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アルバイトの女の子は、名前を内田環と言った。
環ちゃんが注文をとるときに、そうみんなに名乗ったのだ。環ちゃんは笑顔が綺麗で、それでいててきぱきと仕事をする素敵な女の子だった。(それに小柄で、すごく愛想の良い子だった)
料理の注文は朝日奈くんがパルマ風スパゲッティー、硯がミラノ風ドリア、葉摘が野菜ピザと辛味チキン、新谷くんがアラビアータ、そして萌は、(結構悩んだのだけど、結局)硯と同じミラノ風ドリアにした。
それと人数分のドリンクバーと、おつまみにサラミピザを一枚注文した。
飲み物は朝日奈くんがホットコーヒー、硯がメロンソーダ、葉摘がオレンジジュース、新谷くんがコーラ、萌はアイスコーヒーにした。
「いいですね。部活動。みなさん楽しそうです」と料理をテーブルに運んできてくれたときに環ちゃんが言った。
「じゃあ、オカルト研究会に入部してみない?」と朝日奈くんが言ったのだけど、「うーん。でも、えっと、バイトが忙しいので」となぜか環ちゃんには入部の話を断られてしまった。
「振られちゃったね」と硯が言った。
「朝日奈先輩。私の友達に余計なこと、言わないでください」と葉摘が言った。
でも、みんな楽しそうですね、と言う環ちゃんの感想は嘘ではなくて、確かにオカルト研究会の反省会という名前の食事会はとても楽しいものだった。(少なくとも萌は楽しかった)
一通り、今日の実験の話や、それぞれみんなが好きなオカルト話、たわいのない学校の日常の話などをして、食事をだいたい食べ終わったころに、朝日奈くんが「あれからいろいろと考えたんだけどさ、結局、今日の実験が失敗したのは、たぶん、実験をした場所のせいだね」と何気ない感じで、そう言った。
「場所ですか?」アイスコーヒーを飲んでから、萌が言う。
「うん。実はね。今日の実験。一つだけ、本当の条件とは違った箇所があったんだ」朝日奈くんは身を乗り出して萌を見て、そう言った。




