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ゲーム嫌いがゲームを始めました  作者: なき
第5章 スポーツの国ブルーと密林の国アンディゴ
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藍の国の王様

 引き締まった肉体。猫の目のように尖った目。両頬にはこれまた猫のヒゲのように、白いペイントが2本ずつ入れられている。


 短く整えられた髪の色はスミレ色。瞳の色は紫紺色。ヒゲは生えていない……というか、生えているわけがない。


「私がアンディゴの王、リラだ。私に用とは何かな?」


 サバイバルの国の王は、女性だった。背が高くて筋肉質な女性だ。腰には剣を、背中には大きな弓を背負っている。項垂れるラルドの肩をオスカーが優しく叩いた。


「魔王には生えているかもしれないじゃないか」って、そういう問題なんだろうか?


 ノゾムは口元を引き攣らせつつ、ラルドから目をそらして、リラと名乗った王様に目を向けた。


「あの、俺、ノゾムっていいます。実は父親を捜していて……水城光一っていうんですけど」


 リラは猫のような目を見開いた。


「これは驚いた。光一の息子か!」

「ええ、はい。それで、ヴェールのシプレさんに助言を貰って……」


 各地の王様に会うよう言われたこと。王様を訪ねていけば、いつかは父親に会えると教えられたことを告げる。


 リラは顎に指を当てて、「なるほど」と呟いた。


「それでは私はこう言えば良いのかな? 『私はお前の父親ではないよ』」

「はい、そうじゃないかな〜とは思っていました。ありがとうございます」


 ノゾムはぺこりと頭を下げた。やはりノゾムの父親は、シプレに会う前に出会った3人の王様の中にいるのだろう。


 苦虫を噛み潰すノゾムを見て、リラは面白そうに笑った。


「その様子だと、だいたいの目星はついているのだな」

「候補は3人にまで絞れています」

「3人? ふむ……。違うだろうと思っていたのに、わざわざ私を訪ねてきたのか」

「せっかくだから、王様全員に会ってみようかと……。仕事の邪魔をしてしまってすみません」

「構わんよ。プレイヤーとコミュニケーションを取るのは、制作者として有意義なことだ。それにしてもお前、礼儀正しいな。本当に光一の子か? 母親の教育が良かったのか」


 しげしげとノゾムの顔を見ながら、そんなことを言うリラ。おいこらクソ親父、職場でどんな態度を取ってるんだ。


「私に会いに来てくれたことは嬉しい。それも、わざわざこんな辺境にな。来るのは大変だっただろう?」


 苦笑いを浮かべるリラに、ノゾムは困った顔をした。


 確かに、アンディゴへのアクセスはとんでもなく不便だった。

 ジョーヌ、ヴェール、ブルーへはオランジュから直接船が出ているのに、アンディゴへはブルーから『竜の谷』を超えなければならないのだから。


「『伝説の生き物たちと戦える場所がほしい』と要望を出したら、こんな辺境にされてしまったんだよな……。殺伐とした世界は嫌だと、ミエルやシプレ、サフィールが言ってな」


 オランジュのフォイーユモルトとは「戦える場所は欲しいよね!」と意気投合し、ルージュのアガトとは伝説のモンスターについて熱く語り合えたらしい。


 まあ、アガトの場合は『伝説のモンスターを仲間にしたい』が希望だったため、リラの要望とは似て非なるものだったのだけど。


 話し合いの結果、伝説のモンスターがそのへんをウロウロしている事態は避けられて、この辺境の限られた場所でだけそれが認められることになったのだそうだ。


 シプレさんたち、グッジョブである。


「まあ、伝説の生き物たちの中でも、比較的おとなしいやつは他国にいたりするがな」

「ああ……。イエティとか、ケツァルコアトルとかですか?」

「会ったのか!」


 頷くノゾムに、リラはキラキラと目を輝かせる。伝説の生き物とやらが、それだけ好きなのだろう。その生き物たちと戦うのも。


 なんだか、ラルドとアガトを足して2で割ったような人だなぁと、ノゾムはそんな感想を抱いた。


「主様。歓談中に失礼します」


 リラの部下の女性がふいに声をかけてきた。リラのもとに駆け寄ってきて、何事かを耳打ちする。リラの眉間にしわが寄った。


「またか……」

「リラさん?」


 キラキラ笑顔が引っ込んで、なんだか険しい顔を浮かべるリラに、ノゾムもまた眉を寄せる。何か問題が起きたのだろうか。


 リラはそんなノゾムの様子に気付くと、安心させるように笑顔を向けた。


「すまない。急用が入ってしまった」

「いや、それはいいんですけど……大丈夫ですか?」

「よくあることだ。問題ない。私はこれで失礼するが、お前たちはゆっくりしていくといい。何か聞きたいことがあれば、部下たちが聞くぞ」


 それでは、と言って、リラは颯爽と去っていった。ツリーハウスからぴょんと飛び降り、急ぎ足で村を出ていく。


「おお……すげぇクールな姉ちゃんだぜ」

「カッコイイ人ね……」


 その後ろ姿を見送って感心したように息を吐くエレンとナナミ。確かに、すごくカッコイイ女の人だった。


 でも、本当に大丈夫なんだろうか。すごく険しい顔をしていたけど。


「何か聞きたいことはありますか?」


 リラに後を任された女性が聞いてくる。「あ、えっと」ノゾムは迷った。何か、何か他に聞きたいことはあったっけ。


「精霊ってどうやったら仲良くなれんの?」


 迷っている間にラルドが尋ねた。それだ。女性は「精霊ですか」と目を丸くさせた。


「仲良くなるのは難しいですよ。彼らは、なんていうか、ちょっと気難しいので」

「ふむ……?」

「ただ、『精霊に嫌われる』条件なら確実なものがあります。自然を汚すことです」


 自然と精霊は切っても切れない関係にあるらしい。なので、自然を汚したり無駄に破壊したりすると、精霊は激怒する。


 仲良くなりたかったら、その逆の行動を取ればいいということだろうか……?


 他に聞きたいことはないし、何より仕事の邪魔をしてしまうのは嫌なので、ノゾムたちは女性にお礼を言うとその場をあとにした。


 プレイ時間も残り少ない。今日はこのまま、この村に残ることにしよう。

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