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二限目 忘れ物

 なんということだ、僕は今重大な事態に陥っているのかもしれない。

 鬼教師と名高い水谷が担当する「英語表現Ⅰ」の道具を一式置いてきてしまったのだ。


 彼は物を忘れただけで嫌味たらしく圧をかけ挙げ句の果てそれを毎時間一回はネタにすると言う人間の屑の痰を集めたような奴だ。

 そんな人の悪いところを覚えているくらいなら日々抜け落ちていく髪の毛やその不毛の大地を気にかけた方が良い気がする。


 だがしかしこんな悪口を思っていたって状況は変わらない。

⋯⋯悪口を言えば教科書が出てくるなら僕は悪口をでっち上げてでも言えるだろう。


 キーンコーンカーンコーン

 まずい!こんなくだらない他人の改善点を思い浮かべていたらとっくに始業時間となった。

 これは素直に謝るべきか⋯⋯。


「もしかして、教科書忘れたのか?」


 聴き慣れない声。

 声の下方を見ると例の彼が言っていたようだ。


「え、うん。なんで分かったの?」


 不思議だ。言葉にしていないし冷静を装っていたはずなのにどうしてバレるのだろうか。


「だって小声でやばい忘れたって何回もブツブツ言ってるし挙動不審だし誰でも気づくだろ」


 ん?言葉は発していないし冷静な振る舞いをしていたはずだが?

 そんなことはどうでもいい、今は言い訳を考えておかなければ。


「ほら、貸してやるよ」


 手渡されたのは僕が今この世で最も欲しい「英語表現Ⅰ」とデカデカと書かれた教科書だった。



「あー、教科書忘れちゃったんでちゅかー?まだまだ中学生気分が抜けてないのかなー?」



 地獄のお荷物チェックマシーンはすぐそばまで来ていた。


「あれあれあれ?君、教科書はどうしたのかな?もしかして、さっきの中学生と同じでおうちに忘れてきちゃったか!」


 ヘラヘラと笑いながら不快な顔をした不毛の大地を持つ男がこの席に近づく。


「いや、俺は昨日の夜に予習をして教科書の内容も全て覚えたのでいらないだけです」


 すました顔をして鬼教師もとい屑水谷に言葉を放つ。

 イケメンか?イケメンかなのか?


「あー、ま、獣の君は夜行性だからしょうがないか!いいよいいよ、この授業もずーっと寝てなー。授業受けなくても98点取れるもんねー!」


 この男の前世は人にでも殺されたのだろうか?

 そんなことを言われた隣の席の彼は気にしていない様子で机に突っ伏していた。


 しかし、なんでだろうか、心の内が気持ち悪い。



 気がつくと僕は手をあげていた。


「あの、先生。その言葉は教育者として不適切な発言だと思います。謝ったほうがいいと思います」


 どうしてだろう。無意識のうちに先生という採点者に歯向かった。

 今までこんなことはなかったのに。


「あー?あ、君は前回のテストが34点だった子か!。ギリギリ赤点だったねー、次は頑張ってね」


 忌々しそうに睨まれながら言われた。

それは悪意以外の何者でもないのが肌で感じた。

 でも、僕のテストの点がクラスに晒されたことも今ではあまり気にならない。


 隣の席ではいつもは動かない耳が忙しなく動いていた。

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