風紀VS親衛隊1
己の上司であるところの風紀委員長が、戦闘狂として認識されていることを知った翌日の昼休み。
「ゴルァァァ出てこいや冬慈ィィー…!!!!」
食堂に向かおうとしていた木林は、思わず頭を抱えた。
「うるさいよ米田…」
「ア゛ァ゛?てめえこそうるせえ黙っとけ木林ッ!」
脱色してパサついた金髪に、思い切り着崩した制服で吠えるヤンキーが、教室の扉を盛大に開け放ち叫んでいる。しかしそんなやんちゃなナリで、木林と同じく風紀委員であった。
「いや無理何言ってんのどうみても風紀が一般人脅そうとしてる図なんだけど。」
委員長が謹慎を喰らった昨日の今日で、再び風紀のメンバーが冬慈に絡むとは。風紀が風紀違反するの、本当にやめてほしい。
特に米田は、委員長の徳丸の言うことしか聞かない狂犬であり、悪い意味で有名な風紀委員である。なんなら、委員ではなく取り締まられる側ではないかと、常々囁かれている。
一方、呼ばれた当事者である冬慈は米田が叫んだ直後から、木林の後ろにすばやく移動していた。昨日に引き続き、木林を盾にする気満々である。
いやまあ、こいつおとなしそうに見えて結構アレな奴だということは昨日嫌というほど思い知らされたので、矢面に立たれても困るから構わないのだが。
そういう思考が貧乏くじを引き続ける運命をもたらすことには、まだ気が付かない木林である。
「大体、なんでお前が切れてんの?」
「キレるに決まってんだろォがよっ!!コイツのせいでトクさんが謹慎くらったんだからよォ…!!!!」
叫ぶ米田。ドン引きするクラスメイトたち。木林は頭が痛くなってくる。
木林の後ろから顔だけ覗かせている冬慈は、どうやっても絡まれるんなら、と前髪を上げピンで留めているため、困り眉が全開である。
とっても困り眉で幸薄そうで、更にガタイの良い木林の後ろにいるため華奢に見える体格。全てが相まって、とっても幼気な小動物である。
なるほど担任の坂田が「イジメるなよ」と釘を刺したのも頷ける、そんな姿であった。
おかげでクラスメイト達の態度も、根暗なオタクに対するものから、小動物を愛でるような心持に変化している。まあ、冬慈は言うほど小さくはないのだが。
現状は、そんな小動物のような転入生に絡むドヤンキー風紀の図。
どう冷静に考えても、外聞が悪すぎる。
というか、米田は冬慈のことを下の名前で呼んだ。ということは、もともとの知り合いなのだろうか。
などと考えていると、同じく何やら考え込んでいたらしい冬慈が、ああ、と何かに気付いた。
「んだよ、米茄子じゃねえか。あいかーらず徳用大根の金魚のフンしてんのか」
「米田智夏だっつってんだろォがクソ冬慈ぃぃ…ッッッ!!!!」
いじめられっ子なシマリス感を醸し出している割に、ごりごりに米田を煽る冬慈。
大根なのか金魚なのか。茄子なのかフンなのか。
とってもどうでもいいことに木林が意識を持っていかれている間に、冬慈と米田の言い争いは徐々にヒートアップしていく。
「イチくんは受験勉強で忙しくなっちまうしトクさんは謹慎食らうしよォ!!」
「どっちもおれのせいじゃねーじゃん」
「ア゛?てめえがおとなしく殴られてねえからこんなことになってんじゃねえか、てめえも少しぐらい痛い目みろよォ!!」
「十分みてる。てめえと徳用大根が同じ学校だなんて最悪。」
煽り倒している冬慈だが、声のボリュームを絞っている所為で、遠巻きに見ているクラスメイト達には何を言っているかははっきり聞こえていない。そのため、米田の脅迫セリフのみがクラスに響き渡っており、目に見えて風紀の好感度が爆下がりしていた。
米田の口腔内にレモンぶち込んだら爆発しないかな、なんて現実逃避をしてみるが、〇善だって爆発していないので無理である。
とりあえず、事態の収拾を図らねば。木林は気持ちを切り替える。
現在は昼休みで、廊下を移動する生徒が多く、このクラス以外にも風紀の醜聞は見られている。
つまり現在、学校レベルでこの醜態が広まっているということだ。由々しき事態である。
いくら委員長が戦闘狂とはいえ、それはあくまでも問題を起こした生徒に対して、という建前があり、今回のように何も問題を起こしていない生徒に絡むなど、あってはならないのだ。
あっては、ならないのだが。
「さっさと面ァ貸せよクソ冬慈ィィ…!!」
ぶん殴ろうかな。
あまりの面倒臭さに思考放棄しかける木林。
しかし、そこに第三者が乱入した。
「そこまでにしてもらおうか!!!!」
ばーん!!
と効果音が付きそうな出で立ちで教室に入ってきたのは、眼鏡をかけた真面目そうな生徒。
無駄に顔をきりっとさせて、それは宣う。
「風紀委員でありながら、か弱い生徒に何たる暴言っ!!これ以上の横暴は我ら生徒会長親衛隊が許さんぞ…っ!!!!」
事態が、ややこしくなる気配がした。
伏字の意味があまりない〇善。




