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ゲーム嫌いがゲームを始めました  作者: なき
第3章 黄金の国ジョーヌ
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砂漠のカジノⅣ

 ある程度のお金を稼いだところで、ノゾムたちはジャスマンのカジノへ戻った。ミエルはいなくなっていたが、彼女のことでブツクサと文句を言っている人はたくさんいた。

 ノゾムたちが軍資金集めのために出た後も、ミエルは大胆に荒稼ぎしていたようだった。


 中にはカジノを運営する者たちがイカサマに協力していたのではないかと邪推する人もいて、ディーラーに悪態をついている人の姿もちらほらあった。


「まあ、ディーラーが協力してると思われても、仕方ないよな」

「それくらい勝ちすぎていましたからね」

「だから、証拠はないでしょう?」


 何度言わせるのよ、とナナミは呆れた顔で呟く。

 確かに証拠はない。ディーラーが意図的にルーレットを止められるような仕組みがないことも、すでに確認されていた。


「あの人のステータスが『幸運』に(かたよ)っているのかもしれないわ」


 ステータスには、『幸運(LUC)』という値がある。

 これが高いと、めちゃくちゃ低いモンスターのアイテムドロップ率が少しだけ上がる。


 バトルアリーナで優勝したヴィルヘルムは『物理防御力』に偏った育て方をしていたので、それの『幸運』バージョンだと思えば――カジノの勝敗が『幸運』に依存するのかは分からないけれど――納得できないこともない、かもしれない。


「でも、どうやったら『幸運』を伸ばせるの?」


 戦士でレベルを上げると、物理攻撃力と物理防御力が上がる。

 魔道士でレベルを上げると、魔法攻撃力と魔法防御力が上がる。


 ステータスのどの値が伸びるのかは、レベルが上がった時にどの職業に就いているかで決まっていて、ヴィルヘルムの場合は【騎士】でレベルを上げていたんじゃないかとジャックは推測していた。


 ちなみに【狩人】は、ステータスは満遍(まんべん)なく均等に伸びる。

 ノゾムはずっと狩人でレベルを上げていたため、特別低い値もなければ、特別高い値もない。器用貧乏ここに極まりといった感じだ。

 弓の攻撃力が高いからなんとかやっていけてるが、武器が弓じゃなかったら、きっととんでもなく役立たずだったんじゃないかと思う。


 【忍者】に転職したので、今後は『素早さ』が上がっていくだろうと――これもジャックの言である。



「『幸運』を上げるなら、やっぱり【ギャンブラー】じゃないかな」



 ノゾムの疑問に答えてくれたのも、やっぱりジャックだった。

 図書館で職業図鑑を読み込んだ彼の知識は、もともと多かったものがさらに多くなっている。


 ナナミの顔がパァッと明るくなった。


「【ギャンブラー】!! そんな職業まであるのね。転職条件は?」

「んー…………ナナミには無理だな」

「なんでよ!」

「条件が難しいんですか?」


 テイマーの『愛』とか、学者の『グリモワールを探す』だとかのように、達成する方法がよく分からなかったりするパターンだろうか。


 小首をかしげるノゾムに、ジャックは首を横に振った。


「転職条件はすげぇシンプルだよ。でも、達成させるのはかなり難しい。ナナミには絶対に無理だろうな」

「決めつけないでよ!」

「決めつけるさ。だってお前、いまだに1コインも稼げてねぇじゃん」

「うぐっ……」

「コイン? ……決まった枚数のコインを稼ぐことが条件なんですか?」


 【料理人】や【釣り人】と同じパターンだろうか。


 【料理人】はレシピを10種類以上集めること、【釣り人】は魚を50匹以上釣り上げることが転職の条件である。


 ジャックは難しい表情をしたまま、再び首を振った。


「こいつは一度でも達成すれば大丈夫だ。運がめちゃくちゃいい奴なら、たぶん、1回で達成する」

「……?」

「【ギャンブラー】の転職条件は、『ジャックポットを出すこと』だ」

「じゃっくぽっと??」


 なんだそれ、とノゾムは目を瞬かせる。

 ジャックは丁寧に説明してくれた。


 『ジャックポット』というのは、カジノにおいて掛け金が一気に何百倍にもなるような『大当たり』を意味する言葉らしい。


 何を『ジャックポット』とするかはカジノによって異なっているそうだが、スロットで『7』を揃えたり、ポーカーでもっとも強い『役』を作ったりすると『ジャックポット』になることが多いらしい。


「あとはあれだな。ルーレット! 数字盤の上のところに矢印があるだろ? 選んだ数字のところにボールが入った状態(・・・・・・・・・)であの矢印のところに止まると『ジャックポット』になる……っていうゲームが、昔あった」

「ボールが入った状態で……? そんな奇跡みたいなことが起こり得るんですか?」

「うん。本当に奇跡みたいな確率だよな。それを達成しなきゃいけないクエストがあってさ……宿屋とカジノを、いったい何十回往復したことか……」


 当時のことを思い出したのか、ジャックはげんなりした顔をする。なんで宿屋とカジノを往復しなければならないのか、ノゾムには分からない。


 いわく、そのゲームには『ジャックポット』が出やすい状態かどうかを教えてくれるバニーガールがいたそうだ。

 出る確率が高い状態にするには、何度もゲームの中の日付を跨ぐ必要があったらしい。

 だからこそのカジノと宿屋の往復マラソンだったということだ。


「まあ、この『アルカンシエル』の中じゃあ宿屋で寝て起きても日付が変わるわけじゃない。時間が経過するスピードは現実世界と同じだからな。そもそも、ここにそのバニーガールみたいな奴がいるかどうかも分かんねぇし……矢印があるってことは、ここのルーレットでも『ジャックポット』はあるのかなぁ」


 出やすいかどうか分からない以上、『ジャックポット』が出るかどうかはプレイヤーの運に完全に任されている可能性がある。

 そしてその場合、もともと運の悪いナナミには望み薄だということだ。


「だからナナミ、【ギャンブラー】は諦めろ」

「スロットならいけるんじゃない?」

「なんでだよ。スロット舐めんな」


 ナナミはジャックの忠告を聞いちゃいない。『ジャックポット』を出すために、スロットマシンが並んでいる区画へと向かっていった。

 ジャックはため息をついてナナミについて行く。……ナナミの隣のマシンに座って、スロットを回し始めた。


「お前もやるのかよ」


 ラルドが思わずといった様子でツッコミを入れる。


「【ギャンブラー】は俺も習得したんだよ。条件が難しい分、面白いスキルが身につくんだ」

「あっそ。それじゃあ、こっちはこっちでまた好きに遊んどくわ」


 リオンはといえば、とっくに好きなように遊んでいた。ホールの端にあるバーカウンターのところで、女の子2人をナンパして、カードゲームに興じている。


「ラルドは何するの? また『ブラックジャック』?」

「んー。次はやったことないのをやりたいな。『バカラ』とか、名前は聞いたことあるけど、やり方知らねぇんだよなぁ」


 どうやらラルドは未知のゲームに挑むつもりらしい。

 『バカラ』とやらについては、ノゾムは名前さえ初めて聞いたのだが、なんとなく面白そうなのでラルドについて行くことにした。


 そうして、おのおの好きなように過ごすことおよそ30分――。



「人の女に手ェ出して、タダで済むと思ってねェだろうな!!?」

「ひええええええええっ!!?」



 気がつくとリオンが問題を起こしていた。

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