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019 コレクター、火竜族の族長に会う

 火竜族の里、そこは溶岩が川のように流れる小さな集落だった。

 そのまま、水が溶岩になった村って感じだね。水分補給とかはどうやっているのだろうか。

 この里の特産品とかあったりしないかな。金ないから物々交換とかでなんとかしたい。

 そういえば、里に入ってからやけに視線を感じる。よそ者が里に入ってことに驚いているのか、それともこの暑さに耐えていることに驚いているのか。


「リウカよ、その者たちは……」


 その中の一人がリウカさんに話しかけてくる。

 皆一様に赤髪で、角が生えており尻尾も見える。

 それぞれに個性はあるが、同じように見えてしまう。人間も他種族から見ると同じに見えるのかな。

 はっ! これが大学生全員同じに見える現象か。こっちが正しい使い方だったとは。


「火山に入りたいとのことで、族長に挨拶をさせようかと」


 え、そうなの。それ聞いてない。

 でもまあ里に来てもらうってことはそういうことか。挨拶くらいはしておいた方がいいよね。


「ほお、くれぐれも無礼なことはしないように頼むぞ。怒らせると怖いのだ、我らが長は」

「族長さん怖いんだ……変なことしないでよね、ライト」


 いやだから、俺は変なことはしないって。

 全く、なんで疑うのか。普段の行いとかかな?

 それだな。原因分かっちゃった。自業自得だった。


「まあいつも通りにしてれば大丈夫でしょ」

「緊急用の『転移石』持っておかなきゃ」

「そんなに不安なの……」


 ちなみに『転移石』とは記録された場所に転移することができるアイテムだ。

 トワ村を記録したので、使えば一瞬でトワ村に転移することができる。

 消費アイテムのため、超絶貴重なアイテムだ。複数個持っているが、おそらく二度と手に入らないだろう。

 まあ、使わせるつもりはないけど。


「族長、火山に入りたいという者を連れてまいりました」

「通せ」


 火山に入るのに火竜族の許可が必要なのか、と思う部分はあるけどそれで迷惑してるんだからまあ気にするのは仕方ないよね。

 石造りの家に入る、おそらく、ただの人間がここに入ったら死ぬだろう。

 極限サウナ状態だ。人間の蒸し焼きが出来上がってしまう。ここに食材持ってきたら蒸し料理ができるんじゃないかな。


 族長と呼ばれた男は、鋭い眼光のおじいさんだった。

 ごつごつした顔つきに、色の濃い赤黒い尻尾。歴戦の戦士、みたいな雰囲気だ。

 確かに無礼なことはできない。


「ライト様と、エリ様です」


 リウカさんが俺とエリィの名前……? 偽名を言ってくれたので、俺とエリィは小さく頭を下げた。


「ライト……ほお。まァ聞きてェことは山ほどあるんだが、まずは……エルフがなぜ火山に入れんだ?」

「秘密です」

「はっ、面白れェ。じゃあ別の質問だ。火山に何の用だ」


 そりゃ、聞きたいことはそれだよね。

 そして俺が返すべき言葉はこれだ。


「ドレイクに奪われた物を奪い返しに来ました」

「はああっ!?」

「なっ!?」

「……」


 隣にいたエリィとリウカさんが声を上げた後、口をパクパクさせながらあわあわし始めた。

 しかも二人一緒にだ。なに、急に仲良くなったね。


「いやね? 依頼があったんですよ。ドレイクに大切な物を奪われたから、取り返してほしいって。なので取り返します」

「へェ、随分優しいじゃねぇか。そんでわざわざ命を捨てにここまで来たと」

「優しいって……対価があるから来たんですよ」


 対価が無かったらやってない。

 ドワーフのじいさんに錬金窯を作ってもらうこともそうだが、依頼に関しては金がもらえるからだ。人助けしてやろうってわけじゃない。


「ほお、つまり私利私欲のためと?」

「私利私欲のためですよ。ドレイクはそれが欲しいから物を奪ってるんでしょ? なら俺も金が欲しいから、物が欲しいから奪い返しますよ」


 俺の言葉にエリィは頭を抱え、リウカさんは口を開けて唖然としていた。

 もう口を挟むつもりはないらしい。


「いいじゃねぇか、自分のため。実に結構。だが、貴様がそれに成功しようと失敗しようと我らはドレイク様の怒りに巻き込まれちまう。はいそうですかとこのまま火口に生かせるわけにはいかねェ」

「でしょうね。どうします? ここで殺しますか」


 ここで殺しに来たら、俺は全力で対抗する。

 極力無効化を目指すが、もしかしたら殺してしまう可能性もある。


「いや、やめておこう。我では勝てん」

「そんな、族長!?」


 ……なんで俺の実力……というか強さを知っているんだ。

 これも魔力を察知した、というやつだろうか。


「貴様はドレイク様から財宝を奪えると確信しているだろう。根拠のない自信なんかじゃあねェ」


 なるほど、俺の目に余裕があるかどうかで確信したのか。

 この短い時間でそこまで確信できるとは。やはり只者ではない。

 しかしこれ以上踏み込むつもりがないならこの里に用はない。許可が出たならさっさと行かせてもらおう。


「じゃ、行ってもいいですか」

「まあ待て。一つ頼みがある」

「頼み?」


 なんと、まさか族長から頼みごとをされるとは思わなかった。


「『燃え盛る指輪』、内部に炎を灯すルビーの指輪だ。……妻の形見でな、そいつを取り返してくれ」

「対価は?」

「そっちで決めてくれて構わない」


 俺が決めていいんだ。コレクター相手にいい度胸である。


「そうですか。じゃあ、探しておきますね」

「恩に着るぞ、英雄」

「そんな大層なもんじゃないですけどね。期待しててください」


 英雄かぁ。『トワイライト』のストーリーではよく呼ばれていたが、NPCではない相手に言われるのはなんだか照れる。

 まあ四竜なんて言われているドレイクと戦おうとしているのだ、はたから見れば英雄か。


「お邪魔しました」

「し、失礼しましたっ!」


 さっさと仕事を終わらせるべく、エリィの服を掴んで家の外に出る。

 火口は、飛んでいけばすぐだな。フレイムキメラなどである程度戦闘には慣れてきたし、このまま一気にドレイクの住処に突撃してしまおう。

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