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マオと不思議なスライムの賑やかなアトリエ  作者: 小日向 ななつ
第1章 鉱石魔人〈アイアン・カドック〉の願い
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第5話 大活躍!? 錬金術師マオ

 大好物のビーフジャーキーを与えられ、ノームは元気いっぱいになっていた。

 怯むゴブリン達に追い打ちをかけるべく、ちょっとグッタリとしているアイザックはミーシャ達に指示を飛ばした。


「今だ! 一気に畳みかけろ!」


 よくわかっていないミーシャとルルクだが、すぐに優勢であることに気づく。

 顔を見合わせた後、ミーシャはすぐにゴブリンへと飛びかかった。


「ギギィ!」


 均等を保っていた戦況が一気に傾く。

 途端にリーダーゴブリンは顔色を悪くし、手下達に「フンバレッ」と叫んでいた。


「ココデマケルワケニハ、イカナインダッ」


 ざらついた声で何かを叫ぶ。

 しかし、マオがさらに戦況を崩す行動を取った。


「ミーシャちゃん、ちょっと離れて!」


 アイザックの能力で生み出したアイテムその二を使う。

 ブタのデザインを施された爆弾、別名〈ボムっとん〉をゴブリン達へ投げ入れる。

 思いもしないことにゴブリン達は一瞬だけ固まってしまった。


〈ブヒヒヒィーッッッ〉


 奇妙な爆発音と共に、〈ボムっとん〉は炸裂した。

 攻撃を受けたゴブリン達は大きなダメージを受けたのか、ふらついている。


「ルルク!」

「わかってるよ!」


 ミーシャの声に答えるために、ルルクが攻撃を仕掛けようとする。

 しかし、まだ準備ができていないのか発動する様子を見せない。

 このままではゴブリン達が復活してしまう。

 そんな焦りをミーシャが覚えた時、マオは最後のアイテムを手に取った。


「頑張れぇー!」


 シャラララ、と音が響く。

 パン、パン、パン、といったチープな打音も空間に走った。

 フラフラとしながらも、どこか楽しげな踊りをするマオ。

 ミーシャはそんなマオの姿を見て、なぜだかテンションが下がった。


「何をしてるの?」

「ア、アイテムを使ったら身体が勝手に……」

「ふざけないでよっ。今生きるか死ぬかの状態なのよ!」

「ふざけてないよぉー! 身体が勝手に動くんだよぉー!」


 ミーシャはとても残念そうな顔をして、哀れんだ視線を送った。

 マオはそんな痛い視線を浴びつつも、泣きながら手にしたタンバリンを叩く。


「ねぇ、その踊りだけでもやめられない?」

「できたらとっくにやめてる!」

「ごめん、一回ぶってもいい?」

「やだぁぁぁぁぁ!」


 奇妙な踊りをするマオと会話すること十数秒。

 ルルクが唐突に「うぉおぉぉぉぉぉ!」と叫んだ。

 ミーシャはその声に驚いて振り返ると、そこには妙なオーラをまとっているルルクの姿があった。


「成功だ! ミーシャ、そこから離れろ!」


 アイザックが逃げるように指示をする。

 一体何が起きたかわからないミーシャは、言われた通りに離れることにした。

 だが、マオの踊りは止まらない。どんどんと苛烈なものとなっていき、それに合わせてルルクのオーラが高まっていく。


「何が起きているの?」

「あれは〈ファイティング・タンバリン〉というアイテムだ。一度持ったら最後、対象者が攻撃しない限り踊り続ける恐ろしいアイテムでもある」


「え? 何それ怖い」

「闘魂スズランがあれば作れる代物だ。まあ、ある意味伝説となっているアイテムだな。ちなみに、あまりにもダサい踊りをすることから〈チープ・ダンシング〉とあの踊りは名付けられている」

「思いっきりバカにされてるじゃん!」


 アイザックはミーシャの言葉を受け、誤魔化すように咳払いをした。


「いくぞ、ゴブリン!」


 だが、ルルクにはその声は届いてない。

 一気に勝負を決めるために、魔術書のあるページを開いた。

 そこに記されている文字を読み解き、ルルクは叫ぶ。


『殲滅しろ!』


 光の玉がゴブリン達の周りに生まれ、漂い始める。

 段々とそれは電撃をまとっていき、いつしかゴブリン達が逃げられないように輪となっていた。


「いっけぇぇ!」


 マオは踊りながら叫ぶ。

 途端に光の玉は弾け飛び、ゴブリン達を飲み込んだ。

 それはあまりの威力だ。そのため離れていたマオ達も飲み込まれそうになった。

 しかし、ノームがそれをさせない。

 マオを連れ、アイザックの元にまとめた後に、全員を覆うように土の壁を作る。

 そのまま光を遮り、巻き添えを防ぐとノームは『ウォオォォォン!』と雄叫びを上げた。


「さすが〈ファイティング・タンバリン〉だ。威力がヤバい」

「ねぇ、もうツッコミ入れるの疲れたんだけど……」

「うぅ、疲れた。もうこのアイテム使わない……」

「うあ、すっごい疲れた。なんだったんだ、今の……」


 それぞれが疲れた顔を見せる中、土の壁が崩れる。

 そこから顔を除き出すと、思いもしない光景が目に入った。


「ボ、ボス!」


 ゴブリン達は全員立っていた。

 そしてそのゴブリン達を守るように、一体の巨大なモンスターが立っている。

 金、銀、銅、さらにプラチナや宝石をたくさん身にまとっているそれは、ギロリとマオ達を睨んだ。


「え? 何あれ?」

「ヤバッ! あいつここのボスじゃん!」

「マズい、今の僕達じゃあ倒せないよ!」


 慌てるミーシャとルルク。マオは何気なくノームに目を向けてみる。すると怖いのか、「くーん」と情けない声を上げて尻尾を巻いていた。


「に、逃げるよ! このままじゃあ全滅――」


 ミーシャが声を震わせて何かを言い放とうとした瞬間だった。

 マオ達を守っていた土壁が破壊される。

 大きな音と共に現れるダンジョンのボス。それはあまりにも大きく、マオの身体なんて簡単に捻り潰されそうだった。


「ウォオォオオオォォォォォ!!!」


 ダンジョンのボスはマオ達に叫んだ。

 思わず身構えるマオ達。だがダンジョンのボスは構うことなく、顔を地面に伏せる。

 そのまま手を付き、地面にめり込むようにしてダンジョンのボスは叫んだ。


「お願いです、もうゴミを捨てないでください!」


 目を点とするマオ達。

 よく見るとダンジョンのボスは正座をし、お願いするように頭を下げていた。

 一体この状況は何だろうか。奇妙な疑問を抱きながら、頭を下げたダンジョンのボスを見つめていた。



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