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ゲーム嫌いがゲームを始めました  作者: なき
第4章 モノづくりの国ヴェール
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ツリーハウス完成!

 そんなこんなで、再びレベル上げに勤しむ日々。


 ノゾムは【僧侶】の『天恵』を習得し、ラルドも【商人】の『節約』を習得し、ナナミは【錬金術師】の『収納』を習得した。


「ナナミさんは結局……戦闘スキルじゃないんだね」

「うん……このスキル、欲しかったの」


 これでナナミのアイテムボックスには無尽蔵にアイテムを収納できるようになった。

 ノゾムのアイテムボックスに入り切らなかった大量の矢を、代わりに持っていてくれる。


 ラルドも『節約』のおかげで上級魔法を2回までなら放てるようになったし、中級魔法ならもっとたくさん撃てるし、初級魔法なら遠慮なく撃ちまくれるようになった。

 威力が低いのは、ミスリルさえ手に入ればどうにかできるかもしれないとのことで、今は我慢するしかない。


 ちなみに1人で開拓地に残っているリオンはといえば、今はポム島で手に入れた野菜の種を使って家庭菜園をしているそうだ。ナナミには許可を貰っているらしい。

 ナナミいわく「ツリーハウスの横に野菜畑があるっていうのも悪くないわ」とのこと。

 ナナミって意外と何でもアリなのでは、とノゾムは最近思っている。


 オスカーと入れ替わった時には、ノゾムたちと合流して一緒にレベル上げをした。オスカーは【学者】のセカンドスキル『拡散』を習得し、次は『収縮』の会得を目指している。


 そうして数日が過ぎ、そろそろヴェールを出発しようかといったところで、


「ちょっとリアルで旅行に行ってくる」


 唐突にラルドがそんなことを言い出した。

 ノゾムとナナミはポカンと口を開けてラルドを見た。


「え……旅行?」

「おうよ。明日から2泊3日で」

「ずいぶん急じゃない」

「うん。急に決まったからな。夏休み中ずっとヘルメットつけて寝てるオレを、母ちゃんたちが心配しちゃって……」


 プレイ時間が終わるたびに1時間の休憩を挟むとはいえ、基本的にずっと寝続けているラルドのことを、ラルドの両親は不安に思ってしまったらしい。仕方のないことかもしれない。


 ナナミは「ふぅん」とつぶやいた。


「親と仲いいんだ?」


 ラルドは当たり前のように頷いた。


「まあな。オレの好きなようにさせてくれるぜ」

「あー……。ぽいわね」

「ぽいって何だよ!」


 というわけで、ラルドは3日間不在となることになった。




 ***




 翌日、ラルドを除く3人はナナミの開拓地に集まった。


 大小さまざまな4つのツリーハウスを、3つの吊り橋が繋いでいる。正面にある特に大きなツリーハウスの下に、リオンの野菜畑は広がっていた。


 畑には最近種を植えたばかりなのに、もう赤いトマトが実っている。ゲームの中だからなのか、成長が早いようだ。


 ラルドの不在の3日間、何をするのか。


 ナナミはとりあえずツリーハウスを完成させたいそうだ。


「ツリーハウスってこれで完成じゃないの?」

「内装がまだなのよ。家具とか小物とかをたくさん置いてゴチャつかせたほうが、生活感が出るでしょ」

「生活感……?」


 大事だろうか、それ。


 首をかしげるノゾムに、ナナミは「まあ見てなさい」と返して、さっそく工房に向かった。開拓地の端に作ったナナミの工房からはにょっきりと煙突が生えている。あの煙突の下あたりに、街の大工さんたちに作ってもらった炉があるはずだ。


 手持ち無沙汰になったノゾムは、地面を耕しているリオンのもとへ向かった。


「リオンさん、今度は何を育てるの?」

「パプリカだよ。女神からは出来るだけ色鮮やかな野菜にしてって頼まれているからね」

「へぇ……」


 ツリーハウスの下に、色鮮やか野菜たち。それはそれで映えるのかもしれないけど、どうせなら野菜より花のほうがいいんじゃないかと、ノゾムは思ってしまう。


 畑を作っている間にリオンは【農民】に転職できるようになったらしい。農民って何。習得したスキルのおかげで、一度に広い範囲を耕せるようになったそうだ。


 水やりの水は、例のケツァルコアトルの雨を使っているらしい。それでこんなに作物の成長が速いのか。


「ノゾムー! ちょっとこっち手伝ってー!」

「はーい」


 呼ばれたノゾムは、素直にナナミの工房へ向かった。


 内装に使う家具は、これまた木材を使って作るようだ。切ったり、削ったり、トンカチで叩いたりしながら、ナナミは小さな木のテーブルを作る。


 ノゾムはペンキを塗る作業を任された。


 ノゾムはナナミの正気を疑った。


「ペンキって、俺、とんでもなく不器用だよ? 知ってるでしょ? 絶対に変になっちゃうよ?」

「いいのいいの。塗りムラがあるほうが手作り感が出るでしょう?」

「手作り感……? 出るかな……?」


 正直不安しかないが、ナナミは「大丈夫」と言って聞かない。仕方なくノゾムはペンキ塗りを任された。


 街で買っていたらしいペンキの色はたくさんある。何色でもいいとのことなので、ノゾムは青いペンキを選んだ。


 ペンキを塗る作業はとても難しい。ムラが出ないよう塗っても、どうしても出てしまう。表面がでこぼこになったテーブルを見て、それでもナナミは「いいじゃない」と笑った。


 作った家具をハウスの中に並べて、収穫した野菜をテーブルの上に転がす。


 “ゴチャつかせる”との宣言どおり、整然としているとはお世辞にも言えない置き方だ。


 別のハウスには、ロープを編んで作ったハンモックをぶら下げた。


「なんか、これって……」


 物が溢れてゴチャゴチャした部屋の中。ハンモックの下には、使わなかった鉱石が散らばっている。また別のハウスの中には、水の張った瓶や籠いっぱいに入った野菜がめいっぱいに詰め込まれていた。ここは食料庫だ、と主張せんばかりに。


 完成したツリーハウスの全貌に、ノゾムは思わず息を吐いた。


「子供の秘密基地みたい……!」

「そう! モチーフはまさにそれなのよ!」


 ナナミは満足そうに言った。


 “子供が作った秘密基地”風にしたかったからこそ、やたらと『手作り感』にこだわっていたのだという。


 ノゾムの塗った下手くそなペンキも、こうして見るといい味を出している。下手くそなのが逆にいいって、そういうこともあるのか。


「モチーフなんていつ考えたの?」


 ナナミは開拓地についてすぐにツリーハウス作りを始めていたが、まさかあの短時間で決めたのだろうか。


「作りながら考えたのよ。最初は『木』を使ったものを作りたいな〜って、それだけ考えてたんだけど。何しろ木がたっくさん生えてるからね」

「いや〜、さすがは女神。素晴らしい」


 リオンはナナミを褒め称える。このツリーハウスの半分はリオンが作ったのだということを、忘れているのだろうか。


「正面の大きなハウスはリビングだよね? 左側の、ハンモックがぶら下がった部屋が寝室で、右側は食料庫……わらが詰まったあの小さな部屋は?」

「グラシオの部屋に決まってるでしょ」


 ナナミはアイテムボックスからグラシオを出した。

 リオンはすぐに逃げ出した。

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