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ゲーム嫌いがゲームを始めました  作者: なき
最終章 常闇の国ヴィオレ
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魔王城3階と4階

 魔王城3階。階段を上がってすぐ、虹色に輝く謎のクレヨンを拾った。

 このクレヨンは不思議なことに、空中に線を描くことが出来る。描いた絵の上には、乗ることも可能だ。


 このクレヨンを使って、穴だらけの廊下に『道』を作りながら進んでいく……それがこのフロアの歩き方らしい。

 どんな『道』を作るかは描き手に委ねられるが、問題がひとつある。それは、『一筆書きで描かなければならない』ということだ。


 一度クレヨンを放すと、続きから線を描こうとした途端に、前に描いてあったものが消えてしまう。

 うっかり絵の上に乗っているときに消してしまったら、下のフロアへ真っ逆さまということだ。


 誰が絵を描くかで揉めているナナミとエレンとラルドを見て、ノゾムは口元を引き攣らせた。むろん、不器用な自覚があるノゾムは名乗り出たりはしない。一筆書きで道を作りながら進むなんて、ノゾムにはハードルが高すぎる。


 なんとか穴だらけの回廊を進んでいくと、やがて緑の宝珠を口にくわえた埴輪(はにわ)が出てきた。

 これはたぶん、ヴェールの王シプレが大量に作っていた埴輪のひとつだろうなと、ノゾムは思った。


「よっしゃ、これで4つ目ゲット! この調子で次のフロアに……」

「このフロアも全部見てから行くわよ!」

「……あのさぁ! そんなにちんたらしてたら、他の奴らに先を越されるだろ!!」


 とっくに先に行かれている気もするが。それでもラルドは先を急ぎたいらしい。ナナミは聞いちゃいない。ふらふらとどこかへ行こうとするナナミを見て、ラルドは頭を抱えた。


 そうこうしている間にも、他のプレイヤーたちは魔王城を攻略していく。


「あれ、ナナミたちじゃないか。こんなところにいたのか」


 ついには、墓場でミイラたちと戦っていると言われていたジャックたち一行にまで、追いつかれてしまった。


 ラルドは「来るなよイケメン男!」と叫ぶ。ジャックは「その呼び方懐かしいな」とクツクツと喉を鳴らして笑った。


「ミイラと戦ってるって、シスカさんに聞いたんですけど」

「ああ、戦ってたぜ。これがもうすんごい数でさ〜。巻き込んじまったシスカにはとりあえず『めんご』って謝ったんだけど……あいつ、怒ってた?」

「めちゃくちゃ疲れた顔をしてました」

「あはははは」


 ジャックは声を上げて笑う。反省の色は皆無だ。ノゾムはシスカの疲れ切った様子を思い出して、内心でこっそり彼女を労った。


「【ネクロマンサー】にはなれたのか?」


 ラルドが聞く。ジャックはにんまりと口角を持ち上げて頷いた。


「やっぱりここの墓場だったよ。小さな子供の声で『遊ぼう』って聞こえてきてさ、それに応えたら【ネクロマンサー】の転職条件を満たすんだ」

「ほう」

「ただし! 声に応えた瞬間、大量のミイラに囲まれるはめになる!」

「おぉ……」

「子供がキャッキャキャッキャ笑う声も聞こえてさ〜。あのガキ、絶対に性格悪いな」


 【ネクロマンサー】になる気なら、覚悟して行けよと、ジャックはそう締めくくる。

 ノゾムはまったく興味がないが、ラルドは興味津々にジャックの話を聞いていた。


 ジャックたちとはそこで別れ、ノゾムたちはナナミが満足するまでフロアを探索して、4階へ向かった。


 4階はだだっ広い庭園になっていて、坂道や階段、大きな段差などといった障害物がある。その障害物の中で、青い宝珠を腹の中に入れたロボットを追いかけ回すのだ。


 これはおそらく、『パルクール』と『鬼ごっこ』を組み合わせたものだろう。


 ロボットはずんぐりとした体型であるにもかかわらず、段差も階段も塀も、まったく物ともせずに飛び越えていく。そのスピードはなかなかのものだ。がむしゃらに追いかけるだけでは、決して捕まえられないだろう。


「回り込んで、挟み撃ちにするんだ!」

「ノゾム、ここモンスターいないっぽいぞ! ロウを出せ! オレもカイザーを出す!」

「分かった!」


 左腕のリングを弄って、アイテムボックスの中からロウを出す。


 久しぶりに外に出られたロウは、赤い毛並みをぶるぶると震わせて、元気いっぱいに吠えた。


 その様子を見て、やっぱりもっと頻繁に出してあげなきゃな、と思う。でも、モンスターと戦わせて万が一にも死んじゃったりしたらと思うと、なかなか外に出せない。


 アルベルトのやつに『死に戻り』させられたのが、ノゾムの中では結構なトラウマなのだ。


 ラルドのリングから出てきたカイザー・フェニッチャモスケは、輝く真っ赤な翼を広げて、高い天井をくるりと旋回した。


 前に見たときより、ずっと大きくなっている。「ちょこちょこレベルを上げてヒヨコから鷹くらいになった」とは聞いていたが、確かに今のフェニッチャモスケの姿は美しい鷹のようだった。


 ピィピィ鳴いていた頃が懐かしい……


「ピィ! ピィ!」


 ……今も鳴き声はピィピィだった。


「よおし、さっさと5つ目の宝珠ゲットしてやるぜ!」

「そのあとはフロアの探索よ?」

「お前って奴は本当にもぉぉぉ!」


 ずんぐりとしたロボットは軽やかに塀を飛び越える。この城を攻略出来るのは、いつになることやら……。

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