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143 コレクター、カフェで作戦会議をする

 いよいよ運営会社に赴く当日。

 連日ゲームができずにうずうずしながらも、アルカナさんと待ち合わせをしたカフェに向かう。

 カフェの窓から店内を覗き込むと、紫がかった髪の毛に片目が隠れた髪型が特徴的な女性が座っていた。

 オフ会で会ったときと同じ格好をしている。すぐに分かるようにしているのか、それとも偶然か。


「久しぶり」

「やあ、レクトくん。会いたかった」


 平気で恥ずかしいセリフを吐いてくるアルカナさん。リアルでもゲーム内での名前で呼び合っているのであまり違和感はない。


「……で、いいの? カフェにいて」

「大丈夫だ、会社には知り合いの魔術師を迎えに行くと伝えている」

「へぇー……えっ!? 魔術師!?」


 それはなんというかまぁ、荷が重いのではないだろうか。

 つい最近まで魔術なんて本当にあると思っていなかったのだ、そんな状態で魔術師だという嘘を突き通せるのか。不安で仕方ない。


「そうだが? 研究施設に潜入するには科学者か魔術師でなくてはならないからな。ちなみに私は研究者側だ」

「研究者として潜入するのは無理なの……?」

「外から急に研究者が来るわけないだろう。魔術師ならば野良の魔術師も少なくはない。それをスカウトしたという理由ならば納得させることも可能だろう」

「ごもっともで……」


 魔術関係の研究者とか、そもそも数が少なそうだ。


「それで、潜入したらどうするの? まず目標は異世界に行った俺を助けることと、アカウントの奪取でしょ?」


 やるべきことは異世界のレクト、つまりもう一人の俺を助けることと安全にプレイするためのアカウントの奪取だ。

 そのためにどうすればいいのかを話し合う必要がある。


「ああ、それともう一つ追加だ。世界を救わねばならない」

「へー、やば。何言ってんの」

「おい思考放棄をするんじゃない。実は一部の魔術師が異世界を破壊するために動いていてな、それも阻止せねば向こうのレクトくんが危ないんだ」


 ちょっと何言ってるか分からないけど、冷静になって言葉を並べると何となく理解できるようになってくる。

 ええと、異世界を破壊しようとしている魔術師がいて、それをされるとあっちの俺が死ぬかもしれないから間接的に世界を救う必要があると。

 どういうことだってばよ。というかなんで異世界壊そうとしてるの。


「ふぅん、なんでまた?」

「未来から異世界人がどうたら話していたが、実際はどうだか。とにかくろくでもないことを考えているのは確実だ」

「……で、それを止めると。どうやって止めるのさ。無理でしょ、一般人よ俺」

「私も基本は一般人だぞ。研究者であって魔術師じゃないんだから」

「詰んだじゃん、お疲れ」


 正直に言って無理ゲーである。

 できることと言ったら機械類とかデータいじったりとか、それくらいじゃないか。

 魔術師に見つかったら一発でアウト。くそゲーすぎる。


「ちょっとマテ茶だレクトくん。無論、まだ勝ち筋は残っている。研究所には監禁されている大魔術師がいてね、その大魔術師に協力してもらえば解決するんだ」

「そんなまさか」

「その大魔術師は例の異世界を救い神に認められ時空魔術を扱うことができる超人だ。しかも不老不死だ」

「解決じゃん、むしろなんで捕まったのその人」


 時空魔術、どんなものかは分からないが神に認められてるならとんでもない魔術なのだろう。

 時間と空間、それを操れるのならほぼ勝ちである。


「騙されたんだ。魔術師は魔力を扱うことができるというわけで、魔力を保有しているわけではない。魔力の枯渇した空間や魔力が内蔵された結晶がなかったらただの人間と変わらないんだよ」

「なるほど、ってことは魔力さえあれば勝てるってことか」

「そういうことだ」


 その大魔術師が魔力さえ使えれば、他の魔術師は手も足も出ないというわけだ。


「つまり俺たちがやることはその大魔術師の救出と交渉、でいいんだよね?」

「ああ、やるべきことはそれとレクトくんを異世界に飛ばした科学魔術派閥の者との話し合いと、向こうのレクトくんと話すこと。色々と、話したいこともあるからな」

「……そうだね、俺も話してみたいかな」


 異世界に行った自分との会話。

 想像もできない。だが、何となく向こうの自分は想像できる。

 楽しんでいるのだろうな。そして同様に悲しんでもいる。

 色々と話があるとは、別れなどだろう。心残りなく異世界で生きていけるように、またはこちらの世界に帰るのなら別物として生きていけるように。


「よし、作戦は終わりだ。ここのお店はパンケーキが美味しいからな、共に食べよう」


 そう言うとアルカナさんは店員さんを呼び、スラスラとパンケーキを二つ注文した。

 少し早口になっているところを見るに、このパンケーキを楽しみにしていたのではと思ってしまう。

 ただ緊張しているだけの可能性もあるが、さてどうだろうか。


「もしかしてこれが目的でここ集合にした?」

「そんなわけないだろう」

「……」

「違うぞ!」

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