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159 コレクター、最後の敵を倒す

「ほい、ついたぞ」

「なっ!? どこから入ってきた!」


 視界が転移により切り替わり、だだっ広い部屋の中に変わる。

 その部屋で叫んでいるのは、よれよれの白衣にボサボサの黒髪、ひしゃげたメガネが特徴的な男だった。

 この人が山田か。確かに腕っぷしはなさそうな男だ。


「俺の顔覚えてないか? ライトだよ」

「ライト!? そうか、逃げ出したのかっ! ならば仕方ない……! ゴーレム起動!」


 山田が叫ぶと部屋の隅に立っていたロボットのようなゴーレムが動き始める。

 ぶぅんと目が赤く光り、こちらを敵と認識し突進してきた。


「おっ、ゴーレムぅ?」


 ライトに襲い掛かるゴーレムを、俺は短剣で受け止めた。

 力はあるが押されるほどではない。世界樹の世界で戦ったゴーレムと比べたら天と地ほどの差があるだろう。

 俺はゴーレムを押しのけ、距離を取った。


「レクト、任せていいか?」

「了解」


 ライトからは特に何もしないらしい。ここは俺一人でゴーレムを倒そう。

 ゴーレムを倒すにはコアを破壊する必要がある。そのコアは基本的に身体全体に均等に動力を送るために人間でいう心臓部、身体の中心に埋め込まれている。

 つまりそこを一刺しすれば簡単に倒せるのだ。防御力が高ければ何発か防がれてしまうが、このゴーレムはどうだろうか。


「素材は金属、それも機械が仕組まれていると」


 まずは分析から始める。見た目は完全にロボットだ。背中にはジェットパックがあり突進の時に速度を高めていた。広い空間ならば飛べるのだろうか。

 手持ちの武器は無し、両サイドには小さなミサイルのようなものが複数見える。撃てるのかな。

 そしてミサイルの近くからは何やら赤く光る魔石が複数見える。コアではない、魔力を使った攻撃の射出口だ。

 大方ビームでも出るのだろう。


「これが魔術と科学のハイブリッドゴーレムだ!」

「ハイブリッドねぇ?」


 ふははははと笑う山田。この人の研究のテーマに魔術と科学を合わせるとかそういうのがあるのかもしれない。

 だが、合わせればいいというものではない。こいつの倒し方はなんとなく分かった。

 ゴーレムはミサイルをこちらに放ってくる。


「〈氷弾(アイスショット)〉」


 俺はミサイルを氷の弾で打ち落とす。爆発を抑えたのだ。

 ゴーレムを見ると、もうすでにミサイルが装填されていた。流石に一回の発射で終わるわけではないらしい。

 続けて赤いビームが飛んでくる。こっちは簡単に避けられた。速度が足りない。

 攻撃手段も把握したので、もう確認することは無くなった。さっさと決着をつけよう。


「まずは……脚!」


 一気に距離を詰め、ゴーレムの太ももの付け根辺りを短剣で切り裂く。

 続けて、ジェットパックと本体の間に短剣を突きさす。最後に、ミサイルと繋がっている辺りにも短剣を突き刺して終了だ。

 ゴーレムは片足で立てなくなり倒れ、ジェットパックは機能停止。ミサイルも撃てなくなっている。

 無理やり魔術と科学を合体させたから弱点が増えるのだ。


「な、なんだと!? そんな、ありえない……!」


 驚きが隠せない様子の山田を尻目に俺はゴーレムの解体を行った。

 胸の辺りにあるパーツを無理やり外し、中にあったゴーレムコアを取り出す。よし、コアを傷つけずに手に入れたぞ。これは戦利品だ。


「何してんだよ……」

「勝ったんだから貰っていいでしょ。俺の物は俺の物」

「何となくお前が分かってきた気がするわ」


 最近はコレクターらしいことはできていなかったので、こうしてアイテムを集めさせていただく。

 このコア、ちょっと輝きが鈍いな。安物か? それとも魔術師のゴーレムコア作成技術が低いだけか?


「機械を扱うなら機械がなくてもしっかり戦えるようにしないとね。あと、コアの純度が足りなかったかな」

「う、うるさい! お前は何者なんだ!」

「被験者の顔くらいは覚えてくれててもいいじゃん」

「被験者、それにその収集癖……まさか、レクトか!?」


 俺を認識するのが収集癖って、もっといいところあるよ俺。お皿とか洗えるし。


「そうか、レクト、あのホムンクルスがこっちに来たのか……!」


 俺の正体が『トワイライト』計画の被験者であると知った山田は途端に口元を歪ませた。


「は、はははっ。実験は成功だ! やったぞ!」


 確かにこいつは俺を生み出し、大きな事件に巻き込んできた犯人だ。

 ではあるのだが、あの世界が楽しかったのは確かなので生み出してくれた感謝は伝えなければならない。

 俺は山田相手に左手で握手を求めた。


「ん、なんだね」

「感謝を伝えたくて」

「そうだろうそうだろう」


 勘違いし満足げな山田の左手を引く。そして、俺は右の拳を握った。

 前に倒れこむ山田、その顔面目掛けて、力いっぱいの感謝をぶつける。

 これは、消えてしまったホムンクルスの魂と、俺と、たくさんの人に迷惑を掛けた分だ。


「ありがとう! 死ねぇ!!!」

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