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108 騎士、過去の話をする

「まずな、オレが修業をしようとしたのは逃げたからなんだ」

「逃げた?」

「ああ。それを言わなきゃいけねぇ」


 暗い顔をするカリウスの言葉にどう反応していいか分からない。

 逃げた、それは誰かに狙われていたからかそれとも……


「ここからはオレのトラウマの話だ。言いたくなかったが、言わないと気が済まない」

「トラウマ……」


 なるほど、狙われていたわけではなくロンテギアにいられなくなったのだ。

 そんな嫌な思い出を話してくれると、信頼されているようで何だか嬉しく感じてしまう。内容はそれとは程遠いものだろうけど。


「オレは騎士長に剣を習う騎士見習いだった。卒業前、試験として騎士長の知り合いの貴族を複数人で護衛する任務を受けたんだ。ただ馬車に一緒に乗って移動する、それだけの簡単な任務だ」


 よくある護衛任務だろう。SPみたいなものだ。


「移動中、突然魔法が馬車を襲った。奇襲を受けたんだ。貴族は襲われて死亡した」


 任務の失敗か。その貴族が騎士長の知り合いならばさらに罪悪感に苛まれてしまうだろう。


「……それが、トラウマ?」

「それだけじゃない。いや、それだけでも十分トラウマなんだがな。そこにいた騎士もな、死んだ。全員だ。オレ以外の全員が死んだ」


 息をのむ。

 任務に失敗し、全員が死ぬ。そんな状況、俺だったら耐えられない。


「カリウスは、その時どうしたの?」

「気絶してたんだ。最初の奇襲でな。目覚めたら周りには仲間と、貴族の死体が転がっていた」


 思い出しているらしく、震える声を絞り出すカリウス。


「生き残っちまった。守るはずの貴族が死に、オレは生きている。何もできなかった。自分の強さには自信があったのに、何もできずに全てを失った」


 何もできなかった、それはトラウマとなり心の奥底に住み着いて離れなくなる。

 俺もそうだ。あの時ああしていれば、そういった後悔を何度も何度もしたことがある。


「それで帰ったら、その貴族の娘さんがお父様はどうしたのですか? なんて聞いてくる。親族に伝えると目の前で涙を流す。オレはそれを見て、もうダメになってしまったんだ」


 守れなかった相手の子供、親族。

 もし俺がその立場だった場合、本当に立ち直ることができないかもしれない。

 この世界と元の世界で死に対する感情は変わってくるだろうが、それでも相当なトラウマになるだろう。


「まあ、それでひたすらいろんなところで修業して、自分の弱さを思い知って戻ってきたんだけどな」

「そっか……カリウスが強さを求める理由がわかったよ」

「そういうこと。だからオレは強くなってこの村を、お前らを守りたい。もう後悔をしたくないんだよオレは」


 強くなって守りたい、それがカリウスが戦う理由だ。

 それなら、俺もその気持ちに応える必要がある。これからの修行はさらに力を入れていきたい。

 オレは約束を、エリィとカリウスは村を守ろうとしている。もちろん俺も村を守りたいという気持ちはあるが、これは約束やアイテムを中心とした考えだ。

 ドレイク? あー、気まぐれじゃないかな。ここにいるのが楽しいから一緒に行動してるだけだし。


「そういえば、ルインはどうしたの? なんかやけに静かだけど」

「あ、あたしはよそ者だからね。そっかぁ、みんないろんな考えがあるんだね」

「みたいだね。でもまあ、やろうとすることは変わらないよ。今の目標はオルタガに行くことだね」


 俺の話をしても、セラフィーの話を聞いても、カリウスの話を聞いても何をするかは変わらない。国宝を集めて、ミカゲを探すだけだ。

 方針こそ変わらないが気持ちの面では変わってくる。まあ今は時が来るのを待つだけなんだけど。


「そうだ、今度王都で魔王について調べようと思うんだけどみんな来る?」

「魔王についてじゃと? わしはそこまで興味ないしなぁ、村に残るのじゃ」


 いやドレイクは火山に戻ろうよ。

 でもドレイクが村にいてくれるのならティルシアの相手を任せることができるし、そのままでいいか。


「そっか、カリウスとエリィは?」

「オレはついていくぜ」

「私は久しぶりに錬金術でもしようかなーって思ってるわ」

「了解。じゃあ俺とカリウスだけかー」


 エリィもいるのなら話は別だ。ドレイク、たまには火山に帰ろうね。

 火竜族の里……カフだっけ? の人たちもドレイクがいなくなって焦っているのかもしれない。

 たまには向こうに行ってみてもいいかもしれない。魔法で一瞬だからね。


「さすがにそろそろ王様にも俺の話をしないとだし、王様と話し合いもしたいね」

「直接オルタガに交渉するのもいいかもしれないな。せめて魔王だけでもこっちに来て話をしてくれたら嬉しいんだけど、そもそも交流がないからなぁ」


 そう、別に俺たちがオルタガに行く必要などないのだ。

 魔王と話し合いをして国宝を受け取ればそれで解決する。


「ねえ、あたしも王都に行っていいかな?」

「ルインが? そうだね、魔王のことも知ってそうだしぜひ来てよ」


 いつの間にか復活したルインがそんなことを言い始めた。

 元々旅をしている悪魔なので王都にも行っておきたいのだろう。

 近くに魔王を知っている悪魔がいるのだ、図書館で調べながら話を聞くのもいいだろう。

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