人が話すと、悔しいという気持ちが大きくなってしまう。だから、話を聞いた俺が代わりに話す。

 錬金術師に利用されそうになったこと、トワ領が弱小領地として蔑まれていたことなど、トワ村の境遇についても詳しく話した。


「……なるほど。一度、その錬金術師と話し合う必要がありそうですね」

「う、動いてくれるんですか?」

「商人は信頼の仕事ですから。そんな話を聞いたら事実確認が取れるまで信頼できません。エリィさん、その話し合いに貴方も参加していただけますか?」

「わ、私が……?」

「いいじゃん、あの錬金術師たちを見返すチャンスだよ? あ、もちろん俺も領主として参加するね」


 なんと、上手いこと話が運ばれた。

 どうせそのうち錬金術師たちが「このポーションはなんだ!」と話を聞きに来るだろう。

 その時に見返してやろうと思っていたのだが、ラッキー。やり返すのがこの時点で確定した。


「しかしいつ話し合いの場を設けましょうか……」

「ああ、それなら向こうから来ると思いますよ」

「……確かに、突然このようなポーションを取り扱ったら来ないはずがありませんね」


 シウニンさんも思うところがあるのか、俺の言葉に肯定した。

 なら、その錬金術師は商人ギルドでも有名と考えていいだろう。


「なのでそれを待ちましょう。そう遠くないうちに、商人ギルドに乗り込んでくるはずです」

「ははっ、おかしいですね。なんだか楽しくなってきましたよ。これじゃあ商人失格だ」

「いやいや、最高ですよ。シウニンさんの上司も見返してやりましょう。いるでしょう? 嫌味ったらしい上司が。これを機に錬金術師の技術向上に貢献できれば簡単にできますよ」

「……ふふっ、失礼。そうですね、結果を出せばいいんですもんね」


 シウニンさんとそんな会話をしながら、ふへへへと不気味に笑う。

 これが世界の国宝を手に入れる第一歩なのだ。そこでエリィの下克上に参加できるのだから楽しくて仕方がない。


「レクトは相変わらずじゃなぁ。楽しそうで何よりじゃ!」

「あれ以上のことやろうとしてるのよね……はぁ、頭痛い」


 視界の端で、エリィとドレイクが何か言っているが、どう言いくるめるか考えるのに集中していてよく聞こえなかった。

 いざ、王都進出! 経済を回せ! 戦の始まりじゃああああああああああ!!!!!!

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