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昼休み3


「…ああ、見つけたよ、“コレ”だ。」

瑞浪は取り巻きを引き連れて希一たちのテーブルの前で止まると、そう冷たく言い放った。

視線はご飯に夢中な冬慈に注がれている。

昨夜入寮、本日初登校のはずなのに、なんで副会長に目をつけられているんだろうか。

思わず二人を見比べてみるが、冷たい視線を向ける副会長の瑞浪に対し、冬慈は微塵も興味を向けていない。

一方的な因縁の線も十分あるのだが、如何せん冬慈は人間に対する興味関心がとても薄いので、絡まれたことを忘れている可能性も十分にあった。

これは、どっちだ?ハラハラと見守っていると、

「おい。」

瑞浪がぞんざいに呼びかける。

が、冬慈は視線を向けることなくご飯を食べ続ける。

希一からすれば、飯中の冬慈に声をかける方が悪いのだが、そんな事情は当然瑞浪に分かるはずもなく。

「…僕が声をかけてやってるんだ、返事くらいしたらどうだ?」

「……」

「…っこの、」

瑞浪は生徒会副会長という、責任ある立場にあるにも関わらず、恐るべき短気さを発揮した。

「っ返事くらいしろ庶民の分際で…!!」

そのまま、若干おかずの残った定食のお膳をテーブル上から薙ぎ払う。

食器の落ちる音が食堂中に響き渡り、周囲は沈黙した。

「…」

冬慈は、箸と茶碗を持ったまま固まっている。


ヤバイ。


さぁ、と血の気が引いていく希一と対照的に、多少留飲を下げたらしい瑞浪は、ふん、と鼻で笑う。

「わざわざ僕が声をかけてやっているのに無視シカトするからだ。それに、どうせ犬の餌と変わらないものを食べてるんだろう?そんなに食べたいなら床に這いつくばって食べたらどうだ?」

食堂の関係者・利用者すべてを敵に回す発言で食堂内の温度を更に下げた瑞浪は、しかしその空気に気づいていない。

冬慈しか目に入っていないようだった。

その冬慈は、とても小さく「…おれの、ごはん…」と呟いている。

これはもう、ヤバイ。

こうなってはもう、とるべき手段はただひとつ。

希一は、呆然としている羽水に目配せすると、唐突に立ち上がる。

ガタリと派手な音と、強面でガタイの良い希一が急に視界に入ったのか、びくりとする瑞浪一行。

それらを無視して、希一は固まったままの冬慈をおもむろに担ぎ上げる。

そしてほっそりとして見える割にずしりとくる重さに耐えながら、希一はその場から駆け出した。

「あっ、おい…!」

「しっつれいしましたあぁぁぁぁぁぁ………!!!!」

ドップラー効果に乗せた謝罪を置き土産に、自慢の逃げ足を披露する。

慌てて後を追ってくる羽水のことは、誰も気にしていないようだった。


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