030 青髪赤髪貴族、コレクターを脅す
「なんと……確かブルドーは城内に居たはず。おい、ブルドーをここに呼べ」
「ハッ!」
王様に今回の事件について話すと、かなりショックを受けたようで頭を抱えた。そして、近くにいた兵士にブルドーを呼んでくるよう指示する。
なんだ、城にいるのか。トワ村の隣の領主なのにいつも城にいるね。暇か?
しばらくすると、青髪の貴族が玉座の間に入ってくる。
ブルドー、あの時の青髪貴族で間違いなかった。
「どのようなご用件でしょうか王……って、なんでお前がここに!?」
「よお」
「……なっ!? こいつらは……」
自信満々な表情で入室してきたブルドーだったが、俺の顔を見てその自信を無くし、続いて山賊を見て顔を真っ青にした。
きっといま、彼の頭の中で様々な疑問が渦巻いているのだろう。何故山賊が捕まっているのか、何故俺がここにいるのか。
「この山賊は知り合いかね、ブルドー」
そして何故、王様がこんなことを言ったのか。
山賊が捕まり自分と手を組んだことを吐いたと理解したのだろう。唇を噛みながら山賊を睨みつけた。
「くっ……し、知らない! 僕は何も知りませんよ!」
「何をそんなに慌てておる。本当に知らないと言うのなら慌てる必要はないであろうに」
「それは、その……とにかく僕は知らない! 疑われたら焦りもするでしょう!?」
明らかにブルドーが犯人だが、その気持ちは分かる。犯人じゃなくても疑われたら挙動不審になるよね。
しかしそれはそれとして犯人はブルドーなので同情の余地はない。
「ですがブルドー様、山賊はブルドー様に命令されたと言っておりましたが」
「そんなの、僕が知るか! ……そうだ! レクト、お前僕を貶めようとしてるんだろ!」
「いやいや、するならもっと上手くやるから」
わざわざ貶めなくても、村で収穫した『グリーンクローバー』と『ピンクブロッサム』、それを加工した『グリーンポーション』で一気に駆け上がれるのだ。こんなタイミングで悪手は打たない。
「静かにせい。どちらかが嘘をついているのは確実。話し合いをするのなら、場所を変えよ」
「チッ、それならダンプを呼んできます。僕がずっと王都にいたと証明してくれますから」
ダンプが誰だか知らないけど、逃げるかもしれないので監視した方がいいだろう。
兵士に頼まないのは、逃げるためか、この空気の中待つのは応えるからか。
「あ、じゃあついていってもいい? 逃げないようにさ」
「……ふん、むしろお前を僕が監視してやるよ」
そう言いながらブルドーは立ち上がった。
俺もそれに続くように立ち上がる。すると、隣にいた騎士長が口を開いた。どうやらカリウスに話しかけるつもりらしい。
「これはややこしいことになったな」
「ええ、なにせ証拠がないですからね。山賊が嘘を言っている可能性だってあるわけですし。どうしたらいいものか」
確かに、こういう記録ができない時代の裁判などはどうなっていたのだろうか。
現代のように監視カメラやボイスレコーダーなどの証拠はない。
聞き込み調査とは言っても、限界があるはずだ。仕込みだってできるし、やはり権力で全てがもみ消されてしまうのか。やはり権力、権力は全てを解決する。全ては無理か。
廊下に出ると、ブルドーは不機嫌そうに俺を睨みつけてくる。
さーてどうするか。王族相手となると、権力の無い俺では勝ち目が薄い。このまま話し合いをしたところで意味はないだろう。
俺が勝つにはどうすればいいか、思考を巡らせる。
考えている間に、ダンプと合流した。ダンプは赤髪貴族の名前だった。
合流と同時に、ある部屋の隅に連れて行かれる。脅しか?
「よォ男女。あの時はよくもやってくれたなァ?」
ストレージからあるアイテムを取り出し、発動させた。
ダンプは俺が『スタングレネード』を使ってやり返したことに怒っているようだが、馬鹿にしてきたのはそっちだろう。
「ったく、どうなってんだよブルドー。なんで失敗してんだ」
「知らないよ! 思ったよりもカリウスが強かったんだ、まさか山賊が負けるなんて……」
ほお、赤髪貴族……ダンプもこの作戦に関わっていたのか。
「やっぱりブルドーが犯人だったんだ。ダンプも関わってるの?」
「ああ。二人で考えたんだ。僕達にあんなことをしたんだから、ちょっとは痛い目を見てもらわないとこっちの気が済まないんだよ」
「少し嫌がらせをすりゃいいと思ってたが、ムカつくぜ……」
そう言うと、ダンプは懐からナイフを取り出し、俺の首元に当てた。
刃物で脅すか。流石に王城の一室でそんなことはしないと思うが、一応反撃できるようにはしておく。
「こいつで斬られたくなかったら大人しく従うんだな」
「僕が犯人ですー、ブルドー様を貶めるために山賊に指示しましたーって王に言えばそれで終わりなんだよ。分かるだろ? 僕は王族で、お前はただの貴族。どうやっても勝ち目なんてないんだ」
「……ああ、分かった」
とりあえずここは従っておく。
勝利を確信したのか、ブルドーとダンプは口元を歪ませた。
醜いなぁ、こうはなりたくない。現実はクソだと思っていたが、ファンタジーもなかなかにクソだ。
しかも貴族が権力を振りかざしているので地獄どころか大地獄だ。
「へっ、やけに素直じゃんか。素直な奴は嫌いじゃないぜ?」
「むさい男に好かれてもなぁ」
「テメェ!」
ダンプは怒りに任せてナイフを振るってきた。いくら怒ってるからって、王城の一室で貴族を襲っちゃダメだろう。せめてそういう判断はしてほしい。
「おっと。危ないなぁ、先戻ってるよ」
俺はナイフを避け、部屋から出るべく扉に向かう。後は玉座の間に戻るだけ。
さあ、恐ろしく簡単に終わる反撃の始まりだ。
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