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 時刻は、そろそろ萌の家の門限の時刻に近くなっていた。


「ちょっとトイレに行ってきます」

 もうそろそろ、この楽しい反省会もお開き、と云うところで、萌はそう言って椅子から立ち上がった。

「私も」硯が言う。

 そう言って席をたった硯と一緒に萌はレストランの店内を移動をして、レストランのトイレに向かって移動を始めた。トイレは店の一番奥の場所にあった。萌たちが座っている店の一番奥の場所とは、まったくの正反対の奥の場所だった。

 レジの前を通るときに、萌が環に、トイレのことを聞くと、「あちらです」と環ちゃんが笑顔でそう教えてくれた。時刻が夜に近くなり、お店もだんだん混んできていた。レストランの制服姿の環も、同じ制服を着た、お店の同僚の店員さんたちと一緒に忙しそうに(でも、なんだかとても楽しそうに)仕事をしていた。


「萌さ」

 トイレを出るときに、鏡の前で硯が言った。

「なに?」

 真っ白な(蝶の模様の入った)ハンカチで手を拭きながら、萌は言う。

「新谷くんのこと、どう思ってる?」

 その硯の言葉を聞いて、萌の動きがぴたっと止まった。

「どうって、なにが?」萌は言う。

「あいつのこと、萌、好きなの?」

 鏡の中で、その鏡の中に写り込んでいる萌の顔をじっと見ながら、硯が言った。萌はその硯の言葉に返事はせずに、ただじっと、鏡の中にいる硯と、それからあいからわず笑顔のない、ちっとも笑っていない、自分の無表情な顔を見ていた。


「新谷くん。『あいつ』によく似ているよね」

「……うん。似てる」

 硯の言葉に萌は言う。

「萌がオカルト研究会に出るようになったのは、新谷くんが萌と同じタイミングでオカルト研究会に入部をしたからなの?」硯は言う。

 その言葉に、萌は違うよ、と答えようとした。

 でも、その言葉はうまく、本当の言葉にはなってくれなかった。(それはつまり、嘘、ということなのだろうか?)

 萌はそのときまで、自分の行動原理について、そんな風に考えたことは一度もなかった。でも、硯にそう言われてみると、確かにそうなのかもしれない、と萌は思った。

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