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025 コレクター、敵だらけになる

 鍛冶屋を出てそのまま酒場の冒険者ギルドに向かう。

 冒険者ギルドは特に変わった様子もなく、相変わらず少ない冒険者がいるのみだった。


「こんにちは」

「こんにち……わぁっ!?」

「そんな驚かなくても……」


 俺の顔を見た受付さんは、火竜族のリウカさんよろしく信じられないと言った表情でこちらを見てくる。


「依頼を達成したので依頼人を呼んでいただけませんか」

「は、はい。しばらくお待ちください。依頼が受理されたことは伝えたのですぐに来ると思いますので」


 なんと、数が少ないこともあってか依頼人には既に俺が依頼を受けたことは知らされていたらしい。

 受付さんは奥の扉に入ると、しばらくして戻ってきた。別の伝言役の人に伝えたのだろう。

 待っている間、ドレイクについて聞かれたが預かった子供とだけ伝えておいた。ドレイクも演技をすることに対してもう反発はしてこない。ただし下手くそだが。


「私の宝が戻ってきたとは本当か!!!」


 しばらくすると、金髪のエルフの男が酒場の扉を勢い良く開けながら入ってきた。

 なに、金髪の男はみんな扉を勢い良く開けないとダメなの?


「はい、この方が……」

「おおお! 君が取り返してくれたのか! ありがとうありがとう!」


 あのクソ王子とは違いしっかりとお礼を言いながら手を握ってきた。

 しかも両手だ。そして上下にぶんぶんと振り回す。嬉しいのは分かるけど痛いって。

 多分悪い奴じゃない。なんとなくわかる。


「いえいえ。えーっとどれでしたっけ」


 俺はテーブルに依頼で取り返してほしいと書かれていたアイテムを並べた。

 エルフの男はその中の一つ、おそらくランク3の宝剣を手に取ると再び手を握ってきた。しつこい。

 でもまあ、感謝されるのは気持ちがいい。これでお金が手に入るのだから素晴らしい仕事だ。

 素晴らしい仕事なのだが、死のリスクが高すぎてやってる人が少ないんだよねぇ。


 その後も数人の依頼人が現れアイテムを受け取り金を置いていく。貴族のエルフ、妖精から平民まで幅広い。平民の中には、全財産を出して取り返した者もいた。

 これ、ドレイクに盗ませてそれを受け取って渡せばマッチポンプで稼げるのでは?

 なんて思ったけど普通に最低なのでやらない。できるかも、というだけだ。


 全ての依頼を達成し、一息つくと酒場にいた茶髪の男がこちらに近づいてきた。

 耳は長いが、中年ほどの年を取っている。外見からしてドワーフ族だろうか。


「ドレイクから財宝を取り返したという冒険者は貴様か」

「そうですけど」

「なら俺の剣も取り返したんだろ。さっさと寄越せ」


 ……は?

 なんだこいつは。さっきのやり取りを見ていなかったのか。依頼なら金が必要なんだよ。

 そしてこのドワーフはよく俺にそんなことが言えたな。俺はドレイクから財宝を奪い返したってことになってるんだぞ?


「嫌です」

「ああ? あの剣は俺のモンなんだよ。持ち主に返すのが礼儀だろうが!」


 なるほどな。まあその思想は理解できる。物を盗まれた、それは俺の物だと。

 だが考えてみてほしい。物が盗まれて、それが盗んだ人とは別の人に売られていた。または他の人がさらにそれを奪った。

 そして、それを売っている人、もしくは奪った人にそれは自分の物だから返してほしいと言われたらどうだろうか。

 答えはそんなこと知るかだ。金を渡されれば話は別だが、ここは現代じゃない。直接盗んだ本人に文句を言え。


「おいテメーら! テメーらの中にもあの炎竜に奪われたヤツはいんだろ!? 取り返したいと思わないか?」

「そ、そうだ! 俺の盾も奪われた!」

「あたしもよ! 宝石を奪われたの!」

「ど、どうするのよライト」


 しかし悲しいかな。自分の物であったという事実は変わらない。文句を言いたくもなるだろう。

 別にここで「では全員に返します」と言っても別に痛くもかゆくもない。金は手に入れたのだ。

 だが、依頼をし、大金を払ってまで取り戻したあの人たちに失礼だ。

 今の所有権は俺……と、ドレイクにある。だから使い道はこっちで決めさせてもらう。


「奪われた物を返してほしいなら、それ相応の金を払ってください。それとも、殺してでも奪い取りますか?」


 俺は〈瞬間倉庫(クイックストレージ)〉からランク4の剣『ムーンマジックブレイド』を取り出し見せびらかす。

 今更ストレージや〈瞬間倉庫(クイックストレージ)〉を隠さなくてもいいだろう。ドレイクから財宝を奪ったことになっているので、相当な実力者として見られているはずだ。

 俺の剣を見た人たちは怖気づくと、何事もなかったように酒を飲み始める。しかし皆チラチラと睨んでくるので居心地は悪い。

 さて、目の前のドワーフは、と。


「ば、化け物め……!」

「なに?」

「ひっ……ちくしょう!」


 何の面白みもなく去ってしまった。

 化け物かぁ、この世界だと正真正銘の化け物なんだろうな。


「ぬぇ? 金を出されたら返してしまうというのか!?」

「まあ場合によってはね。金出すから返せって偉そうな奴には返さないよ」


 どうしても返してほしい、大切な物なんだ! って場合は返してしまうんだろうな。

 場合によっては減額もあり得る。アイテム好き好きオーラを出されたら俺は弱い。

 アイテムじゃ、金じゃ手に入らないものは山ほどあるからね……


「仕方ないのじゃ……わしも、物が無くなる悲しみは知っておるからの。それはそれとしてなんか嫌じゃ……」


 それは我慢してもらっていいですか。

 さーて、これでシャムロットでの用事は終わった。後は領地運営をしながら錬金窯の完成を待つだけだね。

 そうと決まれば早く帰ろう! 冒険もいいけどダラダラした日常もいいよネ!

 なんて思っていると、奥の扉から来た人と会話をしていた受付さんが声を掛けてきた。


「あの、ギルド長がライト様に会いたいと……」


 忘れてた。

ここまで読んでいただいた方に頭を地面に擦りつけるほどの感謝を。ありがとうございます。

もしよろしければ感想やブックマーク、ページ下の評価システム【☆☆☆☆☆】をご活用いただければなと思います。

今後ともコレクター生活の応援、ぜひよろしくお願いします!

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