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158 コレクター、村娘と天使に会う

 部屋から出ていたみんなと合流し、改めて最後に残った研究者を捕まえに出発する。

 ゲートを潜り抜け世界を移動する。この研究所は『トワイライト』の運営会社の地下にあるのだそうだ。つまり地上に上がればビルの立ち並ぶ懐かしの風景が広がっていることになる。もしまたここに来れるのならもう一度見てみたいものだ。

 研究者のいるエリアまで移動しようとライトの魔術でシャッターを通り抜ける。俺も短くテレポートする魔法でシャッターを通り抜けることはできるのだが、もうここはライトに全て任せた。


「レクト!」

「あれ、エリィ?」


 シャッターを潜り抜けた先でこちらに声をかけてきたのは金髪に紫色の瞳が特徴的な女性。

 エリィだ、オッドアイではなくなっているということは分離が完了したのだろう。

 その後ろから続々と天使たちが出てくる。


「大丈夫だったの!?」

「うん、一回死んだけど何とかなった」

「死んだの!?」


 やはーと頭を掻きながら笑う。

 まさか死ぬなんてね。というかあれは死んだというべきなのだろうか。消されたが正しいよね。


「詳しい話は後でするよ。もう全部終わるところだから」

「気になることだらけだけど……そっか、全部終わったのね」

「うん」


 ギリギリまで不安が残っていたのかエリィは大きく息を吐いて胸を撫でおろす。

 安心してくれたのならよかった。エリィはセラフィーの身体を取り戻すためにここまでついてきてもらっただけだからね。これ以上巻き込むわけにはいかない。

 なんて思っているとアルカナさんが腕を組みながら小さく頷いていた。何だろうか。


「なるほど彼女がいたのか、レクトくん」

「かっ、彼女じゃないです!」

「何に納得してんですか、違いますよ」


 冗談のつもりなのだろうが告白されて振った後にそれを言われるのはかなり心に来る。

 ちゃんと告白を断った側も傷を負っているので是非やめてあげてください。

 ため息をついているとエリィの後ろから銀髪に金色の目が特徴的な女性が出てくる。

 背中には天使の羽。頭には天使の輪がついている。


「この身体では初めましてですね、レクトさん」

「ええっと……セラフィーか。初めまして」


 微笑み方や雰囲気でセラフィーだと分かる。これでも何度も一緒にセラフィーと出掛けたことがあるのだ。間違えたりなんかしない。


「よかったな、身体が元に戻って」

「ええ、とても嬉しいです。でもエリィさんの身体も気に入っていたので少し寂しいですね……」


 せっかく本来の身体を取り戻したというのに、セラフィーは名残惜しそうにエリィの身体を見つめた。

 この優しそうな雰囲気から出てくるちょっと怖い発言、完全にセラフィーである。

 しかしこうして聞いてみると他の天使たちの方が怖いかもしれない。セラフィーはまとも枠だったのか。


「ちょっと、やめてよねまた身体乗っ取ったりとか」

「しませんよー、やろうと思えばできるかもですけど」

「こ、こわっ」


 できるんだ……


「ここまで来てなんだけどさ、俺とライトだけでその研究者を拘束したいんだ。大人数で行っても、あまり意味はないからさ」

「それ、大丈夫なの?」

「大丈夫だ。奴に戦闘能力はない。フラグとかじゃなくマジで」


 ライトさんが言うには体格もヒョロガリらしく普通に暴力でどうにかなるらしい。

 研究が進んで何かしらの秘密兵器がある可能性はあるが、ライトと俺がいて負けることは無いだろう。

 もし人をゾンビ化させるウイルスとかを使って来たら負けるかもしれない。全員殺すしかないそれは。


「ちなみになんだけど、その研究者の名前は?」

「聞いてもあまり意味はないと思うが」

「それでも、聞いておきたいと思ってさ。俺を巻き込んだ元凶なんだから」

「そいつの名前は……山田だ」


 やばい、すぐ忘れるかもしれない。


「レクトくん、向こうは君のゲームデータを握っている。使っているゴーグルで再びゲームをプレイできるかどうかの確認もお願いしたい」

「了解、じゃあゲームデータも取り戻してくるね」

「頼むぞ俺」

「うむ任された俺」

「自分相手によくそんな会話できるわねあんた……」


 ゲーム世界に生きてきた人間だからね、ゲームの恨みは果たさねばならぬ。


「わたしたちは逃げた研究員と魔術師を捕まえますー! 力さえ使えればこっちのものですよー!」

「では私は動力室に行きこのシャッターをどうにかしようか」


 天使たちとアルカナさんは後処理をやってくれるようだ。

 それはみんなに任せて、俺とライトは早く研究者を倒そう。名前何だっけ。山なんとかだ。略して山だだな。


「ほいっ、ほいっと」


 先ほどと同じようにシャッターを魔術で通り抜けていくライト。

 詠唱なしで次々視界が切り替わっていく。全ての魔術師がこうではないのは知っているが、こうも自由に魔力を扱っているのを見ると羨ましく感じた。


「魔術ってすごいね、羨ましい」

「お前も何百年か戦ったらこうなれるぜ」

「それはちょっとさっきした覚悟とはまた別の覚悟が必要だね……」


 まだ分かっていないが、今の俺が神の力で不老になっているのならそういう未来もあるのかもしれない。

 異世界の守護者として生きていくのなら、そういった覚悟も必要になってくるのか。今のうちに迷いを断ち切っておこう。

 なんて会話をしていると、目的地に到着したようだ。


「よし、転移するぞ」

「ばっちこい」


 ウイニングランの始まりだ。

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