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122 魔術師、村に来る

 ミカゲの捜索は難航し、結局手掛かりの一つも手に入らなかった。

 それでもモンスターはどんどん強くなっていく。最近は、この世界には生息が確認されていなかった『トワイライト』のモンスターも現れたのだ。

 これは完全にミカゲ案件だ。そう思うがミカゲを見つけることができなければ何もできない。

 それはそれとしてマイナスなことばかりではなかったりする。モンスターが強くなるにつれてこの世界の人たちも強くなっているのだ。

 だがそれも限界が来る。いくら戦う人が強くなろうと一般人は強くならないのだ。結局死者は増えてしまう。


「〈雷撃(サンダー)〉」


 一応俺たちが対処すればどうにかなるレベルではある。

 ひっきりなしにモンスターが攻めてくるわけではないのだ。流石にそこまでくると対処ができない。

 全員がシェルター生活するしか生き残るすべはないだろう。それどこの汚染された世界?


「今日は数が多いな」


 カリウスの言葉に頷く。

 今俺たちはトワ村の周辺でモンスター狩りをしている。

 どいつもこいつも高レベルのモンスターで驚きが隠せない。


「だね。これからどうしよ」


 一度、空を飛んで天界を目指してみたことがあった。

 結果は失敗。透明な天井のようなものがあり、そこから先には行けなかった。

 あの先へは国宝を使わなければ行けないのだろう。できることが少なすぎる。


「お、おい……あの炎はなんだ?」

「ドレイクでしょ?」


 村から少し離れた場所でモンスターを倒していたので、遠目から村が見える。

 村から火柱が上がっているように見えたが、よく見ると物凄い勢いで炎が放出されているのが分かる。

 おそらくドレイクがブレスでも放っているのだろう。空中に空を飛ぶモンスターでも現れたか。

 いや、それにしては時間がかかっている。数が多いのか。


「加勢しよう。〈空間移動(テレポート)〉」

「うおっと」


 〈空間移動(テレポート)〉を発動させトワ村に転移する。

 空には悪魔のようなモンスターが大量に飛んでいた。ガーゴイルだ。


「おおレクト! こやつら数が多くて困っておったのじゃ!」

「炎じゃ相性も悪いもんね」


 悪魔モンスターの一部にはドラゴンのように炎のブレスを吐く者もいる。

 なので炎の耐性が少しあるのだ。とはいえドレイクの炎なので当たればかなりのダメージは負うはず。


「〈雷光(ライトニング)〉!」


 〈雷光(ライトニング)〉でガーゴイルを打ち落としていく。

 本当に数が多い。地上からもモンスターが迫っていて、このままでは建物に被害が……


「はああっ!」


 次の瞬間、風が空を薙いだ。

 それと同時に、ガーゴイルが翼を切り落とされて落下していく。

 今のは、魔法? でも、あんな魔法は見たことがない。

 そう思いながら顔を上げると、屋根の上に人影が見えた。


「やあ、レクト」

「ミカゲ……!」


 そこにいたのは、俺たちがひたすら探していたミカゲだった。

 その場にいる全員に緊張が走る。今この場にいるのは俺、カリウス、エリィ、ドレイクだ。

 全員で一気に攻めれば倒せるか? だが何のつもりだ、わざわざ目の前に出てきて。


「そう怖い顔をしないでくれ、私は今危害を加えるつもりはないよ」

「じゃあ、このモンスターは何なのさ」

「何か勘違いしているようだね。私の仕業ではないよ、断言できる」

「なら、誰が……!」

「私が知りたいよ。まあ、研究者の誰かだろうけどね。一体何のつもりなんだか」


 ミカゲが犯人ではない……?

 確かに今ミカゲは俺たちを助けてくれた。だがそう簡単に信用はできない。

 その研究者が何者かは分からないが、とにかく国宝があれば研究所まで行くことができるはずだ。


「それで、何の用?」

「そうそう。私はこの騒ぎを止めたいんだ」

「え、なんで? 世界を滅ぼすのが目的じゃないの?」

「もちろんそれも目的だけど、これは私がやったことではないんだ。それに、私もこのままでは死んでしまう」


 外の人間がこの騒ぎを起こしたので、自分も巻き込まれる前に交渉をしに来たというわけか。


「そんなこと言われても、国宝は渡せないよ」

「分かってる。だから、こうしよう。とある島で戦うんだ。国宝を掛けてね」

「俺たちのメリットは?」


 明らかにメリットがない。

 こっちはすでに三つの国宝を持っているのだ。対してミカゲは一つ。これでは掛け金に差がありすぎる。


「確かにそっちから三個出すのは不公平だと思うけど、どちらかが国宝を手に入れないと何も始まらないだろう?」

「まあ、それは確かに……」


 ミカゲの言う通り、お互いに国宝を隠していては何も始まらない。

 それどころか、モンスターが強くなっていき世界が滅んでしまうかもしれないのだ。

 多少の不利益は目を瞑るべきだろう。


「もちろんハンデは上げる。参加人数は何人でもいいよ。こっちは私とジャスターとリスティナ、それと召喚するモンスターで戦うから」


 ハンデと言えるかは分からないが、敵が分かっているのは助かる。

 ミカゲ、ジャスター、リスティナの相手は大変だが、モンスターの相手などは各国から精鋭を集めれば対処できるはずだ。


「勝利条件は?」

「そうだね、こうしよう。お互いに国宝を外に出して戦って、先に全て揃えたほうが勝ち。首にでもぶら下げておけば分かりやすいかな」

「分かった。場所は?」

「地図の右上にある名もない島だよ。一週間後、その島で待ってる。島に掛けた魔術は解除しておくから安心してほしい」


 だから誰も見つけることができなかったのか。

 俺が直接その島を探しに行けば見つかったのだろうか。少し悔しい。

 しかし一週間か。短いようで、長い。モンスターの強さからしてこの世界に残された時間は残り少ないのだ。できることなら今日にでも始めたいほどに。


「おいレクト! そんな話受けていいのかよ!?」

「仕方ないよ、受けるしかない。他に選択肢がないんだ」

「けどよぉ……」


 カリウスは不安が残っているようで、ひたすら悩んでいた。

 俺だって、他に方法はないのか考えた。だが、これしかないのだ。

 どちらにしろミカゲを見つけたらすぐに倒して国宝を入手するという考え方をしていたので、やることは変わらない。

 むしろちゃんとした戦いになるのだからこっちのほうがいいまである。


「さようなら、レクト。楽しみにしてるよ。転移」


 そう言いながらミカゲは青い光に包まれながら転移した。

 シン……、と辺りが静まり返る。こうしてはいられない、すぐにでも各国の代表に知らせなければ。

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