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ゲーム嫌いがゲームを始めました  作者: なき
第3章 黄金の国ジョーヌ
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迷宮図書館Ⅱ

「ここは……食堂か?」


 オスカーたちは、木製のテーブルがいくつも並ぶ、だだっ広い部屋に到着した。壁際にはこれまたたくさんの本棚が並んでいて、本がたくさん詰まっている。


 部屋の奥にあるもう一つの扉を開けてみれば、大きな石窯のあるキッチンがあった。


「使用人用の大食堂ってところかな。偉い人が使うにしては、ずいぶんと質素だし」

「ここにあるのは料理の本ばっかだな」


 ラルドが本棚を眺めながら言う。確かに、棚に詰め込まれているのは世界中の料理に関連する本ばかりだ。


 食堂だからだろうか?


 ジャンルは、部屋によって分けられているのかもしれない。


 オスカーは口元に手を当てて考えた。


(大広間にあったのは児童書だったな……。もしかして、これがヒントになるのか? いやでも、『グリモワール』は発見されると保管場所が変わってしまうという話だったし……)


 そもそもグリモワールをジャンル分けすると、何になるだろう?


 『グリモワール』は『魔導書』という意味だ。


「食堂やキッチンといえば、ゲームじゃ王様の部屋とつながっていたりもするよな」


 ジャックがふと思い出したように呟く。

 ラルドが大きく頷いた。


「おう。王様が夜な夜なこっそりつまみ食いしてたりしてな」

「つまみ食い用じゃなくて、いざという時の逃走用の通路だろうけどな……」


 隠し通路というものは、だいたいが有事に備えて存在している。


 王様とか偉い人たちが逃走するためだったり、敵に侵入された時に先回りして敵を挟み撃ちにしたり。


「ここには食材を運び入れるための扉があるし……隠し通路がないか、調べてみよう」

「おう!」


 そんなわけで、オスカーたちは手分けをして、キッチンと食堂を捜索することにした。




 ***




 城の部屋の多さは、住み込みで働いていた使用人が多かったことを表している。


 人数が多ければ、作る料理の量ももちろん多いわけで。その分、キッチンも食堂も、なかなかの広さがあった。


「キッチンには本がないんだな」

「本に、湿気と火気は厳禁だからな」


 食器棚の後ろ、地下のワインセラー、食料庫など、いかにも怪しげなところを調べていく。


 石窯なんて大きすぎて、大人でも余裕で入れそうだ。こういう場所にこそ、隠し通路は存在していそうだけど……。


 オスカーはそんなことを思いながら石窯の中を覗き込んだ。


 3対の目(・・・・)がそこにあった。




「うわああああああああああああっ!!?」




 オスカーは派手にひっくり返る。


 離れたところを調べていたジャックとラルドは、その悲鳴を聞いてギョッとした。


「どうした、オスカーくん!?」

「魔物か!? ユーレイか!?」

「幽霊なんかいてたまるか!!」

「いるかもしれないじゃん、ゲームの中なんだし!」


 石窯の中の影が、もぞもぞと動く。固唾を飲む3人の目の前に姿を現したのは、黄色の髪、黄色の目を持った、まったく同じ顔をした3人の子供たちだった。


 オスカーたちは拍子抜けした。


「三つ子……か?」

「三つ子じゃないよ!」

「三つ子だよ!」

「コイツらとは赤の他人さ!」

「どっちだよ」


 よく分からない返事をする子供たちに、ラルドが思わずといった様子でツッコミを入れる。


 オスカーは眉をひそめ、子供たちと石窯を交互に見た。


「こんなところから出てくるなんて……この中はどこかに繋がっているのか?」

「どこにも繋がってないよ!」

「隠し通路があるよ!」

(すす)だらけになるだけさ!」

「どっちだよ」


 再びバラバラな返事をする3人に、ラルドはまたツッコミを入れる。


「煤だらけに、ねぇ……」


 ジャックはジロジロと子供たちを見た。石窯から出てきた子供たちは、とても綺麗な身なりをしている。


 同じ形の白いシャツ、紺色のベスト、それに灰色の短パン。

 良い所のお坊ちゃん、といった恰好だ。


 子供たちは「ふふふっ」と楽しそうに微笑んで、キッチンから出ていった。


「なんなんだ、あいつら」


 ラルドは頭上に疑問符を浮かべた。

 ジャックはにやりと口角を上げる。


「少なくとも、『煤だらけ』は嘘だな」

「ああ。石窯から出てきたあいつら自身が、汚れていなかったからな」


 オスカーは改めて石窯の中へ入る。

 窯の中は、綺麗に掃除されてあって、埃ひとつ落ちていない。


 そして、


梯子(はしご)がある」


 窯の側面には、鉄で出来た梯子が取り付けられていた。

 上のほうへ続いている。


「よし、行ってみよう」

「それにしてもオリバー、すげぇ悲鳴だったな」

「オスカーだ」

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