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「知っています」と萌は答える。

「あなたは『新谷翔』くん。『あの人じゃない』。もちろん、それは私にもわかっています」にっこりと笑って萌入った。

 萌は、自分の夢にちゃんと決着をつけてから、この場所に立っていた。

 萌は前に進むことを選んだ。

 彼女は、大人になったのだ。


「なら、いいよ」そう言って新谷くんはにっこりと笑った。

 そして郡山第三東高等学校オカルト研究会による、UFOを呼ぶための実験が、もう一度、今度は自分たちの通う学校の屋上で行われた。

 その実験は、……まあ、わかっていた通り、失敗に終わった。

 何度呼んでも(UFOを呼ぶ本に書いてある通り、一字一句、間違えなく読んでも)UFOは萌たちオカルト研究会の前にはあわられてはくれなかった。

 でも、萌は満足だった。

(萌だけではなくて、みんなもすっごく満足そうな顔をしていた)


 なぜなら萌は、実験を行う前にみんなにそう話したように、ちゃんと、自分の頭の中で、……心の中で、きちんと、あの人と、それからあの人とずっと一緒にいる小学六年生のころで時間が止まってしまったもう一人の私に、いつも泣いてばかりいた小さな女の子に(その女の子は今はちゃんとあの人の隣で、あの人と手をつないで、にっこりと幸せそうな笑顔で笑っていた)さよならを言うことができたからだ。

 ありがとうって、伝えることができたからだ。


 それだけじゃない。

 UFOはもちろん、UFOを呼ぶ本に載っている正式なやりかたをしても、学校の屋上にはやってこなかった。

 実験は失敗した。

 だけど……。

 それは私の一生の思い出になった。

 そしてきっと、みんなにとっても、一生の思い出になったのだと(みんなの満足そうな顔を見て)、早川萌はそう思った。

 だから萌はすごく満足だった。


「じゃあ、UFOを呼ぶ実験はこれくらいにして、一旦部室に戻って反省会をしたいと思います」

 青空のしたで、優しい夏の風が吹く学校の屋上で、UFOを呼ぶ実験が失敗に終わって、それからその実験の後片付けがひと段落したところで、朝日奈くんがみんなに言った。

「反省会という名前の食事会ね」

 とにっこりと笑って硯が言った。

 みんなはにっこりと笑ってから、部長の朝日奈くんの言葉にしたがって、誰もいない郡山第三東高等学校の真っ白な屋上をあとにした。


「萌。なにしているの? 早く行こうよ」

 一人、そんな寂しい風景を名残惜しそうに眺めていた萌に向かって、硯が言った。

「うん」

 萌は言う。

 それから萌は最後に、ぱたん、と静かに屋上のドアを閉めて、みんなと一緒に屋上から出て行った。

 そしてこのあと、オカルト研究会のメンバーは反省会の前に少し、休息の時間(という名前の自由時間)をとることになった。

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