表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
49/84

49 八月の真夏の学校の屋上 さよならの儀式 ねえ、青空を見たいとは、思わないの?

 萌がオカルト研究会のみんなに話した自分の悪い噂の話。

 あの人の交通事故の事件の話。

 あの事故のあとから、自分がずっと悩んでいたこと、夢の中でのあの人のお話。

 その話は本当に初めて誰かに話をする(信じてもらえなかった、という意味なら事故当時の萌の両親ですら知らない話だ)お話だった。萌はその夢の話を本当なら、自分一人の、ううん、あの人との二人だけの秘密にして、お墓の中にまで、ひっそりと持っていくつもりだった。(……冷たい石で作られた小さなお墓の中にまで……)


 鈴谷先生は黄緑色の象さんのじょうろで、観葉植物に水をやっている。(オカルト研究会の部室の中には洗面台があった。水はその蛇口から入れた)

 そんな鈴谷先生に目を向けると、その視線に気がついた鈴谷先生はきらきらと窓から差し込んでくる八月の光は反射している、観葉植物の葉っぱから目を移動させて萌をみると、みんなと同じようににっこりと、パイプ椅子に座っている萌に向かって笑いかけてくれた。


 八月の真夏の学校の屋上 さよならの儀式


 ねえ、青空を見たいとは、思わないの?


 UFOを呼ぶ実験の道具を持って(と言っても、UFOを呼ぶための図形を書くためのチョーク、UFOを呼ぶ本、それと記録用の資料の紙の束だけで、それほどの量じゃないけれど)オカルト研究会のメンバーは鈴谷先生と一緒に郡山第三東高等学校の屋上に移動した。

 天気は晴天で、気持ちの良い八月の夏の風が吹く誰もいない真っ白な屋上は、なんだかすごく居心地の良い場所だった。

「風、気持ちいいね」にっこりと笑って萌が言った。

「うん。気持ちいい」同じようににっこりと笑って、硯が萌にそう言った。

 その笑顔は、早川萌の本当の笑顔だった。

 萌はみんなに自分の悪い噂の話を全部話してから、なんだか不思議なことに、まるで悪い魔法が解けたみたいに、自然と、昔のようにみんなと一緒に笑うことができるようになった。

 萌が自分がまた笑うことができるようになっていると気がついたのは、六月の雨の降る日の、オカルト研究会の部室の中だった。

 萌が最初に自然と笑えるようになっていることに気がついたのは、萌の親友の真中硯だった。

「……萌。もしかして、あなた、ちゃんと笑えてるの?」と驚いた表情で硯は言った。

 その言葉で、萌は自分でも、いつの間にか自分が自然と笑うことができるようになっていることに気がついた。

 それは本当に久しぶりの萌の自然な笑顔だった。それは早川萌の本当に素直な、真実の感情から生まれた、本当の(ずっと忘れていた自分本来の)笑顔だった。

 萌は嬉しくて、あまりの嬉しさから泣きそうになってしまって、「……ちょっと、ごめんなさい」と言って、オカルト研究会の部室を出て女子トイレに向かった。

 その廊下を歩いている移動の途中で、そういえば前回、笑ったときも、場所はこのオカルト研究会の部室の中だった、……と、そんなことを萌はふと思い出して、またにっこりと笑った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ