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134 決戦ミカゲ その5

 ミカゲとレクトの戦闘は、お互いに一歩も引かないものだった。

 ルインの繰り出す技を避けながら高速で飛行し、接近戦を行う。

 様々な強化が入っているとはいえ、レクトの刀は飛びながらでは威力が落ちる。ミカゲの作る氷の盾で弾かれ、再び接近し、弾かれる。これを何度も繰り返している。


「やああっ!」


 バコンと氷を割ることに成功するも、刃はミカゲには届かない。

 攻めているのはレクトばかりで、ミカゲは守りに徹しているため、優勢なのはレクトと言えるだろう。

 現に今、ミカゲは守ることに精いっぱいでものの見事に誘導されてしまっているのだ。


「……このままじゃジリ貧だ」


 今の今まで、旋回するように飛び回っていたミカゲが、そう呟きながら一直線に飛んでいく。

 方向は、エリィたちのいる場所だ。ルインは反対側に陣取って逃がさないようにしていたが、まさかミカゲからエリィたちのいる場所まで飛ぶとは思わなかった。


「っ!? 追うよルイン!」

「りょーかい」


 突然のことに一瞬判断が遅れるも、レクトもルインも急いでミカゲを追いかける。レクトは『職業の書』で【弓使い(アーチャー)】を選択し、弓を装備して攻撃を始めた。


「〔スネークアロー〕」


 黄緑色に光るいくつもの矢が、ホーミングするようにミカゲを追いかけていく。

 蛇のような軌道を残しながらミカゲを追尾する矢だったが、それも後方に放たれた氷で防がれた。

 同じように〔スネークアロー〕を連発し、途中でホーミング機能はないが速度のある〔クイックアロー〕を放つ。

 魔法を使うよりも早く高速かつ的確に空中攻撃をすることができるのが、【弓使い(アーチャー)】のいいところなのだ。


「逃がさない!」


 矢は当然氷に防がれてしまったが、レクトは速度を速め距離を詰めていく。

 矢で邪魔をしながら近づき、再び『職業の書』で【剣士(ソードマン)】を選択し、刀を装備する。

 ミカゲが飛ばす氷の数が増えるも、レクトはそれを高速で避けながら近づいた。


「くっ、まだ来ないでほしいんだけどなぁ!!!」


 低空飛行に切り替えたミカゲが氷の壁を作り出し、レクトを大幅に足止めする。

 ミカゲの叫びを聞いたレクトは一刻も早く倒すべきだと判断した。やはり何かを隠しているのだ。

 しかし剣士の状態では〈空間移動(テレポート)〉は使えない。壊すにしても技を使う必要がある。それならば多少遅くなっても遠回りをすればいい。

 縮めた距離が再び遠くなっていく。レクトとルインは全力で追いかけるが、このペースではミカゲが先に到着してしまう。


「ミカゲが戻ってきました! 迎え撃ちましょう! ええ、そうね!」

「あっ、それオレに言ってるんじゃねぇのか。ややこしいなお前!」


 一方待機していたエリィは、セラフィーと共に天使の羽を動かしミカゲとの戦闘に備える。

 その場にいた全員が戦闘を前に武器を構えた。想像していた通りに、ミカゲは大量の氷を放ちながら向かってくる。

 エリィは空中で盾を作り防ぐが、範囲が広いせいでほとんど通過してしまう。

 が、覚醒魔方陣により強化された魔法が次々相殺させていく。

 エルフやフェアリーで構成されたシャムロット部隊だ。第三魔法が主な攻撃だが、魔方陣により大幅に強化されている。


「セラフィー、投げでいい? 了解!」


 エリィは『ワルキューレウェポン』を槍状にし、肩に担ぐように構えた。

 セラフィーの魔力が入っていき、みるみるうちに大きくなっていく。光の槍に注入されていく魔力が迸り、バチバチと雷のように弾けた。

 やがて、手元から光が伸び翼に変わる。槍から生えた両翼は、今にも飛び立ちそうなほどにバサバサと動く。


「いっけええええええええ!!!」


 ピシュンと、槍を投げたとは思えない音が鳴り、辺りを衝撃波が襲う。

 光の槍は、文字通り光速でミカゲを襲った。

 ミカゲは前方から飛んでくる槍を前に、複数の氷の盾を作り逸らそうとする。そうすることで、速度を緩めることなく槍を防ぐことができるからだ。

 が、光の槍は氷に当たるも後方へ逸れようとしない。原因は、横から生えた両翼であった。

 両翼が、進むべき方向へ正しているのだ。


 一枚目の盾を破壊した槍は勢いを緩めることなく二つ目の盾を破壊する。

 このままでは左右に避けることができない。ならばどちらに逃げるか。上か下か。

 ミカゲが選んだ道は、上だった。


「これ以上、近づかれては困る……!」


 弾かれるように上空に逃げながらも、ミカゲは後方から迫ってくるレクトへ向けてこれまでよりもさらに大きな氷塊を三つ放つ。

 これで多少の足止めはできるはずだ。そう思いレクトを見る。遠方には、ニヤリと笑うレクトがいた。


「〔縮地〕」


 〔縮地〕は瞬間移動の如き速さで距離を詰める技だ。

 一瞬で攻撃を仕掛けることができるが、欠点が一つある。空中では使えないことだ。

 当然、早く動くだけなので〈空間移動(テレポート)〉や〈瞬間転移(ワームホール)〉のような壁抜けはできない。

 だが、レクトは空中で使った。そう。レクトが踏み台にしたのは、ミカゲの放った氷塊だ。


「〔縮地〕!」


 飛んできた二つ目の氷塊を足場にし、さらに距離を詰める。


「〔縮地〕!!!」


 三つ目。空に向けて、階段を数段飛ばしで登るようにタンッ、タンッと。

 そして――――


「落ちろおおおお!!!」


 レクトが刀を振り下ろす。

 ミカゲは咄嗟に氷を作り出し受け止めるが、刀の威力に負け落下した。


「が、ああああああ!!!」


 想定外の攻撃が続き、ミカゲは対処ができなかった。

 落下していく身体を風魔法で持ち上げようとするが、減速させるのが精一杯な状態だ。

 そのまま地面に衝突し、砂煙を上げる。

 落下した場所は、魔方陣が多く設置されているレクトの作った戦闘領域。

 エリィやカリウスが攻撃を仕掛けようとしたその時、辺りを冷気が包んだ。


 そして、ミカゲはゆっくりと立ち上がりながら一言。


「世界を凍らせよ、氷河期の竜(アイスエイジドラゴン)


 ――――瞬間、島全体が凍り付いた。

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