107 天使、天界について話す
俺がすべての説明を終え、一息つくと次はセラフィーが一歩前に出た。
「では、次はわたしですね。わたしの知っている天界について全てお話します」
セラフィーが天界についての話をしてくれるらしい。
天界についてはずっと気になっていたのだ。現実世界との繋がりもあるだろうし調べておいたほうがいい。
「とはいえ、わたしたち天使はあまり詳しい事情を知らないのであまり期待はしないでくださいね」
「それはどうして?」
「天界は、ほんの少し前までは皆様の想像している通りの場所だったのです。天使が暮らす都市スカイゲート。そこが別の世界からやってきた神に占拠されてしまったのです」
おそらくそれがミカゲたち日本人だろう。
「気付けばやってきた神の建物が建造され、わたしたち天使はそこに住むことになりました。確か、神たちはそこを研究所と呼んでいました」
「研究所? 魔術師なのに」
てっきり魔術師なのだから工房とかだと思っていたのに。
それだとまるで科学者じゃないか。いや、科学と深く関わっているのなら研究所と呼ばれるのも普通か?
「住むことになった部屋には、神の国の道具が置かれていました。それがテレビなどの電気機器です」
「とりあえず、その神の国ってのは俺の元居た世界だろうね」
そして状況からして日本だろう。そういえばミカゲ……レイザーの時に故郷は飯が美味いとか言ってた気がする。そりゃそうだ。
「え、レクトくんは神様なの……?」
「向こうが勝手に名乗ってるだけだよ」
さっきからルインの様子がおかしいな。まあ神様かもしれない人が目の前にいたら焦るのも仕方ないか。
「やっぱり、俺のいた世界の奴らがこの世界に何かしようとしてるみたいだね。ええっと、それで元居た神様はどうしたの?」
俺はセラフィーに一つ気になることを質問する。
元々いた神様はどうなったのだろうか。そもそもいないのか? いや、そんなはずはない。だとしたらノアトレインはどうなるのか。
「コア様ですか。スカイゲートを占拠されてから会っていません。どうなっているのかもわかりません」
「会っていない? 会わせてもらえなかったの?」
「ええ。わたしたち天使が反乱を起こした理由の一つです」
となると、その魔術師たちはコア様っていう神様を利用して何かをしようとしているのか。
神様を利用して何かをする、その計画の一つがミカゲの世界の破壊? いやいや、それならなんでミカゲをこの世界に来させる必要があるんだ。
「神の国と繋がってるって言ってたよね。なら、その神の国行ったことあるの?」
「行ってないですね。本当に、天使の行動範囲は限られていましたから」
覚悟はしていたけど、やはり情報が少ない。
現在分かっていることは、魔術師たちがこの世界を破壊しようとしているということ。
そしてそれを防ぐためにはスカイゲートに行かなければならない。やることは変わらないのだ。
しかも対策もできない。相手の強さも、天使たちは知らないのだ。
「その魔術師たちが世界の破壊を目指してた、ってことでいい?」
「? いえ、世界を破壊しようとしていたのはミカゲと数名だけですよ。神……魔術師たちには派閥があるとのことなので」
「派閥? じゃあそれ以外の魔術師たちは何を目的としているの?」
「分かりません。たまたま彼らの会話を聞いてしまったのがわたしたち天使ですから」
またしてもモヤモヤする。派閥か、それなら神様を利用して何かをするのは別の目的がありそうだ。
「結局、カギを集めてスカイゲートに行くしかないみたいだね」
「スカイゲートに行ったとして、どうすんだ?」
「その世界を破壊しようとしている魔術師を倒す。後は、神を利用している魔術師も倒す」
「全員ぶっ殺せばいいんじゃな!!」
「なるべく殺さないでね」
スカイゲートで法律が適用されたら地獄すぎる。無駄に現実と繋がってるっぽいし、日本人を殺すってのもちょっと嫌だ。気持ち的にはそこまでじゃないが面倒なことになってしまう。
そして現実に繋がっているのなら俺は帰ることができるんじゃないだろうか。約束が守れそうで嬉しい。そこまで分かったのならさっさと魔王に会って国宝を貰いたい。
「あ、そうだ。全部解決したら俺、元の世界に戻ろうと思ってるんだけどそのあとの領主どうする?」
「……は?」
「なんじゃとぉ!?」
そういえば伝えてなかったっけ?
そうだよねぇ、流石に突然領主がいなくなったら困るしさっさと決めておくべきだった。
「個人的にはエリィがいいと思うんだよね。錬金術師なら立場的にも貴族に引けを取らないし、それなりに好待遇になりそうだし……どしたの?」
エリィを推薦していると、みんなが固まっていることに気づく。
怒らせてしまったか。
「レクト、帰っちゃうの?」
「うん、元の世界に帰れるからね」
「それは……そうかもだけど……でも!」
セラフィーと交代したエリィに怒られてしまった。
エリィはあんまり乗り気じゃないのか。そうなると誰が領主になるべきだろうか。今のうちに貴族友達を探して任せたほうがいいかな。
「レクト、それは絶対なのか? こっちで生きる気はないのか?」
「……向こうに用事があるんだ。約束もある。ただ、それも全部終わらせて、こっちに来れるならこっちに住みたいよ」
約束を守り、『トワイライト』をクリアしたらこっちに戻ってのんびり過ごしたいな。
まあ、、戻ってこれたらの話だけど。
「戻ってこれるのか?」
「……はい、今のところスカイゲートと神の国は繋がっているようですので行き来はできるはずです」
「そうか。じゃあレクト、絶対帰って来いよ」
「ん、分かったよ。何をそんなに必死になってるんだか」
ってか、俺が現実に帰ったらどうなるんだろうか。
この体のまま日本に行くの? え、ちょっとそれはきついって。浮かない服装もあるしその辺は平気だけど人間関係が面倒くさいことになる。親になんて説明すればいいの?
「よし、じゃあ次はオレの話だな。俺の修業時代の話だ」
よっ、待ってました!
暗い空気からカリウスの話にシフトする。
昔の武勇伝が聞けるんだ、と思いわくわくするが、カリウスの顔には影がかかっていた。
……これは、少し重い話になりそうだ。




