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ゲーム嫌いがゲームを始めました  作者: なき
第3章 黄金の国ジョーヌ
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女王VSオスカー

「こうして迷路に放り込まれた者同士が集まりつつあるってことは、出口が近いってことじゃないかな〜」


 ピンクマリモはそう言った。迷路の出口がひとつしかないとしたら、攻略しているうちに攻略者が集まってくるのは自然なことだろう、と。


 そうだったらいいなとノゾムは思ったけど、実際にはそうはならなかった。

 『魔方陣』の扉を開いたあと、次の扉が見つからないのである。


「こっちは行き止まりだ」

「こっちもです」

「おっかしいな〜」


 全員で手分けをして探すが、どこにも扉は見当たらない。もしかすると、どこかで道を間違えたのか?


「なんなんだよ、もおーーーーッ!!」


 エレンはまた喚いている。「うるさい」と、似非爽やか男に殴られた。

 ピンクマリモは胸の前で腕組みをして、困ったように眉を下げた。


「こうなったら戻るしかないけど〜……。戻るのも大変そうだな〜」

「……そうですね」


 ノゾムは途中まで目印となるワイヤーを張っていたのだが、絡まったエレンを助ける時にそれ解除してしまった。


 やっぱりエレンのことは放置しておくべきだったかな、と思うけど、今さらである。





「…………」


 そんなノゾムたちの様子を、オスカーはポーカーをする傍らで見守っていた。


 迷路の中にいるノゾムたちは自分たちがどこにいるのか分からないだろうけど、モニターには迷路の全体図も映っているので、オスカーたちには分かる。

 彼らがいるのは、星型の迷路のちょうど中央部分だ。


「……ひとつ聞きたいんだが」

「あら、何かしら?」

「あの迷路って、普通に進むだけじゃ攻略できなくないか?」


 迷路の全体図には、入口も出口も見当たらない。


 女王ミエルは手持ちのカードで口元を隠しながら、目だけを三日月型に細めた。正解のようである。オスカーは改めてこの女王の性格の悪さを理解した。


 さてどうしたものか。放っておいてもノゾムたちが自力で脱出してくるのなら、それでもいいけど……。


 オスカーはさっとテーブルの上のチップを見る。現在のチップの数は、オスカーが12枚、ラルドが3枚、女王が15枚。もうすぐラルドが落ちそうだなというところである。


 女王のカードの引きはなかなか強い。が、早くノゾムたちの観察に戻りたいという気持ちがあるからか、少しばかり勝負に集中できていないといった感じがある。


 これなら――。


「女王陛下、提案がある」

「なんでしょう?」

「賭けをしないという話だったが、撤回したい」


 オスカーの言葉に女王は目をしばたかせた。長いまつ毛に縁取られた目をぱちぱちと動かして、それからにっこりと微笑んだ。


「良いですわ。何を賭けますか?」

「もちろん、迷路の中にいる彼らのことだ」

「なるほど。あなたたちが勝ったら彼らを解放する、ということでよろしいですか?」

「いいや」


 オスカーは首を横に振る。思い出すのは、先ほどクイズをエレンに解かれてしまった時に見せた、ノゾムの顔だ。


 ノゾムがもし『自力で攻略したい』と考えているなら、オスカーが手を差し伸べるのは、余計なお世話にしかならない。


 けれども、あの迷路が『普通に進むだけじゃ攻略できない』なら、せめて最低限のヒントは欲しいところだ。見たところ、あの迷路にはそのヒントすらもないようだし。


 だから、


「俺が勝ったら、迷路攻略のヒントを彼らに与えてほしい」

「分かりました。それではわたくしが勝利した場合は、あなた方にも迷路に入っていただきますわ」


 “あなた方”と、勝手に巻き込まれてしまったことにラルドとナナミは目を丸めた。オスカーは「いいだろう」と頷く。「いや『いいだろう』じゃないでしょ」と、ナナミが即座に抗議した。


 女王はにんまりと笑う。モニターのほうへ向かいがちだった意識が、テーブルのほうへ戻ってきたのを感じた。


「言っておきますけど、今までのように慎重になさるだけでは勝てませんわよ」

「……ご忠告、感謝する」

「ちょ、え、え〜〜〜? マジかよ!? オレ、もうすでに負けそうなのに!」


 チップが3枚しか残っていないラルドは狼狽した。彼はその3枚を使って、最後の勝負に出た。むろん負けた。ラルドの敗因は、最初から最後まで愚直に勝負し続けたことだ。


 オスカーのチップは現在10枚。女王のチップは、現在20枚。心配そうに見てくるラルドとナナミの視線を、オスカーはまるっと無視した。

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