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 とりあえず萌は新谷くんの謝罪については、もう怒っていない。(というか自分も悪かった)と新谷くんに伝えてから、これまでのことについて、自分が新谷くんに謝る経緯を説明したあとで、萌は新谷くんに頭を下げて謝った。

 萌の謝罪の言葉を聞いて、新谷くんはいつものように笑って、「そんなの別に構わないよ。怒ってもいないからね」と萌に言った。

「本当ですか?」顔をあげて萌が言う。

「本当だよ」新谷くんが言う。

「僕も楽しかったし、いい受験勉強の気晴らしにもなったし、……それに、なによりも早川さんが本当に楽しそうに笑ってくれたから、それで満足だよ」と新谷くんは萌に言った。

 萌はその新谷くんの言葉に頬を赤らめてから、「ありがとう」とにっこりと笑って新谷くんにいい、それから萌はいつもの自分の席に座った。


 萌はそこからもう一度、オカルト研究会のおかしなものが置いてある部室の中をぐるりと眺めてみた。

 相変わらずおかしなものばかりが置かれている。いろんな懐かしいものがある。でも引越しの時期を前にして(そろそろこの旧校舎は取り壊されてしまうのだ)ある程度のものは、すでにダンボール箱の中に移し替えてあった。

 棚の中に置いてあるものは、タロットカード。風水の本。星占いの本。超能力の本。SF小説。幽霊。神話。民族学の本。異国のシャーマンの本や、日本の新道の巫女の本。

 テーブルの上の水晶玉や悪霊退散のお札や、異国の人形や、変な形をした石(今もうとあれはきっとパワーストーンだったのだろう)は、ダンボール箱の中にしまわれてしまったのだけど、それからの本は今もまだ、オカルト研究会の部室の棚の中に残されたままだった。

 懐かしいな。本当に懐かしい。

 萌は思う。

 できれば、UFOの実験や幽霊探しだけではなくて、もっといろんな活動がしたかった。森の中のお社で幽霊を探したり、地震を封じているという要石のことを調べたり、地元の神話の研究をしたり、それにクトゥルフ神話TRPGをしたりして、遊んでもよかったかもしれない。(雑誌『ムー』も、読んでみたい)


 でも、それらの活動は私たちの後輩に任せればいいのだ。

 だって、このオカルト研究会は来年も、……この旧校舎が取り壊されてしまったあとになっても、きちんとこれからも、郡山第三東高等学校の正式な部活動として、受け継がれていくのだから。

 ……私たちの、楽しかったこの一年間の思い出と一緒に。

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