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ゲーム嫌いがゲームを始めました  作者: なき
第3章 黄金の国ジョーヌ
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謎解きの迷路Ⅲ

「「「大変申し訳ございませんでした!!」」」


 門兵2人とトトが、地面に額を擦り付ける勢いで土下座する。


 大の男3人の土下座に、金髪の子供はケラケラと声を上げて笑った。AIだという話だが、本物の子供のように表情が豊かだ。


 ノゾムを嵌めたこの子供(AI)を生み出したのは女王ミエル。つまり、ノゾムを連れ去って、何らかの企みをしているのも、女王ミエルということになる。


 それを察したトトたちが土下座するのはとても速かった。まさに電光石火の土下座であった。


 門兵の1人は言う。


「ま、まさか、女王陛下が帰還なさっているとは気付かず……この門を通った形跡も、ございませんでしたし」

「……抜け道の1つや2つ、作っていたんだろうな」


 王や、王族に連なる者しか知らない抜け道というのは、物語の中にもよく登場するものだ。


 城を図書館に作り変えたという、ムタルドの『迷宮図書館』も抜け道だらけだったし。


 もう1人の門兵は、何故かトトを睨んでいる。


「あの方をカジノに留めておくのはお前の役目だろ!? なんで逃げられてんだよ!」

「そんなことを言われても……そもそもなんで俺が、そんな役目をやらなきゃいけないんだよ?」

「この鈍感!」


 自分によく似た子供(AI)を生み出し、さらに『パパ』と呼ばせているのに、トトは女王の気持ちに気付かずにいるらしい。


 ぎゃあぎゃあと騒ぐ彼らを見て、オスカーはわざとらしく大きなため息をついた。


「それで? 俺たちの仲間は、牢から出してもらえるのか?」

「もちろんです!!」


「すぐに連れてきます!」と言って、門兵の1人は駆け足で王宮に入っていった。


 とりあえず、ノゾムとは無事に合流できそうだ。


「女王様、何の用があってノゾムを連れてったんだろうな?」


 ラルドが首をひねって訊いてくる。

 オスカーは「さあな」と肩をすくめた。


「どんな人なのかは知らないが、なかなかクセの強い人みたいだな」

「すっごく綺麗な人なのよ。女王様ってよりは、女神様って感じで」

「ふーん?」


 ナナミが恍惚とした表情を浮かべる理由は、オスカーにはさっぱりだ。どれだけ綺麗な人なのか、気にならないといえば嘘になるが、正直あまり関わらないほうがいいような気もしている。


 門兵の残ったほうとトトは、未だに土下座を続けている。子供はトトの背中に乗っかって、ニコニコだ。


 バタバタとけたたましい足音と共に、ノゾムを連れて来ると言っていたはずの門兵が1人で慌てて戻ってきた。


「た、た、大変だぁ!!」





 王宮の地下にある牢獄は、もぬけの殻だった。

 ノゾムも、ノゾムの他にいたはずの犯罪者たちも、みんな姿を消している。


 オスカーに突然ドロップキックをかまして兵士に連れ去られてしまったはずのエレンの姿も、どこにもない。


「これは、いったい……!?」

「探せ! 草の根分けてでも探し出せ!!」


 慌ただしく動き出す兵士たち。

 ミエルが犯罪者たちを街へ放ったのだとしたら、大問題だ。


 冤罪で捕まったノゾムや、軽い『おしおき』として捕まったエレンと違って、中にはPK(殺し)をして捕まった奴もいる。


 オスカーは眉間にしわを刻んだ。ラルドとナナミは、右往左往する兵士たちを呆然と見ている。


 そのそばには、あいも変わらずニコニコした子供の姿があった。




 ***




 まずはウサギを対岸へ運び、降ろす。


 いったん舟を元の岸に戻して、キツネ(ニンジンでもいい)を載せて対岸へ渡る。


 キツネとウサギを入れ替えて、ウサギを舟に載せたまま、元の岸へ戻る。


 ウサギを残してニンジンを運ぶ。


 最後にウサギを迎えに行く。



「できた……!」


 すべてを対岸へ動かした瞬間、閉ざされていた扉が「どうぞお通りください」とばかりに開かれた。


 扉の向こうは、またしても迷路だ。


 ノゾムはミエルが用意した『いくつかのクイズ』を1つ解いただけ。それも、ごくごく初歩的な、簡単なクイズを解いただけだ。


 それでも。


「自力で解けたぁぁぁぁッ!!!」


 この国で出されたクイズの多くはオスカーやジャックが解いていたので、ノゾムが自らの力で解いたのは、これが初めてのことである。


 喜んでいる場合でないのは分かっている。ミエルの企みだって、底知れない。


 それでも。


 ノゾムは小さな達成感に、拳を握らずにはいられなかった。

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