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023 村娘、星と衝突する

 俺は今、竜化したドレイクの背中に乗りながらカフの里で受け取った特産品を鑑賞している。

 受け取ったのは『赤熱鉱石』と、それで作られた剣や盾、腕輪などの装備や装飾品だ。

 『赤熱鉱石』はその名の通り赤く熱を帯びた鉱石だ。『トワイライト』にはなかったが、アイテムのランクはそれほど高くないように感じる。素材自体はランク3のものだ。

 この世界では魔法同様四段階目が最高なのだろう。アイテムのランクも、今のところランク3までしか見かけていない。


 と言っても、ゲーム内でもランク4から上は神秘的な物だらけだったためこれが普通なのだろう。

 もしランク5のアイテムがそこら中にあったら世界が危ない。世界壊れる。

 というわけでランク3の『赤熱鉱石』は十分高ランクと言える。これもロンテギアには流通していないのだろうか。


「……眠い?」


 隣を見ると、エリィが眠そうな顔でうつらうつらしていたのでそう声を掛けた。


「そうね……今日だけで色々あったから、かなり疲れてるわ」


 初めての妖精の国、戦闘、火山。ただの村娘が一日で様々なことを経験した。

 一日振り回されたようなものだから疲れるのも当然だろう。

 こういうのは一旦休んだ時に疲れがどっと来るのだ。

 俺が初めて『トワイライト』をプレイした時のことだ。時間を忘れてプレイし、ログアウトした瞬間にありえないほどの疲労感が襲ってきたことをよく覚えている。


「うーん……今日はトワ村に帰るか。明日はどうする? 冒険者ギルドと鍛冶屋のおっさんへの報告ついてくるか?」

「行くわよ、私の錬金窯を作ってもらうんだもの。それに、寝ればきっと大丈夫だから」

「そか。無理しないでね」


 火山日帰りの時点でこの世界では異常なのだ。

 まあ一晩で火山に行って帰ってくるのも異常かもしれないが、日帰りよりはマシだ。

 もう空は暗くなっている。帰りながらドレイクにトワ村の場所を教えよう。


「しっかし自分で飛ばないのは楽でいいなぁ」


 〈浮遊(フロート)〉で空を飛ぶのにはコツが必要だ。エリィも安定するまで少し時間がかかった。

 こうした移動は楽でいい。なにせ乗っているだけでいいのだ。例えるなら自分が運転する車に乗るときと人が運転する車に乗るときくらい違う。安心感が段違いだ。


「乗り心地はどうじゃ?」

「最高! 『トワイライト』にもこういう移動方法実装されてほしいくらい」


 サラマンダーより、ずっとはやい!!(サラマンダーの速さは知らない)

 何もせずに風を切るのもいいものだ。気持ちがいい。

 そんなことを思っていると、夜空に一筋の光が見えた。

 おお、流れ星か。ん? でも見えてる時間長くない? 彗星かな。


「なんか、近づいてきてないあれ?」

「え? ほんとだ、綺麗……」

「そんなこと言ってる場合じゃないでしょこれ。この近くに落ちるんじゃない?」


 見た目的には彗星に見える。

 とある映画で小さな町に彗星が落ちるという話があったが、それよりかは小さい。

 そのレベルまで行くと、レベル5の魔法〈隕石(メテオ)〉になってしまう。

 なので大被害までは行かないと思うが、近くに落ちたら危険だ。


「っ! まずい! 本当に落ちる! 気を付けて!」


 明らかに近くに落ちる。そう確信した俺は二人……二人? に気を付けるよう伝える。

 まさか本当に近くに落ちるとは。

 その彗星は、少しずつフェリン大陸に近づき、シャムロットに近づき、俺たちに近づき、やがて……


「えっ……?」


 ドレイクの背中に落ちた。


「なんじゃあああああああ!?」


 いや、正確にはエリィに直撃したように見えた。

 俺は無傷だ。強い風は感じたが痛みは感じていない。

 しかし俺の隣、エリィはただでは済まないだろう。

 くそ、念のため防御魔法を使っておけばよかった。直撃するなんて。


「エリィ!」


 死んでないよね……? 〈蘇生(リザレクション)〉とか使えるようにしといた方がいいかな?

 煙が消え、エリィの姿が見えるようになる。


「あ、あれ? なんともない……」


 そこにいたのは、目を白黒させながら自分の身体をボーっと見るエリィだった。

 うん? なんで無傷???


「えっ!? あれぇ!? ほ、本当になんともないの? 痛みとかは……?」

「痛みも何もない……こ、こわっ!?」


 こっちのセリフだ。

 エリィってただの村娘だよね。なんか物凄い伝説の戦士の末裔とかだったりする?

 可能性としては、この世界独自のシステムで『ワルキューレシールド』が自動で発動したか、レベルが上がって何かしらの耐性を獲得したか。

 どれも考えにくい。だがファンタジー世界なので否定はできない。ファンタジー世界は何でもありなのだ。


「いやまあ、一応〈大回復(キュアール)〉」

「あ、ありがと?」


 念のため回復をするが、おそらく意味はないだろう。

 なるほど、突然ってここまで精神が疲れるのか。今日一日こんな感じの気持ちに何度もなったんだろうな。申し訳ない。


「ど、どうなったんじゃ?」

「何も変わってない」

「それはそれでどういうことなのじゃ!?」


 ドレイクが心配してくれるが何も変わってないのは本当なのだ。

 しかしドレイクですら驚くとは、まあ隕石耐性とか普通考えられないよね。本当に何なんだ。

 まあ考えても仕方ない。今日はゆっくり休んで、明日目的を達成しよう。そこでひと段落だ。

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