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それから萌たちは、おしゃべりをしながらUFOを呼ぶ実験の反省会(という名前の食事会)を楽しんだ。(鈴谷先生も朝日奈くんと葉摘の間あたりに移動して、皆と一緒にお弁当を食べた)
それは、信じられないくらいに楽しい時間だった。
みんなとそこで話した内容は、あんまり覚えていない。(それはあまり重要なことではない)
ただ、すごく楽しかったという確かな思いが萌の中には残った。
きっとみんなの中にも、それは残っているのだと、思う。
それがとても大切なことで、それだけで、あとはほかにはなんにもいらないのだと、みんなと一緒に笑いながら萌は思った。
……そうして、楽しかった反省会(という名前の食事会)の時間はあっという間に過ぎて、空っぽになったお弁当箱とお茶のペットボトルの片付けをして、最後に部室の簡単な掃除をして、銀色のグレイのキーフォルダーがくっついている部室の鍵で、朝日奈くんが鍵をかけて、「お世話になりました」とその部室にお礼を言って(まだもう少しお世話にはなるのだけど)みんなはオカルト研究会の部室の前をあとにした。
そのころには、時刻は夕方になり、世界はだんだんと、オレンジ色をした綺麗な夕日の色に染まり始めていた。
「野田さん。来年は一人になっちゃうね」
郡山第三東高等学校の夕焼けに染まった校庭の横を歩いているときに、隣を歩いていた葉摘に萌は言った。
「そうですね。このままだと来年は今度こそ、オカルト研究会は廃部になってしまいますね」と葉摘は言った。
「でも、オカルトって言うコンテンツは、今はみんなにあんまり人気ないですし、それに、これはオカルト研究会だけの話ではないですけど、私たちの先輩たちが伝統を残してきた古い校舎も、こうして来年には取り壊されてしまいますし、……案外いい機会なのかもしれません」
葉摘は取り壊しが決まっているさっきまで自分たちが楽しくおしゃべりをしていたオカルト研究会の部室がある(そして、今、学問を学んでいる萌やみんなの、それぞれの教室がある)旧(現)校舎を見る。
萌も同じようにそのおんぼろな校舎を見た。
老朽化や、地震対策など、いろんな防災的な理由から、それはしかたのないことなのだけど、それでもやっぱり、自分たちのよく知っている校舎が(よく知っている風景が)なくなってしまう、ということはとても悲しいことだと萌は思った。
……新谷くんの言う通りだな、と萌は思って新谷くんの姿を見た。
新谷くんは萌と葉摘の少し前を、硯と並んで、二人で話をしながら歩いていた。(そのさらに前には、朝日奈くんと鈴谷先生がいる)
「じゃあ、みんな、気をつけて帰ってね」
「はい。おつかれさまでした」
職員室の前あたりで、みんなは鈴谷先生にそう言った。「みんな、さよなら」「はい。鈴谷先生。さようなら」そう言って、鈴谷先生はみんなに手を振って、校舎の中に移動をした。
鈴谷先生にお別れの挨拶をした萌たちは、それからみんなで一緒に郡山第三東高等学校の校門を出て、それから、みんなで「さよなら」をして、それぞれの家路についた。




