表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
76/84

76 エピローグ 早川神社にて あなたのこと。……私のこと。

 エピローグ


 早川神社にて


 あなたのこと。……私のこと。


 萌が地元の大学の大学生になって、二度目の春がやってきた。このとき、早川萌は二十歳になっていた。

 友人たちに囲まれ、いつも笑顔で大学に通いながら、早川神社の巫女を勤めて、と萌は大方、充実した(満足のできる)幸せな大学生活を送っていた。

「はぁー」

 でも、広い早川神社の境内にある、小高い山にある坂道を上って、赤い大鳥居をくぐって、長い石段を上った先にある、緑色の気持ちの良い新鮮な葉を讃えるたくさんの立派な木々に囲まれている早川神社の本殿にまで続く石畳の通路の上を竹ぼうきで掃き掃除をしながら、赤と白の巫女服姿の早川萌は、そんな重い溜息をさっきからなんどもついていた。

 その溜息にはきちんとした理由があった。

 それは二十歳になった萌の最大の悩みでもあった。

 その悩みとは、周りの友達たちに(その友達たちと自分を比べるつもりはないのだけど、でも、どうしても)みんな素敵な恋人がいて、恋愛成就、(あるいは人と人の縁を結ぶ神様を祀っている)早川神社の巫女である、自分には、今も素敵な恋人がいないこと(つまり自分が独り身であること)だった。


「はぁー」

 そんなことを考えて、萌はまた重い溜息をついた。

 ……せっかくのお休みの日に、こんなことをしていていいのだろうか? (いや、もちろん大切なお勤めなのだけど)

 私にはもっと、美しく花咲く二十歳の健全な女性として、もっとほかに(神社の境内の掃除をする以外に)やることがあるのではないか、とそんなことを早川萌は思っていたのだった。

 ……不謹慎にも。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ