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マオと不思議なスライムの賑やかなアトリエ  作者: 小日向 ななつ
第1章 鉱石魔人〈アイアン・カドック〉の願い
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第4話 戦闘! ゴミゴミゴブリン

 ゴミの中から飛び出してきたゴブリン。

 そのためか、離れているというのに生ゴミの臭いが漂ってきた。

 さらに身にまとっている装備がとてもひどい。


 お鍋のフタを盾にし、頭には穴が開いたお鍋を被っている。ある者はまな板を繋ぎ合わせて作った鎧を身にまとっていた。

 果たして防御力はあるのだろうか、という疑問をアイザックは抱く。


「みんなガンバレェー!」


 そんな中、マオは大きな声を上げて応援し始めた。

 アイザックはそんな弟子を見て、やれやれと頭を振る。


「マオ、ただ応援するだけじゃあダメだぞ。これからアイテムを集めて、戦闘支援だ」

「は、はい!」


 マオはアイザックに言われるがまま、駆けていく。

 その間にもゴブリンとの戦闘が始まる。


「ルルク、前衛はやってあげるからとっとと片付ける準備をして!」

「言われなくてもやってるさ!」


 ルルクは持っていた本を開く。アイザックはそれを見て、魔術が記載された本だと気づいた。

 別名〈魔術書〉と呼ばれる本のページを開き、ルルクはゴブリン達を一掃しようとしていた。


「アイツヲネラエ!」

「ギギィ!」


 リーダーらしきゴブリンが叫ぶと同時に、二体のゴブリンが飛びかかった。

 ミーシャがルルクを狙うゴブリンに突撃し、持っていた木の双剣で叩きつける。


「ギギィ!」


 だが、ミーシャ一人では抑えきれない。抜け出したゴブリンが一気に距離を詰め、ルルクに飛びかかった。


「しまった!」


 慌てて戻ろうとするミーシャ。しかし、リーダーゴブリンがその行く手を阻む。

 だが、ルルクに棍棒が振り下ろされようとした瞬間にゴブリンは後ろへと飛んだ。


「ギィ!?」

「え? 何?」


 転がっていくゴブリン。それを見たリーダーは、思わず目を鋭くさせた。

 そこには地の精霊〈ノーム〉がおり、『こっちに来るな』と言わんばかりに激しく唸り威嚇していた。


「ほう、いつにも増してやる気があるな」


 アイザックはやる気満々のノームに感心を抱いていた。

 何気にミーシャへ目を向ける。すると本当に何が起きたのかわかっていないのか、ちょっと混乱しているように見えた。


「まあ、普通の人間には見えないからな」


 フンスッ、と激しく鼻息を吐き出すノーム。

 それを見たリーダーゴブリンは、手下達にある指示を送る。


「アイツ、タオス! ホカハザコ!」


 ターゲットをノームに変えたゴブリンは、一斉に飛びかかった。

 だが、ゴブリンの攻撃は当たらない。

 頭を狙ったぶっ叩きも、足を狙ったインパクトも、決死の体当たりも。

 ノームは全て躱した。


『ウォオォォォン!』


 ノームは宙で雄叫びを上げる。

 途端に岩石の矢が生まれ、ゴブリン達の頭上に降り注いだ。

 大きな砂煙が上がると同時に、ノームは着地する。


『ウォーン!!!』


 まるで勝どきでも上げたかのような雄叫びを放つ。

 しかし、その瞬間に小石が放たれた。

 それは見事にノームの額を捕らえる。

 ノームは途端に『きゃん』と情けない悲鳴を上げた。


「ノーム!」


 アイザックが思わず声を上げる。

 小石がぶつかった頭を痛そうにするノーム。すると砂煙の中から「ギギギギィ!」というとても嫌な笑い声が響いた。


『パチンコ、サイコー!』


 砂煙の中から現れたのは、パチンコを持ったリーダーゴブリンだった。

 他のゴブリンも装備を棍棒から包丁、そしてフライパンに持ち替えていた。


『タタキコムゾ!』


 ノームが怯んだ隙に、ゴブリンが一気に勝負をつけようと動き出す。

 さすがにマズい、とアイザックが冷や汗を掻き始めた瞬間だった。


「あ、集めて来ました!」


 やっとのことマオが戻ってきたのだ。

 アイザックは「遅い!」と怒鳴る。するとマオは小さな悲鳴を上げ、潤んだ目でアイザックを見つめ始めた。


「ご、ごめんなさい。あの、このお花が珍しかったから採ってくるのに苦労しちゃって」


 差し出された花をアイザックは見る。するとそれはほのかに甘い香りがする琥珀色の花びらを持った植物だった。


「お前、どこでこんなものを見つけてきた?」

「えっと、切り立った崖の所で――」

「やっぱり話は後で聞こう」


 マオの話が長くなると感じたアイザックは、一旦話題を終わらせた。


「マオ、ノームが大変だ。すぐに取りかかるぞ!」

「はい!」


 マオはノームを助けるために、手に入れてきたアイテムを広げる。

 そこにあるのは薬草、琥珀色の花、ボムボムダケ、ホウセンカ、乾燥したお肉、乾燥した木片だった。


「上出来だ! よし、全部使うぞ!」

「え? 全部ですか?」

「出し惜しみしている暇はない! とっととやるぞ!」

「は、はい!」


 アイザックは大きく口を開く。

 マオはその口に、手に入れてきたアイテムを全部押し込めた。

 ちょっと苦しそうにするアイザックだが、マオは「頑張ってください!」と応援する。

 どうにかこうにかアイテム全てを飲み込み、アイザックはゲップを出すと共に目を閉じた。


「んぬぅぅぅ!」


 何かがアイザックの身体の中で蠢く。

 マオはそれをハラハラとしながら見つめていた。

 そして、その瞬間はついに訪れる。


「んばぁぁぁ!」


 アイザックが何かを叫ぶと同時に、口の中から三つのアイテムが登場した。

 ちょっとヨダレだらけになっているが、マオは気にすることなく一つのアイテムを手に取った。


「ノーム! 大好物だよ!」


 ちょっとだけヨダレがついているビーフジャーキーを投げ入れる。

 ノームはマオの声に反応し、投げ込まれたビーフジャーキーを見事に口でキャッチした。

 そのままバリバリと音を立てて食べる。

 するとノームは元気になったのか、『ウォオォォォン!』と雄叫びを上げた。


「ナンダト!」


 ノームの復活によって、戦況が一気に変化する。

 マオは「よし」と両手をグッと握り、優勢になったことを喜んだ。

 だが、アイザックは先ほどやった無茶が響いたのか、ゼエゼエと息を切らしながらグッタリと倒れていた。


「もう、やんない……」


 スライムになって身についた能力〈即席錬金術(インスタント・クラフト)〉を使ったことで、アイザックは力尽きたのだった。


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