表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゲーム嫌いがゲームを始めました  作者: なき
第3章 黄金の国ジョーヌ
133/291

次なる目的地は砂漠のカジノ

 オスカー兄が仲間になった。


「改めまして、オスカーです! オレなんかを受け入れてくれた君たちの役に立てるように、がんばります!」


 先ほどまでの陰鬱な雰囲気が嘘のように、オスカー兄は明るい声で宣言する。

 ラルドはそれを聞いて首をかしげた。


「役に立つって言っても、お前、戦えないんだろ?」

「うん。モンスターが出たら、そっこーで逃げちゃうよ」

「自信満々に言うなよ……」


 堂々と戦わない宣言をするオスカー兄。それでどうやって役に立つというのか。

 もしかして、戦闘では役に立たずとも、他に役に立てそうな才能を持っているのだろうか?


 訝しげな顔をするノゾムたちに、オスカー兄は自信満々に「我が弟に抜かりはないのさ」と言った。なぜに弟。


「弟から、万が一、いや億に一の可能性で君たちの仲間になれた時に、役に立てる方法を教えてもらっている」

「へえ、どんな?」

「モンスターが出たらまず『しらべる』。そのあとはひたすらに『踊って』おけ、って」


 そういえばオスカーは【踊り子】のスキルを習得していた。

 確かに後ろで踊っているだけなら、モンスターに近付く必要はないし、味方のステータスを上昇させることで役にも立つ。

 まさに一石二鳥というやつだ。


「オレはダンスは得意なんだ。任せろ!」

「うーん。さすがはオスカー……と言いたいところだけど、オスカーと同じ顔でキレのあるダンスをされたら、笑わずにいられる自信がないな……」


 ははは、と乾いた笑い声を上げるジャック。まったくもって同感である。同じ顔なのは、アバターが一緒だから仕方がないけれど。


 果たしてオスカー兄はどんなダンスを披露してくれるのか。

 ラルドのような変な踊りだったら、思わずぶっ叩いてしまうかもしれない。


「というか、中身が別人なのに、両方とも『オスカー』と呼ぶのは違和感があるな」

「そうですね」


 ノゾムたちにとって、『オスカー』は弟のほうである。

 オスカー兄は目をしばたかせて、「それなら」と自分を指差した。


「オレのことは『リオン』って呼んでくれ。オスカーっていうのは、もともと弟が付けた名前だしさ」


 まあそんなわけで、リオンを仲間に加えたノゾムたちは、図書館を旅立つことになった。次なる目的地は、砂漠のカジノだ。

 と言っても、カジノがどこにあるのかは見当もつかない。この国には地図がない。なので、まずはNPCにカジノの場所を教えてもらう必要があった。




 ***




「子供が井戸に落ちてしまった。井戸の高さは30メートルある。

 子供は1時間に3メートル登るが、その直後に2メートルずり落ちてしまう。

 子供が井戸から脱出するには、果たして何時間かかるだろう?」


 魔法具の店主から出された問題に、ノゾムたちはさっそく頭を悩ませた。


 今まではオスカーがすぐに解いてくれたが、今回はオスカーが不在だ。

 オスカーの兄リオンは謎解きにはまったく興味がないらしく、得意なわけでもないとのこと。

 今回は自分たちで解かねばならない。


「1時間に3メートル登って、2メートル落ちるってことは、つまり1時間に1メートルしか進んでいないってこと?」

「じゃあ、30メートルの高さの井戸だから……答えは30時間かな?」

「ブーッ!」


 店主は両手でバッテンを作った。

 残念ながら、『30時間』というのは間違いらしい。


「というか、子供が30メートルも自力で登れるわけないでしょ。さっさと助けなさいよ」

「女神の言うとおりだな!」

「いや、それだとクイズにならないから……」


 実際に子供が井戸に落ちてしまったら、ナナミの言うとおり真っ先に大人が助けるべきだと思う。

 だがこれは謎解き。クイズなのだ。

 リアリティーを持ち出してしまうと、問題自体が破綻する。


「1時間で3メートル登って、すぐ2メートル落ちる……。この辺が引っ掛けっぽいな」


 ジャックはウンウン悩みながら、小石を使って、地面に図を描いた。

 30メートルの高さの井戸。子供は1時間に3メートル登り、すぐに2メートル落ちる。

 3メートル登り、2メートル落ちる。


「27時間経った時点で、子供は井戸の底から27メートルのところにいる……。そこから1時間かけて3メートル……ああ、分かった! 答えは28時間だ!」


 1時間かけて3メートルを登った時点で、子供は30メートル地点に到達している。つまり、井戸から脱出している。

 なので、子供が井戸から脱出するための必要な時間は、『28時間』だ。


「んんん〜〜〜正解!! お兄さん、頭いいねえ!」

「いやぁ、それほどでも〜」


 ジャックはてれてれする。

 店主は「それではルールに従い、お前たちの質問に答えよう」と言った。


「カジノがある『ジャスマン』という街は、ここから東、山を迂回した先にある。大きな建物がたくさんあって、夜でも明るいから、行けばすぐに分かるはずだ。道中にはモンスターも出るから、十分に準備をして行くといいぞ!」


 モンスター、と聞いてリオンが「ヒエッ」と声を上げたが、ノゾムたちは無視して、店主に礼を言い、忠告どおりに回復アイテムなどの準備を入念にしてから出立することにした。


 ちなみに『ジャスマン』というのもフランス語の色の名前で、『ジャスミン』のことだ。


 ジャスミンの花のように、淡く柔らかな黄色である。

 オスカー兄、本名は藤堂理央。

(理央→りお→リオン)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ