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ゲーム嫌いがゲームを始めました  作者: なき
第2章 バトル大国オランジュ
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ペーシュのカラクリ屋敷Ⅱ

 このカラクリ屋敷の入口は、正面玄関である。バジルとローゼは屋敷の裏手から出てきたので、出口はそちらのほうにあるようだ。


 セドラーシュはどこからか買ってきたらしいみたらし団子を頬張りながら、出口のほうへ向かった。


 玄関の前にはスタッフらしき人がいて、順番にお客さんを中へ入れている。玄関は一般家庭にあるようなものとは段違いに広く、足を踏み入れたとたんに木材の匂いが鼻孔をくすぐる。いかにもお金持ちのお屋敷といった感じだ。


 玄関と廊下を隔てるように段差があって、ノゾムとラルドは段差の前で当たり前に靴を脱いだ。


「何をしてるの?」


 ローゼが目を丸くして尋ねてくる。ローゼとバジルは土足で廊下に立っていた。


 いやいやそっちこそ何してるんだよ、と思ったところへ、ラルドの「あ」という声が響く。


「ノゾム、あれ見ろよ」


 ラルドが指差したのは、玄関の横に貼られた紙だ。


『靴は履いたままで大丈夫!』


 どうやらローゼたちの行動のほうが正しかったらしい。ノゾムとラルドは、一度脱いだ靴を履き直した。


「靴のまま家に上がるなんて、変な感じ……」

「だよなぁ。ばあちゃんに見られたら、ひっぱたかれちまうよ」


 ぶつくさと呟く2人をローゼとバジルは不思議そうに見ている。そういえば2人は外国のプレイヤーなんだっけ。どこの国のプレイヤーかは知らないけど、きっと靴のまま家に入るのが当たり前の国なのだろう。


 板張りの廊下を進み、ノゾムはさっそく落とし穴にはまった。屋敷内には、こういった罠がいたるところにあるそうだ。


「隠し扉や、隠し通路も多くてね。あちこち歩き回っているうちに、ネルケとはぐれちゃったのよ」


 気をつけていたつもりなんだけど、とちょっぴり口を尖らせてローゼが言う。


 セドラーシュに「やめたほうがいい。絶対に迷子になる」と言われていたらしく、余計に気をつけて見ていたそうだけど、それでどうしてはぐれてしまったのか。


 ぱかりと開いた壁に呑み込まれそうになりながら、ノゾムは不思議に思った。


「おい、ネルケ! 聞こえたら返事をしろ!」


 バジルはズケズケと部屋に入り叫ぶ。押入れを開けたり、ツボを覗き込んだり、ゴミ箱をひっくり返したり。人を捜しているというよりは、猫か何かを捜しているみたいだ。


「出てこいネルケー!」

「ゴミ箱に入るわけないでしょ!」


 真面目にやれとローゼは怒るが、たぶん、バジルは真面目にやっている。ラルドは壁に飾られた絵画や掛け軸をめくった。


「何をしてるの、ラルド?」

「んー? いや、こういうところに何かあったりしないかなーって……あ、あった」

「え、何が?」


 ラルドが何かを押す。するとどこからかカタンと音が聞こえた。ノゾムはハッと思い出す。そういえばラルドは、『悪魔の口』でも次々にスイッチを押してトラップを発動させていた。


「何を押したの!?」


 カタカタ、カタカタ、と部屋中が怪しげな音を出す。天井がぱかりと開いた。何か得体の知れないものが降ってくるのではとノゾムは身構えたが、降りてきたのは階段だった。


 屋根裏に続く隠し階段のようだ。


「ネルケ! そこにいるのか!?」


 バジルが階段を駆け上がる。バジルの巨体を支えるには、木造のその階段は少々心もとない。天井裏への入口も、バジルにとっては狭そうだ。


「あ! そこにいるのはネルケか!? 違うのか!? くっ、この……」


 上半身を屋根裏にねじ込んだバジルは何事か騒ぐ。天井から下半身を生やしたその姿は、なんとも間抜けだ。


「ネルケ? ネルケがいたの?」


 ローゼが訊く。


「ぐうぅ……っ」


 バジルは苦しそうに呻いた。


「抜けなくなっちまった……」

「バカなの!?」

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