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ゲーム嫌いがゲームを始めました  作者: なき
第3章 黄金の国ジョーヌ
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謎解きの迷路

 ふと気が付くと、ノゾムは高い壁に囲まれた見覚えのない場所に立っていた。


 壁に挟まれた通路の向こうには、これまた天高くそびえる壁がある。どこからともなく聞こえてくるアナウンスによれば、ここは迷路の中らしい。


 外に出たければ、迷路を攻略するしかない。


 というか、アナウンスの中で、ノゾムはルール違反の犯罪者扱いされた。

 さらに聞き間違いでなければ、アナウンスの主はこの国の女王、ミエルだ。


「んんんんん???」


 どこから疑問を持てばいいのか。何からツッコミを入れたらいいのか。周りに人はいないし、ノゾムの頭の中は疑問符で埋め尽くされている。


 そもそも、何故こんなことになってしまったのか。


 ノゾムは混乱する頭を叱咤して、こうなる前……迷路に入る前のことを、頑張って思い出した。





 朝焼けがきれいだなぁ、なんて思いながら首都へ戻ってきたのは、ほんの少し前のこと。飛行船の発着場に行ってみたら、次に船が出るのは30分くらい先だという。


 発着場の向こうには、夜には見えなかった隣国『ヴェール』がその広大な姿を見せている。

 相変わらず謎の塔やらモアイ像やら、統一感のない不思議な建造物が乱立している、謎の国だ。


「30分か……けっこうあるな〜。どっかで時間潰すか?」

「そうねぇ」


 ぼうっと待つには長いし、かといって、首都を観光するには30分では短すぎる。

 回復アイテムの補充なども済ませてしまったし、特にやるべきこともない。


 さてどうしよう、と発着場の前で集まって話している最中だった。

 ノゾムの背中に、軽い衝撃があった。


「ん?」


 なんだろう、と思って振り返ると、そこには尻もちをつく子供の姿。

 金色の髪に、白いシャツとサスペンダーに留められた短いズボンは、どこかで見覚えがある気がする。


 けれどもそんな疑問はいったん脇に置いておいて、ノゾムは子供に近寄った。


「大丈夫?」


 手を差し伸べた次の瞬間、


「突き飛ばされたーーーーッ!!」


 子供はノゾムを指差して叫んだ。ギャン泣きである。固まるノゾムには周囲からの冷たい視線が突き刺さる。

 ラルドたちはといえば、彼らも突然のことに目を丸めて動きを止めていた。


 そして兵士たちがやって来て……そして……





「…………」


 記憶を掘り起こしたノゾムは頭を抱えた。

 いったい、何がどうしてこうなった。


(あの子供……どこかで見た気がすると思ったら、『迷宮図書館』にいた三つ子の1人だ……)


 どうしてあの子が図書館から遠く離れた首都にいたのかというのは、今はどうでもいい。

 問題は、あの子がどうして、ノゾムを嵌めたのかということだ。


 脳裏に思い浮かぶのは、にんまりと笑みを浮かべる女王ミエル。

 ノゾムの額には青筋が浮かんだ。


「カジノでも思ったけど、あの人、絶対に親父だよな……。『面白そうだから』とかいうふざけた理由で人を面倒事に巻き込むようなやつ、親父以外にいるわけないよな……。殴りたいな……。アバターは女の人だけど、中身がオッサンなら、殴ってもいいよな……?」


 ノゾムの頭の中では、ミエル=父親だという説が固まってしまっている。

 こんなことをしでかすのは父親以外にいるわけがないと思っているし、ミエルの笑い方が、どことなく父親に似ているからというのもある。


 ノゾムは静かに深く息を吐き出し、ひとまず怒りを押し殺した。


「迷路……って言ってたな。とにかくここから出ないと……。モンスターが出たりとかは、しないよな?」


 1人でこんな場所にいるのは不安である。ということで、ノゾムはまず、相棒を呼び出すことにした。


 アイテムボックスの一覧を開くと、そこにはロウの名前がある。


「出ておいで、ロウ!」


 ノゾムはボックスの中からロウを取り出そうとした。が、


「……?」


 出てこない。


 何度もロウの名前をタップするが、何度やっても出てこない。ヒッポスベックも試してみるが、やはり出ない。


「何これ!?」


 アイテムボックスに入っている他の道具も試してみる。何も出ない。木の矢も、回復アイテムも。その他のアイテムも。


 どうして、とノゾムはぐるぐると考えて、やがてハッと思い至った。


「そっか。『転送陣』を使って逃げられたりしたら困るから、アイテムは使用不可になってるのか」


 テイムモンスターも広義の意味ではアイテム扱いされているらしい。


 なるほどーと頷いて、ノゾムは壁を殴りつけた。


「あんのクソ親父ッ!!」


 どうやら自力で攻略する以外に道はないようである。ノゾムは心底から父親を呪った。


 アイテムボックスの中のものは出せないが、いちおう、背中の矢筒の中にまだ何本か矢は入っている。


 モンスターが出てきたら、これでなんとかするしかない。


「スキルは使えるのかな?」


 『罠作成』を試してみる。落とし穴も、ワイヤーも、問題なく使えた。

 念のためにワイヤーを張りながら進んでいくことにする。


「……そういえばワイヤーって、無尽蔵に出せるのかな?」


 試したことがないので分からないが、他に使えそうな手もない。ワイヤーを張っておけば『ここは通った』という目印にもなるし、とりあえず出せるだけ出しておこうと、ノゾムは思った。


 角を曲がったらモンスターがいるかも、という不安を抱えながら、ゆっくりと慎重に、壁に囲まれた通路を進んでいく。


 何度も行き止まりに遭いながらも、なんとか迷路を進んでいたノゾムは、間もなくして『そこ』に到着した。


「でかい扉だなぁ」


 重たい金属(鉄か鋼か)で作られた、見るからに頑丈そうな大扉が、ノゾムの行く手を阻んだ。


 扉には、その重苦しい見た目にそぐわない、愛らしい絵が描かれている。


 中央を縦に分断する川と、川に1艘だけ浮かぶ舟。

 右の川岸には村人風の男と、キツネ、ウサギ、ニンジンがたくさん入ったカゴが描かれていて、その下にはこんな文章が書かれてあった。


『村人は川を渡りたいのですが、小さな舟には荷物はひとつだけしか乗りません。

 村人が見ていないと、キツネはウサギを食べ、ウサギはニンジンを食べてしまいます。

 すべてを無事に対岸へと運ぶために、あなたの知恵を貸しましょう』

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