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ゲーム嫌いがゲームを始めました  作者: なき
第4章 モノづくりの国ヴェール
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まずは素材の採集です

 シプレに貰った地図によると、素材の採集地には『山』『湿地帯』『孤島』と3つのエリアがあるようだ。


 その中でノゾムとラルドが向かうことにしたのは、緑の深い山々が広がる『エムロード』というエリア。エムロードというのも例に漏れず色の名前で、『エメラルドグリーン』のことである。

 

 ナナミとリオンも誘ったのだが、ナナミは今、一心不乱に木を切っているらしい。またストーカー扱いされるのではないかと不安そうにしていたリオンは、ナナミに追い払われることなく、むしろ「手伝って」と言われたそうだ。

 リング越しに聞こえるリオンの声は嬉しそうに弾んでいた。


 そんなわけで、ノゾムとラルドは2人だけで『エムロード』に足を踏み入れた。鬱蒼と生い茂る木や草を前に、ノゾムは困惑した顔を浮かべてラルドを見る。


「なんかいろいろ生えてるけど……どれが素材なの?」

「さあ? とりあえず目についたやつは全部持って帰ろうぜ!」


 ラルドはそう言って、目についた草を次から次へと引っこ抜いた。抜いた草は片っ端から左腕のリングに吸収させていく。リングの中はアイテムボックスに繋がっている。


 遠くから見ているときは分からなかったけど、草はそれぞれ形状が異なっていた。

 ギザギザの葉っぱがついていたり、先端がくるりと渦を巻いていたり、ふわふわの毛玉がついていたり……。


「この黄色いギザギザは見たことあるな……アルベルトが使ってた、麻痺させる葉っぱじゃない?」

「おお、アレか! じゃあこいつも持っていくか…………ビリッてきたぁぁぁぁ!!」

「え、触れただけで?」


 アルベルトは『スモーク』で草を燻らせてたけど。


 ビリビリ震えながらラルドは葉っぱをリングに入れた。アイテムボックスに入ったものは、アイテム欄から説明を読むことができる。


 『ピリピリソウ』……葉っぱの先端に体を麻痺させる毒がある。『痺れ薬』の材料になる。


 どうやらラルドは葉っぱを引っこ抜くとき、その先端を掴んでしまったようだ。


「うぅ……『リフレッシュ』!!」


 ラルドは自分の体に手を当てて、状態異常回復の魔法を使った。【僧侶】のファーストスキル、『神聖魔法』で覚える魔法だ。


 『神聖魔法』には他に、HPを回復させる『キュア』という魔法がある。

 『キュア』で回復できるHPの量は魔法防御力に依存しているが、『リフレッシュ』はステータスの高低に関係なく効果が現れるので、魔法防御力がそんなに高くないラルドでも状態異常を完全に消すことができる。


 ラルドは手のひらを閉じたり広げたりして、痺れがなくなったことを確認した。


「あー、ひどい目にあった。『リフレッシュ』を覚えてて良かったぜ。治療薬持ってねぇもんなぁ」

「ナナミさんに『麻痺無効』のエンチャントをつけてもらったアクセサリー、持ってなかったっけ?」

「あれならもう使わねぇかと思って、魔法攻撃力を上げるアクセサリーに変えた」

「いつの間に」


 ラルドいわく、アクセサリーは効果を考えてその都度変えたほうがいいらしい。

 ノゾムはずっと、初めて作った不細工なアクセサリーを付けていたが……。


「こういう毒草とか薬草とかを集めたら、【薬師】に転職できるようになるんだよね?」

「そうそう。『スモーク』って便利だよなぁ。素材集めついでに習得し……」

「どうしたの?」

「…………」


 ラルドはぱくぱくと口を動かしている。喉を押さえて、眉を寄せ、なんだかすごく困っているみたいだ。


「……声が出ないの?」


 ラルドはこっくりと頷いた。その手には、今度は紫色の葉っぱが握られている。またもや何かの状態異常にかかったようだ。


「『リフレッシュ』は……使えないみたいだね」


 ラルドはこくこく頷く。もちろん治療薬も持っていない。ノゾムは『リフレッシュ』を習得していないので、治してあげることもできない。


「いったん町に戻る?」

「…………」


 ラルドは眉を寄せたまま、目をぎゅっと瞑り、口をへの字に曲げた。

 ……これはどういう感情だろうか?


「……嫌なの?」


 こくり。


「……まだ素材集めを始めたばかりだから?」


 こくり。


「そのまま放っておいていいの?」


 ラルドはまたぱくぱくと口を動かした。残念ながらノゾムに読唇術は使えない。何を言っているのかはさっぱりだが、焦っている様子もないし、放っておいてもよさそうだ。


 ちなみにこの時ラルドは、「こういうのは時間経過で治る。たぶん」と言っていたらしい。相変わらず楽観的な男である。


 すっかり静かになったラルドは、また黙々と植物をリングに入れる作業に戻った。


 仕方がないのでノゾムもその作業を手伝う。ギザギザの葉っぱやぐるぐるの葉っぱを直接触らないように、上着で手を覆ってから草を抜き、左腕のリングに吸収させていった。


 この草たちが土地の開拓にどう役に立つのか、謎である。


「…………!」

「え、なに?」


 ふいにラルドがノゾムの肩を叩いた。振り向いたノゾムにラルドは目を輝かせて、何かを指差す。そこにはキノコがあった。


 真っ赤な笠に白い斑点模様の、なんだかどこかで見たことがあるような毒々しいキノコだ。


「それは毒だと思うよ?」

「…………!」


 ラルドはまたぱくぱくする。


 やっぱり何を言っているのか分からないけど、きっと「食べてみなきゃ分からない」とか「何かの素材になるかも?」とかポジティブなことを言っているに違いない。


 ノゾムはキノコに手を伸ばすラルドを呆れた目で見た。


 その時だ。毒々しいキノコが小刻みに震えだした。

 根本の地面が隆起し、下から何かが出てくる。出てきたものは、またしてもキノコだった。頭にベニテングタケを生やした、巨大なキノコの怪物。

 顔の真ん中あたりに大きな鼻がぶら下がっていて、鼻の上にある2つの窪みの奥は怪しい光を放っている。


 ノゾムは思わず叫んだ。


「オバケキノコだぁぁぁぁぁッ!!?」

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