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ゲーム嫌いがゲームを始めました  作者: なき
第5章 スポーツの国ブルーと密林の国アンディゴ
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竜の谷Ⅲ

 ノゾムたちとフレデリカ一行は、切り立った崖の中腹にあった洞穴に逃げ込んだ。


 入口から先ほどのドラゴンの様子を伺うと、不思議そうにあたりをキョロキョロしている姿が見える。エレンたちのことは、完全に見失ってくれたようだ。


 エレンはノゾムたちまでいることを知って、まん丸に目を見開いた。


「なんだよ、お前らまでいたのかよ。さてはオレを仲間に――」

「違いますけど?」

「ああそうじゃねぇかと思ってたよ、ちくしょうが!!」


 即答やめろよォ、と泣き崩れてしまったエレン。ノゾムは心底から面倒くさいと思った。


 ラルドはドラゴンの様子を伺いながら、目をキラキラさせている。


「カッコイイなぁ、ドラゴン。エカルラート山のやつとはまた違うみたいだな。オレも戦いてぇ! もしくは仲間にしてぇ!」

「仲間って、無理に決まってるでしょ」


 何を言ってるのよ、とフレデリカは呆れた顔をする。


 ラルドは「ふっふっふっ」と笑った。


「それができるんだなぁ。オレは【テイマー】のスキルを持ってるから」

「テイマー? って、あの転職条件が『愛』とかいう、謎の? 本当に?」


 びっくりした顔をするフレデリカに、ラルドは鼻高々だ。エレンが口をへの字にしてラルドを睨んでいる。

 フレデリカの感心を向けられているのが、面白くないらしい。


「でも、戦うにしたって仲間にするにしたって、簡単じゃなさそうよ」


 ナナミが淡々と言う。

 オスカーも頷いた。


「ドラゴンというのは、想像以上にヤバそうだな」

「めちゃくちゃ硬かったもんね。魔法も効いてなかったし、口から炎を出すし、空も飛ぶし」


 あのドラゴンに弱点ってあるのかな、とリディアは眉を下げた。


 弱点か。そういえば、エカルラート山のドラゴンも、弱点らしい弱点はなかった。しいて言うなら盲目だってことだけど、ここのドラゴンたちにそれは当てはまらない。


 ラルドは興奮冷めやらぬ様子で続ける。


「ヴィルヘルムはあれを、1人で倒したんだよな?」

「そういう話だったけど、本当かどうかは分からないわよ」


 ナナミの言うとおり、それが事実かどうかは分からない。事実だとするなら、ヴィルヘルムはどうやってドラゴンを倒したというのか。


 鉄壁に思えるドラゴンにも、やはり弱点があるということなんだろうか。


「クリスタル・タランチュラのときみたいに、口の中に矢を放ってみるとか……?」

「炎で燃やされそうだな。だが……。硬い皮膚を持つアイツの体にも、どこかに柔らかい部分があるのかもしれない」


 オスカーはそう言って、慎重にドラゴンを観察する。ノゾムもドラゴンを見た。硬い鱗に覆われているドラゴン。柔らかな部分など、なさそうに見える。


 唯一、柔らかそうと言えそうなのは……。


「目、ですかね?」

「目、だろうな」


 ギョロリと動く、黄金の瞳。皮膚ほど硬くはなさそうだ。あそこになら、攻撃が効くかもしれない。


 ただし、命中させるのはめちゃくちゃ難しそうだけど。


「目かぁ。それならフレデリカの剣より、エレンの槍のほうが効果がありそうだね」

「ちょっとリアーフ! 何言ってるの? コイツは追放したのよ!?」


 冷静に告げるリアーフにフレデリカは噛みつく。エレンはパッと表情を明るくさせて、期待のこもった目でリアーフを見た。


 リアーフは肩をすくめた。


「エレンがいないと、ドラゴンに勝つのはたぶん無理だよ。アイツに魔法は効かないから、僕とリディアは補佐しかできない。エレンがいなければ、フレデリカが1人で戦うことになると思う」

「それはダメだよ、リアーフ。フレデリカだけに戦わせるなんて!」

「うん、分かってるよリディア。だからエレンと一緒に戦ったほうがいいって言ってるんだ」


 冷静に考えた結果だよ、とリアーフは言う。エレンはうんうんと大きく頷いた。フレデリカは苦虫を何十匹も噛み潰したような顔をしている。


「それでも、あたしは嫌よ。コイツを戻すなんて」

「そうか。なら他の方法を考えよう」

「おいこらリアーフ!! お前はオレの味方なんじゃなかったのかよ!?」


 追放をなかったことにしてくれそうな雰囲気だったのに、あっさりと意見を翻したリアーフにエレンは思わずツッコミを入れた。


 リアーフは小首をかしげて、エレンを見た。


「僕はリディアの味方だよ。お前のことはもう『フォローしきれない』って言っただろ」


 リアーフは別に、エレンを戻そうと思って言っていたのではなかったらしい。


 『ドラゴンに勝つための方法』を考えて、頭に浮かんできたことをそのまま口にしていただけのようだ。


 「オレたち親友じゃなかったのか」とエレンは喚くが、リアーフは淡々と「それとこれとは話が別」と返した。


 淡白な青年である。


「他の方法って……。フレデリカを1人で戦わせるのは、絶対にダメだよ?」

「もちろんだよ、リディア。エレンがダメなら、他の人の力を借りればいいさ」


 ……他の人って誰だろう。


 不思議に見ていると、リアーフの目がこちらに向いた。ノゾムはぱちくりと目を瞬かせて、きょろりと周囲に目を向ける。どうやらリアーフが見ているのはノゾムで間違いないらしい。


 遠距離から弓でフレデリカを援護してくれってことかな。


 ノゾムは口の端を引きつらせた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 面白かったです。 魔王イベントや、お父さんがどうなるのか楽しみです。
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