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029 村の騎士、領主の正体を知る

 ドレイクに山賊の監視をお願いし、俺とカリウスは屋敷の中に入った。

 初めて会った時、エリィを村まで運んできたあの時と同じように椅子に座る。

 重々しい空気が流れるが、俺の正体を伝えるだけだ。


「……まずは、どこから話そうかな。何が聞きたい?」

「何も分からないんだ。何か隠してるのは気付いてたんだけどな」


 そのレベルだったか。

 まあ、我ながら上手く隠したものだと思っている。

 ボロがあるとしたらちょっとムカついてルディオに『スタングレネード』を使ってしまったくらいだ。


「とりあえず、ほら、最初に会った時のワイバーン。あれ倒したの俺ね」

「そうか……は?」

「え?」


 そこも疑っているものだと思っていたが、案外カリウスは純粋なのかもしれない。

 ワイバーンを倒したのは俺、それを知ったカリウスは口を開けて思考を停止してしまった。

 そして、再び思考が動き始めたのか頭を掻きながら唸り始める。


「ってことはあれか? お前……第四魔法、使えるのか……?」

「そこからかぁ……まあいいや、最初から話すよ」


 もう全てを簡単に説明してしまった方が楽だと判断した俺は、この世界に来てしまった日から今日までのことを説明することにした。

 まず、俺が別の世界、御伽噺の『トワイライト』とよく似た世界から来たこと。

 そして、その主人公と同じ経験をしていること。

 第五魔法まで使えること。

 様々なアイテム、道具を持っていること。

 各国の国宝を手に入れようとしていること。

 ライトを名乗り冒険者をしていること。

 ついでに、ダラカが炎竜ドレイクであること。


「……まさかそんなすごい奴だったとは」


 俺の説明を最後まで聞いたカリウスは、一言呟いた。

 俺は別にゲームのステータスなどを引き継いでるわけで、すごい奴ではない。


「で、どうするの? 俺は国宝を手に入れようとしてるんだよ。止めないの?」

「悪用しようとしてるなら止めるんだけどな。欲しいだけなんだろ?」

「そうだけどさ。やけにぱっと受け入れたね」


 もっと受け入れられずに疑うと思っていたのだ。まだ何か隠しているんじゃないか、とか。


「むしろ納得したさ。逆に不気味じゃなくなった」

「そうなるのかぁ」


 カリウスはそれ以前の関係で信用し合ったため、俺の言葉を受け入れたのだ。

 なら、俺もカリウスを信じよう。仲間として戦ってもらう時が来るかもしれないんだ。それを伝えなければならない。


「今後さ、カリウスを巻き込むことになるかもしれない。ロンテギアだけじゃなく、他国の国宝まで手に入れようとしてるから。もしそうなったら、手を貸してくれる?」

「もちろんだ。その行いが間違っていなければな」


 それはどうだろうか。

 俺の行いは間違っているのか。誰かの幸せを奪っていないか。

 俺が国宝を集めたせいで世界が滅ぶ、なんてことになったら困る。図書館の本には詳しいことは書かれていなかったが、今度もっと国宝について調べておいた方がいいかもしれない。


「どうだろ。でも、それで悪いことが起きるなら諦めるよ」

「なら安心だ。これからもよろしく頼むぜ」

「ああ」


 図書館でしたときのように握手をする。今回は図書館ではないので司書さんには怒られない。

 その後、今後の流れについても話し合った。まずは、明日あの山賊を王都に連れて行き、犯人を捜さなければならない。


* * *


 翌日、俺たちは山賊を馬車に乗せて王都に向かった。

 今回はゴーレムの配置はしていないが、ドレイクがいるので大丈夫だろう。


 ロンテギア城に向かい、さて城内に入ろうかと思ったその時。筋肉質で髭面の男がこちらに近づいてきた。

 相当な実力者だ。肉体がそう語っている。


「騎士長。ご無沙汰しております」


 カリウスが頭を下げながらそう言った。

 騎士長か、それなら納得だ。


「カリウスじゃねぇか。今日はどうした」

「はい、トワ村の周辺にいた山賊を捉えましてね。話を聞いたところ貴族に命令されたと言い出したんですよ」

「貴族に? おいお前。その話は本当か」


 騎士長は手を縛られた山賊にそう聞いた。

 その迫力に、山賊はたじろぎながらも口を開く。


「ひぃ! ほ、本当だ! ブルドーって奴に命令されてよ!」

「そうだ! 金と飯をくれるっていうから頼まれたが、領主まで戦えるなんて聞いてねぇぞ……」


 そうか、二人で奇襲すればカリウスに勝てると考えて依頼されたんだ。

 だが現実は森の中に潜んでいるところを見つかり、手も足も出ずに負けたと。

 屋敷には俺もいるので、奇襲をされても負けることはなかっただろう。


「ブルドー、だと?」

「心当たりがあるんですか、騎士長」

「心当たりどころじゃねぇ。ブルドー様は王の従兄弟の息子だぞ。青い髪が特徴的でな。それなりに権力を持っていたはずだ」


 青い髪の貴族……そう言われるとルディオ? の隣にいた貴族を思い出す。

 王族ならばルディオと関わりがあるのも頷ける。そうなると赤髪の貴族も王族か。

 ブルドーが犯人で決まりだろう。直接やり返さなきゃダメみたいだね。


「というか、なんでお前は知らないんだ、カリウス」


 俺もそう思った。王族なんでしょ? なんで知らないの。


「そっそれは……その……貴族の名前覚えるのとか、得意じゃなくて。あ、あははは」

「ったく、変わらんな。暇な時にでも勉強しておけ」

「すみませんでした!」


 カリウスは深々と頭を下げた。それはもう綺麗な謝罪だった。


「話を聞いたからには黙っていられねぇな。本当にブルドー様が犯人だってなら大問題だ。王に報告しなくてはならん。貴方はトワ村の領主でしたかな。ついてきてくだされ」

「分かりましたぁ」


 こちらから犯人捜しをせずに済んだ。

 俺とカリウスは騎士長に連れられ、玉座の間に向かった。

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