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「ごめんなさい。……くん」
萌は言った。
でも、あの人は、無言。
それはいつものことだった。あの人はいつも、萌の言葉に声を返してくれない。沈黙。……それは当然のことだ。あの人は怒っているのだ。口も聞きたくないくらいに、萌に対して怒っているのだった。
しばらくして、あの人は、また萌に背中を向けるようにして、世界の向こう側の風景に目を向けてしまった。
すると、萌の瞳から、涙が溢れた。
「ごめんなさい。……本当に、ごめんなさい」
萌は言った。
そこで、萌は夢から目覚めた。
朝、自分のベットの中で目を覚ますと、やっぱり、萌は泣いていた。
「おはようございます」
そう言って、放課後の時間に萌は郡山第三東高等学校オカルト研究会の部室のドアを開いた。するとそこには、いつものオカルト研究会のみんながいた。
部長の朝日奈勝くん。みんなの一個下の唯一の二年生、野田葉摘。萌の親友の真中硯。そして、……あの人によく似ている同級生の男の子。新谷翔くん。
時刻は夕方の四時。
萌は自分の指定席に座って、そして、みんなの顔を順番に見た。「早川さん。今日は、早川さんから、僕たちに話があるってことだけど、……どんな話なのかな?」と朝日奈くんが言った。
「はい。ぜひ、みんなに聞いて欲しい話があるんです」と萌は言った。
みんなには事前に、硯が話をしておいてくれたのか、朝日奈くんも葉摘も、昨日の夜の萌と硯と新谷くんのやり取りのことを、なんとなく知っているようだった。
早川萌は、それから『自分の悪い噂』についての話をオカルト研究会のみんなに話した。
その話を、萌が自分の口から誰かに話をすることは、あの交通事故の事件の日から、約六年がたった現在において本当に初めてのことだった。




