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103 コレクター、悪魔に探られる

 優勝……じゃなくて、ドレイクとの勝負に勝った俺はルインをその場にいた全員と自己紹介させた。

 そして、レアアイテムを見せようとみんなが野球や修行をしている間にルインを屋敷に招待することにしたのだった。


「これが『紫電のアメジスト』それでこれが――」


 移動中に自慢したレアアイテムを並べながらぺらぺらと解説していく。

 本来なら手に入れた経緯などを解説しながら紹介するのだが、流石にゲームの設定などを説明しても意味がいないのでアイテムだけの説明だ。

 宝石系からネタアイテムまで、様々なアイテムを出していく。野球以外のスポーツの道具だったり、単純な娯楽のためのトランプやカードゲームだったりたくさんだ。


「ふぅ、こんなところだね。久しぶりに出したから楽しくなってきちゃったよ」


 愛でるのは宝石系の綺麗なアイテムが多いので、ネタアイテムなどはあまり出していなかった。

 こうしてリアルになったアイテムたちを見ると、頑張って集めてきたアイテムなんだなぁと実感が湧く。

 思っていたよりもアイテムに対する思い出が多いのだ。このアイテムはあの人が好きだった、このアイテムは手に入れるのに苦労した。ってね。


「レクトくん、あたしトランプで遊びたいな」

「うん、いいよ。なにやる?」


 どうやらこの世界にもトランプはあるらしい。

 ルインがトランプで遊びたいと言い出したので何をやるか考える。この世界特有のルールとかあったら俺遊べないんだけど。


「じゃあ、ポーカーがいいなぁ」

「お、いいね。何か賭ける?」


 よかった、ポーカーがあって。

 そしてやってしまった、『トワイライト』でポーカーなどのトランプゲームをする時は必ず賭けをしていたのだ。

 今更取り消せない、ちょっとしたアイテムくらいでいいかな。


「じゃあ……ちょっとしたお願いを聞くとか、どう?」

「お願い……まあ少しくらいならいいか。何回勝負にする?」

「三回勝負で多く勝った方が勝ち。かな」

「ん、了解」


 先に二勝すれば勝ちってことか。

 二人ポーカーなんて完全に運だし、特に気にすることなく遊ぼう。

 どうせ負けてもそこまで悪いことはなさそうだし。


「あたしが配るね」


 ルインがトランプをシャッフルする。

 カシャカシャと音を立てながらシャッフルされていくカード。イカサマは……流石にされてないね。

 というか俺の用意したカードなんだからイカサマなんてできないか。


「ん」

「ほお」


 配られたカードを見てほおっと声が出る。

 何がポーカーフェイスだ。それなりに良かったのがバレバレじゃないか。

 ちなみに今はスリーカードの状態。七が三枚揃っている。スロットだったら大当たりだ。


「あたし一枚交換ね」

「俺は二枚交換しようかな」


 フォーカード狙いで二枚交換する。

 ルインは一枚交換とは。フラッシュかストレート狙いだろうか。

 もしどちらかが完成したらスリーカードじゃ普通に負けるな。だが、完成しなければブタになるので役の無い俺の勝ちだ。

 って、おおお!? 引いたのが二枚ともJ!? これ、フルハウスになっちゃた!

 勝ったな。顔に出さないようにする。ルインはニヤニヤしていてどちらか分からない。


「せーの、フルハウス!」

「はい、フォーカード」

「ひょえ!?」


 ルインがテーブルの上に出したのは、A四枚で構成されたフォーカードだった。

 絶対に負けないと思っていたフルハウスが負けた。嘘でしょ、レベルが高すぎる。


「やった、あたしの一勝だね」

「うぐぐ、強いねルイン」

「ふふふっ、運がいいなー」


 負けたとはいえ俺もかなり運がよかった。

 そもそもワンペアすら完成しないことが多いのだ。それがフルハウス対フォーカードとは。

 というか、フォーカードとか久しぶりに見た。ゲーム内でもなかなかお目に掛かれないよ。


「次は……」


 二回戦目、配られた五枚のカードを見る。

 見事にバラバラだ。記号で染めることもできないし、数字を並べることもできない。

 いわゆるブタの状態だ。うーん、とりあえずAが一枚あるからそれだけ残して後は交換しておこうかな。

 四枚捨てると、ルインがニヤリと笑う。そりゃそうだ、いい手札だったら四枚も捨てないんだから。


「あれ、運がないねー」

「ふっ、ここからだよ。最強の引きを見せてやる」


 ここでAを三枚引いてさっきのカウンターをしてやる。

 山札から四枚引いて手札に加える。Aは……一枚。ワンペアだ。

 よし、最強ではないがブタは回避した。対するルインは三枚交換。元々ワンペア揃っていたのだろう。

 ということは、これでルインが一枚も重ならなかった場合俺の勝ちとなる。ふはは、勝ったな。


「せーの、ワンペア!」

「はい、フラッシュ」

「なんでさ!?」


 イミワカンナイ! どうして三枚捨ててフラッシュになるの???

 え、え? 残ってた二枚は同じ数字じゃなかったの? どういうことなの???


「はーいあたしの勝ち。悪いねー」

「うう、マジかよ……それにしてもルイン、運いいなぁ」

「まあ、少しはね」


 でも生活できなくなって旅を始めたのだからそこの運はないよね。

 それも含めて少しと言っているのだろう。そうじゃなかったら煽りだ。死体の前で屈伸するくらい煽りだ。


「ええと、ちょっとした願いだっけ。何が欲しい? そこまで貴重じゃない宝石とかならあげれるけど」

「それも魅力的だけどやめとこうかなぁ」


 反応からして宝石かそれ以外のアイテムだと思ってたんだけどな。


「じゃあ何が欲しいの?」

「欲しいというより、聞きたい。かな」

「聞きたい?」

「うんうん。ねえレクトくん、貴方は何者なの?」


 張り付いたような笑顔から一転、ルインは目を細めながらそう聞いてきた。

 その吸い込まれそうなほど真っ黒な瞳に動揺する。

 冷静になれば、珍しい道具を持っているのだから普通ではないと思われて当たり前だ。

 ただ、それを聞きたかっただけ。それなのに、俺の心臓はドクンドクンと激しく音を鳴らした。


「お、俺は別にただの領主――」

「そんなわけないよね? こんな道具見たことない。それに、さっきの〔キルタイム〕だっけ? そんなのが使える人間も、あたし知らないなぁ」


 俺の言葉を遮るように、ルインは少し低い声で言葉を発する。


「……カリウスも、変わった技を使えるんだ。案外、探してみればいるかもしれない」

「レクトくん、あたし嘘、嫌いだなぁ」


 ああ、ダメだ。この人に嘘は通じない。

 心臓がひゅっと冷えるようだ。逆らってはいけない。

 むしろこちらから聞きたいくらいだ。ルイン、君は何者なんだ。って。


「ごめん。信じてもらえないと思って、話そうとしなかったんだ」

「なぁんだ、そんなことかぁ。それなら仕方ない、うん、仕方ないよ。それで、結局何者なの?」


 再び笑顔に戻ったルイン。俺は安堵しながら心臓を落ち着かせる。

 もう隠し事はできない。全て話してしまおう。


「話すけど、少し長くなると思うよ。そうだな、まずは――――」

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