105 悪魔、噂を撒く
「レクト様、遊んで!」
病気でずっと寝ていたティルシアは物凄く元気になり、寝たきりのティルシアが想像できないほどだ。
今もこうして積極的に抱き着いてきている。甥っ子ができたらこんな感じなんだろうか。
いや、この年の差だと妹か? うーん、一人っ子だから分からない。
「うん、いいよー。ねえティルシア、ルインはどうしたの」
「ルインお姉さん? カリウスお兄さんのところに行くって言ってたから……森だと思う!」
「へぇ、用でもあるのかな」
ルインからカリウスに用事があるとは。
うむむ、想像できない。もしかして野球がやりたいとか? それならありえる。
というか、カリウスお兄さんだと?
「ティ、ティルシア。一回俺のことお兄ちゃんって呼んでみてよ」
「レクトお兄ちゃん?」
「もう一回」
「レクトお兄ちゃん!」
「くっ……これが妹属性か……!」
今の俺めちゃくちゃ不審者じゃない? ここが現代だったら通報されてたよ。
そしてレクトおじさんとは呼ばれたくない。やっぱり甥っ子じゃなくて妹だ。ティルシアは妹だ。
その後かくれんぼやテーブルゲームで遊び、ティルシアをシャムロットに帰した。なんだかほぼ毎日送り迎えしているような気がする。
〈空間移動〉で戻り、魔力を使った疲れを感じ背伸びをする。ロンテギアからの報告はまだかなぁ。
「なあ、レクト。ちょっと話いいか」
「え? いいけど、急にどうしたの?」
屋敷に戻ろうとしたとき、修行帰りのカリウスが話しかけてきた。
ドレイクは一緒じゃないのか。
しかし話とは、改まって何をするのだろう。修行についての相談だろうか。
「お前さ、隠し事とかあるか?」
「隠し事? そりゃ、あるでしょ。人間だし」
「だ、だよな」
いつになく挙動不審なカリウス、なんだか心配になる。
隠し事なんて誰しもあるだろう。それを急に言ってくるってことは、何か気になることがあるということ。
俺は今のところ悪いことはしてない……はっ! もしかしてティルシアにお兄ちゃんって呼んでもらったところを見られた?
「……なんで急にそんなことを?」
「いや、ルインがよ、レクトは皆に言えないことがあるって言ってたんだ」
「ルインが……?」
あいつか!
もうあの人は何がしたいのか分からない。引っ掻き回して楽しんでいるのだろうか。
「その隠し事ってさ、どうしても話せないこと、なのか?」
「ん、いや? そういうわけでもないよ。別に話さなくてもいいかなって思ってただけ」
「そ、そうか! そうだよな!」
「う、うん。なんでそんなに焦ってるのさ……あーでも、今はもう話した方がいいかもしれないね」
敵が完全に日本人であり、リアルが大きく関係しているかもしれないのだ。
ここで俺の正体……と言っても、ただの一般人なんだけども、それを話してもいいかもしれない。
今まで話してこなかったのは、本当に話す意味が無かったからだ。ゲームの世界って言っても理解できないだろうしね。
「……じゃあ、オレも隠してたこと話すか」
「あ、もしかして旅してた時代の話?」
「ああ、せっかくだからな」
なんだかんだ、旅をしながら修行をしていた。という話しか聞けていないのだ。
どんなことをしていたのかを詳しく聞けるチャンス。楽しくなってきた。
悪いことをしているわけではないが罪悪感があったのでさっさと話してしまおう。
ドレイクとエリィは今どこにいるのだろうか。みんながいる時に話したいな。
「そうと決まればみんなを集めて……おわっ!?」
「あ、レ、レクト……!」
屋敷の扉を開けると、すぐ目の前にエリィが立っていた。
どうやら同じタイミングで扉を開けようとしていたらしい。
そしてエリィ、なんで気まずそうな顔でこちらを見ているんだ。ちょっとタイミングが悪かっただけでしょ。
「何かあった?」
「あのさレクト、あんた隠し事とかあるの?」
「お前もかよ!」
不安そうな顔でそう言ったエリィに、俺は思わずツッコミを入れてしまった。
* * *
トワ村緊急会議と称して、俺の屋敷にエリィ、カリウス、ドレイク、ルインを集めた。
集めたのはいいんだ。でもね、お前だよお前! ルイン! 何してんの!?
「まずは……ルイン、なんで二人にあんなこと言ったの」
「だって、そうした方が早く話してくれるでしょ?」
「そうだけどさぁ……」
理由は思っていたよりも単純だった。早く聞きたいから二人に俺が隠し事をしていると伝えたらしい。
はた迷惑な話だが、いずれ話すつもりだったので許そう。これが本当に話せない内容だったら大問題なんだけどね。
「ええと、俺の話もそうなんだけどセラフィーにも詳しく話を聞きたいんだよね。大丈夫?」
「大丈夫ですよー」
そう、どうせ暴露大会をするのならセラフィーの知っている話も聞きたかったのだ。
どうやら、天界は現代と何かしらの関係があるらしいのだ。テレビあるらしいし、絶対にそこにヒントがある気がする。
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