風紀VS親衛隊2
王道に則った風紀VS親衛隊にしようとしたなれの果て。
「―――これ以上の横暴は我ら生徒会長親衛隊が許さんぞ…っ!!!!」
叫びながら乱入してきた第三者は、伊集院公介生徒会長の親衛隊、そのトップと幹部4名であった。
先頭に隊長が仁王立ちし、両脇には2名ずつ、小柄な生徒が控えている。
元々生徒会長自身の評判もいいのだが、他の隊に比べて真面目な生徒が多いため、比較的好感度の高い親衛隊である。
隊長に至っては、本人が生徒会に所属してもおかしくないくらい品行方正で成績も優秀であった。
「…チッ、織部かよォ…生徒会のイヌがナンの用だってんだァ…?!」
「ふっ、徳丸の犬であるお前にとやかく言われる筋合いはないな。」
苛立ったような態度の米田に対し、生徒会長親衛隊の隊長である織部光司郎は鼻で笑う。
「それに、我々は生徒会長である伊集院様より直々に依頼を受けたのだ。昨日、野蛮な風紀委員長に謂れのない暴力を振るわれた幼気な一般生徒を気遣ってやってほしい、とな!!」
どどん!と効果音が付きそうな見事な仁王立ち。
とんだ暴露に、ああああと木林は頭を抱えた。
親衛隊所属者というと小柄な者が多いが、織部は珍しく180㎝の大台に乗る。そこそこ体格で米田と張り合える上、冬慈よりもでかい。
ついでに言えば、現在進行形で冬慈に盾にされている木林も180㎝を超える長身で、更に言えば風紀で筋トレをさせられているためガタイも良い。
米田こそ180㎝にぎりぎり届かないとはいえ、体の厚みでいえば木林の上をいく。
対して、冬慈。
木林より頭一つほど小さく、体のバランスの所為か、ほっそりして見える体型。
イジメられているシマリスのような雰囲気をもたらす、ハの字に下がった見事な困り眉。頬にはでっかいガーゼのおまけつき。
決して小さくはないはずなのに、周りを囲む人間たちがデカいせいで、まるで大型犬の中に放り込まれたチワワである。
そんな視覚情報に加えて、まるで土佐犬のような体格の風紀委員長に殴られたという情報が合わさってしまった。
「…え、あのケガってまさか風紀委員長が…?」
「…いくら戦闘狂とはいえ、編入生にいきなり…?」
「…ついにこんな普通の生徒にまで…」
「…謹慎者リストに委員長の名前あったから何事かと思ったら…」
「…こんな華奢な奴をぶん殴るとかやべー…」
ざわつく教室。
ケガは風紀委員長ではなく生徒会副会長であるところの瑞浪親衛隊の所為だし、幼気でも普通でもないし、華奢に見えるのは周囲がちょっとばかりデカい奴だらけな所為だし、そもそも結局、徳丸は煽り倒されてはいたがぶん殴れてなかったし。
などと思うものの、形成された世論は今更逆転の余地もない。
ぶん殴れていないが風紀委員長が冬慈に殴りかかったのは事実だし、現在進行形で風紀委員長の徳丸を慕う米田が絡んでるし、逆に生徒会長親衛隊である織部たちが冬慈を庇っている。
「伊集院様は大層心を痛めていらっしゃった。編入してきたばかりの生徒が、理不尽な暴力から救ってくれるはずの風紀に!それもトップに!!暴力を振るわれた佐久間くんが学園生活を怖がってしまうのではないかと!!
だから我々生徒会長親衛隊が直々に、佐久間くんの学園生活のサポートを行うことにしたのだっっっ!!!」
どどーん!!!!
「さすが生徒会長、お優しい…!」
「生徒会長の親衛隊なら安心して任せられるな…!」
「親衛隊ともきちんと人間関係を築いている会長、さすが…!」
「織部隊長みたいにできた人が部下ってだけでもすごいのに…!」
「伊集院様が生徒会長であるならこの学園は安泰だな…!」
風紀の株が滝つぼ真っ逆さまであるその横を、生徒会長及び親衛隊の株が凄まじい勢いで昇っていく。昇り龍かな。
当事者であるはずの冬慈は先ほどから黙ったままだが、たぶん口を挟まない方が得だと判断したのだろう。
本当、黙っていればとてもおとなしく、暴力沙汰とは無縁の人間にしか見えないシマリスである。
そしていくら脳筋どヤンキーとはいえ、なんとなく、クラス内の雰囲気が己に不利なことに気づいたのだろう。米田は盛大に舌打ちをする。
「クソ冬慈がァ…!!トクさんが復帰したら覚えておけよォッ…!!!!」
そんな最低な襲撃宣言を捨て台詞に、廊下から騒ぎを覗いていたやじ馬たちを威嚇しながら蹴散らし去っていく米田。
ああ、風紀の株、ストップ安。




