31 暗く、真っ暗な夜の中から抜け出して。
暗く、真っ暗な夜の中から抜け出して。
「早川さん。ごめん。門限、もしかしたら間に合わないかも」
お店の外に出ると、朝日奈くんがそう言って、萌に頭を下げて謝った。(萌は事前に自分の門限のことをみんなに伝えていた)
「いえ。時間通りに帰らなかった、私が悪かったんです。朝日奈くんは悪くないですよ」と萌は言った。
「いや、朝日奈くんが悪い」
「はい。朝日奈先輩が悪いです」
「まあ、そうだな。お前が悪い」
と、硯、葉摘、新谷くんがそう言った。そのことについて、朝日奈くんはとくになにも反論をしなかった。(みんな、この際、部長の朝日奈くんに責任を押し付けるつもりのようだった)
「それに、まだ、ぎりぎり間に合いそうですし、大丈夫だと思います。父にも、そう伝えておきます」萌は言った。
「よろしくお願いします」朝日奈くんは言う。
(萌の父親は、この街では、それなりに、かなりの力を持っている人だった。そして、萌本人も早川神社の巫女として、それなりに特殊な立場にいる人間だった)
「本当に、ばかですね」
葉摘はそう言って、朝日奈くんのことを見た。早川のお姫さまに夜遊びを教えてしまったことで、朝日奈くんはひどく反省をしているようだった。(本当は、もっと早くに帰るつもりだったらしい)
それから萌たちは二組に分かれてそれぞれの家に帰ることになった。薺ちゃんが言った通りに、夕焼けの時間を通り過ぎて、もう外はかなり暗くなり始めていた。宵闇の時間だ。
なので、安全のために、萌と硯と新谷くん、それから朝日奈くんと葉摘の二組に別れてそれぞれの家にまで帰ることにしたのだ。二組の組分けはそれぞれの家の方向の関係だったのだけど、新谷くんだけは自分の意思で、萌たちと一緒に帰ることを選択した。そのことについて、誰も文句を言わなかったし、もちろん、萌にも文句はなかった。




