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おそらくは、私の親友、早川萌はその交通事故の事件で死んでしまった私の幼馴染の男の子の死に、なんらかの関係があるのだと思われた。(それは私だけではなくて、みんながそう思っていることだった)
そのことについて萌はとくになんの反論も自分の弁護もしなかった。萌の実家の力なのか、あるいは街の実力者の話し合いでなにかが決まったのか、その男の子の死についての表向きな『いろいろな噂』はすぐに消えてしまったのだけど、みんなの中では、その表の裏側にある『悪い噂』として、その噂は今も、地域のそして私と萌の通う郡山第三東高等学校の中に今も確かに残っていた。(それだけ萌がみんなの注意を引くような、早川神社の巫女という特別な役割を背負った、美しくて綺麗な女の子だったということだ)
男子生徒も、女子生徒も、それから先生たちも、街の人たちも、影では、その萌の悪い噂を聞いていたし、また自らも誰かにその噂を誰かに喋ったりして、ちょっとずつだけど、でも確実に学校、あるいはこの辺りの狭い地域、という小さな世界の中に広めたりしていた。
……私も、真中硯も、その噂を人に喋ってしまったことが、……過去に一度だけあった。そしてそのことは、どうやら萌の耳にまで届いているようだった。私は親友の心を傷つけてしまった。それが言ってみれば私、真中硯自身の罪だった。(私はその罪をきちんと償うつもりでいる)
私はまだ幼くて、幼馴染のあいつが死んでしまったショックもあって、それがどれくらい萌を傷つける行為なのか、あるいは親友を裏切るということはどういうことなのか、なんとなく言葉や意識はしてはいたのだけど、それを確実に守るくらいに、私の魂と精神はまだ、全然成熟なんてしていなかったのだ。
私の心は、罪を犯したことで、すごく傷ついた。(それが罰だ)
それが私の罪と罰。
私は私の罰を受け入れて、そして、その自分の犯した罪をもちろん(あえて、もう一度言うけど)生涯をかけて萌に対して償うつもりでいる。私はもう絶対に、早川萌のことを裏切ったりはしない。親友や友達を裏切らない。それが私、真中硯が生涯の誓いとして立てている人生の掟であり、目標だった。




