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マオと不思議なスライムの賑やかなアトリエ  作者: 小日向 ななつ
第4章 盗まれたみんなの宝物
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第30話 誕生!? 名探偵ミーシャ

 アイザックの言葉で落ち着きを取り戻したミーシャは、事件について語り始めた。


「いつものようにルルクと一緒にダンジョンに行って、一緒に帰ってきたの。その後、荷物を部屋に置いて学食に行ったんだ。

 ルルクをからかって、コロッケと取り合ったりして過ごしたの。ルルクと一緒に寮へ戻ったら、部屋が荒らされていたんだ。

 慌てて装備品を確認したけど、それは盗られてなかった。ホッとした瞬間、貯金箱が消えているのに気づいたわ。

 まさかと思って探したんだけど、なかった。どんなに探しても、私のお金がなかったの。

 貯金箱にはルルクちゃんで稼いだお金も入っていたのに! もう盗んだ奴は絶対に許さないんだから!」


 つまり、ダンジョンから帰ってきて荷物を置いた後、ルルクと一緒に学食で過ごしていたらお金を盗まれてしまった、ということである。


「ねぇ、ミーシャちゃん。ルルク君は大切な魔術書を盗まれたって言ってたけど――」

「いつもあいつが持ち歩いている本があるでしょ? あれを盗まれたみたいなの。しかも盗んだ犯人はリボンテイルと決めつけているし! いくらルルクだからって、絶対に許せないんだから!」

「でも、犯行した証拠のカードがあったって言ってたよ?」


「私の部屋にもあったわよ。でもこれ、リボンテイルのものじゃないわ。まずカードのデザインが違うし。もっと赤いリボンとか彩りとして縁に施しているし、そもそもこんなシンプルじゃないし。

 しかもこの文字。完全に殴り書きしたものじゃないっ。言っとくけどこんな汚い字じゃないわよ!」


「ねぇ、ミーシャちゃん。なんで怒っているの?」


 ミーシャはマオの指摘にビクッと身体が跳ね上がった。

 ジトッとした目で見つめるマオ。何か勘ぐっているような視線である。

 しかし、ミーシャは気を取り直したように咳払いをした。


「とにかく、これはリボンテイルのものじゃないから。リボンテイルはもっとこう、いろんなことに気を使っているからね!」


 ミーシャは断言した。なぜ断言したのかわからないが、マオは敢えてツッコミを入れるのをやめておいた。


「まあ、あれだ。ミーシャは熱烈なファンなんだろう」


 アイザックが苦笑いしながら、フォローするように言葉を口にする。

 ミーシャも「そ、そう! そうなの!」と同調した。


「こ、こう見えてもファン歴は長いのよっ。マオちゃんがビックリするぐらいにね!」

「ふぅーん」

「あ、その目は信じてないな! なら今からクイズでもしようか? 全問正解しちゃうんだからっ」


「それは事件が解決してからにしてくれ。

 まあ、大体のことはわかった。聞く限りだと、やっぱりリボンテイルの犯行じゃないな。やり口は荒いうえ、このシンプルすぎるカードがその証拠だ」


「そうよそうよ! 先生の言う通りよっ。もっとスマートにやるんだから!」


 ヒートアップするミーシャ。

 それだけリボンテイルのことを愛しているのだろうか。

 そんなことを感じながら、マオはミーシャを見つめていた。


「こうなったらリボンテイルの無実を証明するわよ!」

「無実って、本当にリボンテイルかもしれない可能性が――」

「絶対にそんなことないからっ。リボンテイルは無実よ!」

「まあ落ち着け。ミーシャ、お前の言葉は全部信じるから」

「絶対にぜーったいに、無実なんだから!」


 なぜそこまでこだわりを持つのだろうか。

 マオとアイザックは、不思議に感じていた。

 しかし、どんなに考えても答えには辿り着かない。

 ミーシャはというと、さらにヒートアップした様子だった。


「と・に・か・くっ、リボンテイルは無実! 絶対に違うからね!」

「う、うん……」

「あ、ああ。わかった」

「わかればよし! じゃあ、アトリエで作戦会議ね!」


 一体どんな作戦を立てるつもりなのだろうか。

 マオ達は不思議に感じながら、ズンズンと進んでいくミーシャを追いかけた。


「ねぇ、先生。ルルク君はどうします?」

「今すぐ話を聞きたいところだが、あの様子だと難しいかもな。ミーシャのこともあるし、もう少ししてから探しに行こう」


 確かに、とマオは同調した。

 ルルクはミーシャと派手にケンカをしたばかりだ。どうなっているかわからないが、落ち着くまで時間がかかるかもしれない。

 それに、ミーシャを刺激するのもあまりしたくない。もしかしたら本当に仲がねじれてしまう可能性がある。


「ルルクは頭のいい子だ。ちゃんと冷静になれば、仲直りしようと動くはずだ」

「そうだといいんですけど……」

「大丈夫さ。絶対にな」


 アイザックの力強い言葉。マオはそれを受けて、信じることにした。

 ルルクはルルクなりに動く。ミーシャと仲直りするためにも、きっと――



 旧校舎に繋がる渡り廊下を進み、マオのアトリエへとやってきた三人。

 ミーシャが何気なくドアノブに手をかけようとした瞬間、マオが「あ、待って」と声をかけた。


「今、扉の鍵を開けるから」


 急いで鍵を取り出そうとするマオ。しかし、ミーシャはそのままドアノブを掴み、回した。

 錆びついた音が響くと共に、アトリエの扉が開く。

 ミーシャはマオ達に目を向ける。だがマオとアイザックは、ただ驚いているばかりだった。


「鍵をし忘れたのか?」

「いえ、そんなはずは――」

「とにかく、開けるよ」


 ゆっくりと、ミーシャは扉を開いていった。

 恐る恐る覗き込む。薄暗い部屋の中、そこに広がっていたのは散らかった空間だった。

 棚も、タンスも、アイテムボックスも、何もかもが乱暴にこじ開けられ荒らされたかのような光景が広がる。


「何これ……」


 ミーシャは思わず言葉を失う。

 だが、マオは違った。


「みんなっ」


 倒れている精霊達。

 ミーシャがいるなんてお構いなしに、マオは駆け寄っていく。


「しっかりして! シルフィール、何があったの!」


 マオはシルフィールを抱き起こし、言葉をかけた。

 だがシルフィールはぐったりとしており、反応を示さない。


「これは――」


 アイザックは大釜で何かを発見した。貼り付けられていたカードを取り、顔を強張らせる。


「先生、それは?」

「模倣犯の、警告と命令だ」


 マオとミーシャは、そのカードの文字を見て思わず顔を険しくさせた。


『私はお前達を見ている。余計なことをすれば、仲間の命はない。

 霊薬〈フェニクル〉のレシピを持って、一人で深夜三時に屋上へ来い――怪盗リボンテイル』


 カードに示された言葉の意味とは。

 マオ達はまさかと思いつつ、時計に目をやったのだった。



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