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15 オカルト研究会の部室 ……勇気。歩き出す、勇気か。

 オカルト研究会の部室


 ……勇気。歩き出す、勇気か。


 一人になった萌は、静かになったオカルト研究会の部室の中を探索し始めた。まずは半開きになっていた黒色のカーテンを全開に開けて、窓の外の赤色の光をおんぼろな部室の中に取り入れた。

 そのあとで萌が窓を開けると、気持ちの良い春の午後の風が、湿っぽい部室の中に吹き込んできた。

 それから萌は、いつも硯がいじっている(きっと硯愛用の)ロゼッタストーンの模型を手にとって、それを持ちながらまずはドアから見て、左側の壁際の棚を観察した。

 そこには相変わらず、(初日のときと同じように)怪しいものがずらっと並んでいた。

 変な東洋っぽい、あるいは東南アジアの部族の人たちが、お祈りで使用するような、人形や石。中国風の風水で使用すると思われる道具(鏡とか、道教の陰陽図とか)のレプリカ。読めない文字が書かれている石板。

 シャーマンがかぶるような大きな菱形の仮面。

 ……上げていけばきりがないけれど、きっと、歴代のオカルト研究会の人たちが残していった、もういらなくなってしまった宝物たちが、この部屋にはまだ、しっかりと、その後輩たちに(きっと、楽しい思い出や必要の無くなった夢と一緒に)受け継がれて、残されていた。それを今、萌は実際に自分の手で触って、そして、自分の目で確かに目撃しているのだった。

 床の下においてる段ボールの中には、棚に入りきらない、夢がぎっしりと夢こまれているようだった。

 萌はそんな夢のかけらのようなものを見て、ちょっとだけ一人、その場で微笑んだ。(それは珍しいことだった。萌は一人のときもあまり笑わない女の子だった)


 萌はそれから、今度は雑誌や本のほうに注目して目を向けた。

 雑誌は、オカルト雑誌『ムー』が大半で、あとはオカルト系の本。超能力や、風水。龍脈とか、オーパーツの本。それに宗教の本。(空中浮遊とか、チベット宗教とか)そして、虹について書かれた本などが置いてあった。

 それらに混ざって、朝日奈くんが萌に勧めてくれたクトゥルフ神話TRPGの本(ゲームブックというのだろうか?) が何冊かあった。

 萌はあまりそういう分野に詳しくないので、よくわからないのだけど、そこにはダニッチとか、インスマス、とか、アーカム、それにミスカトニック大学などの文字が書かれていた。

 萌はそれらの本を、いくつか手にとって、ぱらぱらとページをめくってから、本を元の場所に戻した。

 それからの本は、それも埃っぽくて、なんだか少しかび臭い、古い本独特の匂いがした。

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