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9 ……ねえ、手をつなごうよ。

 ……ねえ、手をつなごうよ。


「こんにちは」

 萌がそう言って、学校終わりの放課後の時間にオカルト研究会の部室のドアを開けると、部屋の中には萌の知っている三人の郡山第三東高等学校の生徒がいた。

 それはオカルト研究会部長の朝日奈勝くんと、オカルト研究会の部員で、みんなの一つ年下の唯一の二年生、野田葉摘。そして萌の親友の真中硯の三人だった。

「あれ? 萌。帰ったんじゃないの?」

 驚いた顔をして硯が言う。

 硯は今日も、手元で、ロゼッタストーンの模型をいじりながら、時間を潰していたようだった。

「うん。最初はそうしようと思ったんだけど、……せっかくだから、部活、出てみようと思って」と萌は言った。

「え? 本当?」朝日奈くんが言う。

「早川さん。本当に名前だけじゃなくて、オカ研の部活にもちゃんと参加してくれるの?」

「……はい。全部ってわけにはいかないと思うけど、少しくらいは」と萌は言う。

「やった! これで本当に人数が増えて部活動が捗るよ! なんかさ、早川さんと新谷くんが入部してくれてさ、なんていうか、『流れ』っていうのかな、そういうものが『いい方向に向いてきた』と思うんだよね。我がオカルト研究会も」

 にこにこ笑いながら朝日奈くんが言う。

「流れって、なによ。流れって?」硯が言う。

「そりゃ、運命とか、運勢とか、そういうものの、いい流れだよ」と硯を見て朝日奈くんが言う。

「気にしないでください。早川先輩。朝日奈先輩は、そういうオカルト的な考えかたが大好きな人なんです」今日も、ずっと文庫本を読んでいる葉摘が顔をあげて萌に言った。

「オカルト的って、占いとか、超能力とか、風水とか、そういうこと?」

「そう。そういうこと」朝日奈くんが萌に言った。

 萌はドアの前にある空いているスペースに、パイプ椅子を持ってきてそこに座った。みんなが座っている位置は、前回と一緒で、部屋の一番奥にある窓の前の席に朝日奈くん、そこから左回りに、葉摘、萌、硯の順で、座っている。

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